これは、私がウクライナで見た、もう一つの闘いの記録です
『犬と戦争』を鑑賞しました。
2022年からの三年間、監督の山田あかねがウクライナで取材したことをまとめたドキュメンタリー映画です。
未だ戦争の渦中にあるウクライナにおいて、犬や動物、そしてその命を守るために行動する人々の様子を映し出します。
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そこまで手広く放映されている映画ではないので、今回の記事では、『犬と戦争』が近隣の映画館でやってない人のために、感想と合わせてザックリとストーリーについてもお伝えしていきます。
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ストーリーが分かった上で観ても、とっても大切なことを伝えてくれる映画なので、安心して読んでね。
2022年2月から始まったロシアによるウクライナ侵攻。戦争による惨劇が日々報道される中、ドキュメンタリー映像作家の山田あかねは、その現実を自分の目で確かめるため、侵攻から約1ヶ月後にウクライナへと向かった。山田監督はこれまでに、小林聡美主演の『犬に名前をつける日』(2015/監督)や『犬部!』(2021/脚本)など数々の作品で犬や猫の命をテーマに、福島や能登などの被災地への取材を重ねてきた。そんな彼女だからこそ、〈戦場にいる犬たちの現実を伝えなければ〉という覚悟のもと戦禍のウクライナでカメラを回す。そして、一つの動画をきっかけに衝撃的な事件を知ることになる。「戦場にいる犬たちに、何が起きたのか?」─ その真相を探るため、ウクライナへ3年にわたり通うことになった。ナレーションは俳優の東出昌大が務める。自身も保護犬と暮らし、そして猟師として日々命の現場に立つ東出の言葉は、私たちに現実を突きつける。
山田監督は、「犬は人間の最も近くにいる動物。彼らを通して世界を見ると、人間の姿が浮き彫りになる。“犬の向こう側”には必ず人間がいます」と語る。本作では、戦場で生きる犬たちの様子をはじめ、その小さな命を救おうと世界中から駆け付けた人々の奮闘する姿が映し出される。犬たちを取材する中で見えてきたのは、戦争に翻弄される人々の姿、そして様々な立場から語られる平和への願いだった。https://inu-sensou.jp/
犬やペットは戦争の中で
私はこの映画の中で学べることは大きく3つあると思うんです。
①戦争の中で犬を始めとしたペットたちはどのように扱われているのか
②こういった内容を報じることの難しさ
③ウクライナやEU諸国において犬はどのように愛されているのか
まずは①からお伝えしていきます。
日本の絵本『かわいそうなぞう』ってご存じですか?
1940年代に起こった太平洋戦争の時代に、上野動物園で象たちが殺処分されちゃったお話。動物園の柵に使われる鉄も、象のための食料も、人間のために使うべきだと判断されちゃうんですよね。
こういったことを繰り返してはならない。そういった強いメッセージのこもったお話だと思います。
でも、戦争はおよそ80年が過ぎた今でも起こっています。
そして、動物たちの命はというと、やはり軽視される傾向にあります。でも、その命を守るために闘う人もいる。この映画はそういったものを描いているんです。
この映画を通して、ウクライナ各地で、置いてけぼりにされてしまって、飼い主の帰りを待つ犬やペットたちがたくさんいるという事実を目の当たりにしました。
冒頭はかなりショッキングな映像が映し出されます。ロシアの侵攻によって、キーウ近郊の街・ボロディアンカにあるシェルターが1カ月以上にわたって放置され、収容されていた約500匹の犬たちのうち、222匹が死んでしまった映像です。
寄り添うように息絶えた犬たち。そして、山積みになって運ばれていく死体。
このような悲劇を繰り返さないために、また、少しでも蔑ろにされたその命を救うために、どのような方法が用いられているか。
それらを具体的に知ることができるこの映画は、本当に強い力があると思います。
しかし、そんな大切なことを伝えるこの映像、私たちに届くにはなかなかハードルが高かったそうです。
人命と犬命と
『犬と戦争』の中で、私がショックだったし、遺憾だったし、納得いかなかったこと。
監督がTV局にこの映像の放映を企画として持ち込んだ時に、「人命の救助が最優先と考えられる今、動物の保護について報じるのは時期尚早だ」と突っぱねられてしまうんです。
これは非常に悲しかった。
人間がテレビの内容作ってんだから、まあ、行ってる意味は分かりますよ。でも、断る理由として、文書に出す内容としてはどうなのかなって。
むしろ私は、こういった何かにフォーカスした情報の方が、現実として受け止めやすいと思うんですよ。犬や猫なんて、日本においては尚更。犬派・猫派とか延々やってるくらい関心があるんですから。
むしろ、戦争の悲惨さを知るゲートウェイとして、ちょうどいいんじゃないかなって。自分事になるんじゃないかなって。
前項で紹介した『かわいそうなぞう』なんて、まさにその通りