人間は、自分の知らないものを恐れてしまうことがある
『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』の解説記事です。
誰もが知る有名な童話『ピノキオ』を『パンズラビリンス』のギレルモ・デル・トロ監督が映像化した作品。
『ピノキオ』って、ディズニー版ではかなりマイルドな内容ですよね。
人気のある作品ですが、原作はかなりキツイ内容であることで有名です。人身売買や児童虐待、障害者差別など、当時の社会風刺が、割と分かりやすく描かれてます。ラストもキツイ。
また、デル・トロが監督した『パンズラビリンス』は、ファンタジー映画でありつつ、トラウマ級のクリーチャーが登場する事でも知られています。
さらに、ギレルモ・デル・トロ監督は、『ミミック』や『クリムゾン・ピーク』のように、ホラー要素の強い作品を手掛けることも多いです。
さて、『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』には、恐いクリーチャーは登場するのでしょうか。
そもそも、子どもに見せてもいい内容なのか?えげつない表現はないのか?
お子さんと観る人とか、ホラーが苦手な人は警戒しちゃうよね。
今回の記事では、ディズニー版との違いや、トラウマクリーチャーやシーンの有無について解説します!
結論
まず、結論から申し上げます。『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』に、ホラー要素はなく、クリーチャーも一切登場しません!
むしろ、感動的でドラマチックな作品でした。泣けます。
さらに言うと、反戦のメッセージが込められているため、むしろある程度大きなお子様への影響はプラスに働くようにすら思います。
「ギレルモ・デル・トロのキモいクリーチャーを観たいんだよ!」
という人からすると、物足りないかもしれませんが、かなりグッとくるお話ですよ。
むしろ彼のストップモーションに対するこだわり、職人技を知る上で観ていただきたい作品です。
作品概要
アカデミー賞受賞監督ギレルモ・デル・トロが、見事な映像美で贈るストップモーションアニメ・ミュージカル。木の操り人形を主人公とするあの名作童話が、新たな物語としてよみがえる。
ネットフリックスより引用
Netflixで2022年12月9日 (金) より配信スタートとなり、一部の劇場では11月末に公開されました。
ディズニー版はこんな感じ
ディズニー版では、子どものいないゼペット爺さんが、星に願いをかけ、妖精によって命を吹き込まれることを機に、ピノキオが「ストロンボリ一座」「プレジャー・アイランド」「クジラの体内」などで災難を含んだ冒険をするというストーリーに仕上がっています。
映画の中では、所々ゾッとするシーンがありますよね。
また、東京ディズニーランドのアトラクションに乗ったことがある人は知っていると思うんですが、どの場面も、結構怖い印象があります。
ギレルモ・デル・トロも少年時代にディズニー版の『ピノキオ』からホラーのような雰囲気を感じ取り、いつか映画化したいと想っていたそうです。
ギレルモ・デルトロ版では…
『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』では、「亡き息子カルロ」「サーカス小屋」「少年軍人訓練校」「深海魚の体内」の4つのチャプターに分かれています。
ディズニー版とはかなり違いますよね。
ここから、それぞれのチャプターについて簡単に解説します。
「亡き息子カルロ」
冒頭の亡き息子カルロのチャプターでは、ゼペット爺さんと、息子との思い出の日々が描かれます。
これ、結構長いんです。
ディズニー版には観られない描写ですよね。
これはですね、第一次世界大戦で息子を失ってしまったという悲劇を伝えているんです。
ゼペット爺さんの悲しみや、彼がどれほどカルロを愛していたかが、物語の感動の大きさに比例するので、非常に大切なパートであったと思われます。
「サーカス小屋」
こちらはディズニー版でも観られました。
人気者になりたいといういう、キノピオの無垢な気持ちに付け込んだヴィランの登場です。
キノピオがサーカスに居続けようと決心した理由は実に感動的なので、ぜひネタバレなしに注目していただきたいところ。
サーカスにいる賢い猿が主要キャラクターとして登場する点が、ディズニー版とは異なるポイントです。
「少年軍人訓練校」
ここが大きく異なるポイントです!
『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』は、ムッソリーニ時代のイタリアが舞台の、戦争真っただ中を描いています。
そして、ピノキオは不死の身体をもつという設定。
サーカスでも戦争のプロパガンダとして利用され、不死の身体を持つことから、軍事的に利用しようと近づく輩が現れるんですよ。
そして、とうとう連れていかれてしまったのが「少年軍人訓練校」だったわけです。
「深海魚」
ディズニー版ではクジラでしたが、『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』では大きな深海魚という設定でした。
この深海魚の見た目が、本作で唯一、キモいクリーチャーらしさが出ていたように感じました。
口を開けるシーンや、体内・体表のぬめっとした感じ。非常に気持ち悪くて好きでした笑
情熱のストップモーション
今作は、3Ⅾアニメではなく、ストップモーションが多く使用されます。
ストップモーションとは、いわゆるコマ撮り撮影のことです。
静止している人形や物体を、1コマずつ動かして撮影し、まるでそれ自身が連続して動いているかのように見せる撮影技法なんですね。
これ、めちゃくちゃ大変なんですよ。時間も労力も手間もかかります。
こちらの動画を鑑賞前に観ると、どれだけの情熱をこめて作っているかがよく分かるはずです👇
どのシーンも丁寧に作られていることがわかりますよね。それだけでも贅沢な映像体験だと思います。
日本にもストップモーションの達人が
また、日本にもストップモーションで撮影された『JUNK HEAD』という素晴らしい作品があるんです。
監督は、堀貴秀さん。独学で作り上げたそうです。めっちゃ時間かかったそうですよ。なんと7年かかってます。
この作品、ギレルモ・デルトロ監督も絶賛しています。
クリーチャーの雰囲気とかも気持ち悪くていいんですよ。
ギレルモ・デル・トロ版の見どころ
ここからは、『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』の見どころをいくつかご紹介させていただきます。
ユワン・マクレガーの美声
今作では、あのユワン・マクレガーが、コオロギのクリケット役の声優を務めているんです!
普通のセリフもいいのですが、歌声が非常にいいです。
EDではその歌声をたっぷりと堪能できます!
ちなみに日本語吹き替え版は2代目野原ひろしの森川智之。
プロパガンダに負けるな!
先述の通り、ピノキオは戦争のプロパガンダに利用され、少年軍人として召集までされちゃいます。
このように、『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』では、戦争反対のメッセージが強く込められているんです。ストレートに、純粋に。
それだけでも、いろんな人に観ていただきたい作品です。
成長ストーリー
原作である『ピノッキオの冒険』の結末は、ピノキオは結局改心することはなく、自分の過ちのせいで樫の木に首をくくられて命を落とすというバッドエンディング(修正版は妖精が救いにくるらしい)ですが、『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』は一味違います。
はじめは、悪戯ばかりのピノキオですが、一つ一つ困難を乗り越える中で、大事なものを獲得し、成長していきます。
クリケット(コオロギ)の苦労が報われるのが嬉しいですね。ちなみに原作ではクリケット、ピノキオの手によって金槌で殺されますから。
これって、デル・トロの作品の共通テーマである、異形の者が人間らしさを獲得していくという点を表しているんですよね。
自由奔放なピノキオ
前項の通り、前半は自由奔放で制御のきかないピノキオ。
戦時中のムッソリーニによる支配により、市民が従順な操り人形として生きる世の中。
ピノキオはそんな中で生まれるんですが、ピノキオは大人たちとは異なり自由に振る舞うわけです。
これは、原作の『ピノッキオの冒険』の根底に、従順な「良い子」であることを美徳とする価値観があると感じていたデル・トロが、ピノキオの真の美徳とは「逆らうこと」であると捉え、自己を見つけ出し、命令や言いつけに従うかは自分自身で判断させるべきだにフォーカスを当てたためなんです。
このように、ギレルモ・デル・トロは物語の歪みに対して異を唱える映画作りをするんですね。『美女と野獣』のテーマの歪みを描いた『シェイプ・オブ・ウォーター』もぜひ鑑賞してほしいです。
出生に注目
上記のように、どの「ピノキオ」作品でも、ピノキオは、悪戯好きだったり、悪い心や愚かさを持った存在として描かれるんです。
『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』でも、はじめはハチャメチャです。制御不能なレベルで。
しかし、ゼペット爺さんが、どのような過程でキノピオを生み出したかを知れば、それも仕方がないと思えるはずです。
物語の序盤で分かりますので、ぜひそのあたりを味わっていただきたいと思います!
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』に関する情報をお伝えしました。
原作の『ピノッキオの冒険』のようなバッドエンドではなく、大事なことに気づかされる感動的なお話。また、キモいクリーチャーは登場しませんが、デル・トロの情熱的なストップモーションを堪能できますよ。
すっごくいいお話だから、むしろ子どもと一緒に観られそうだね。
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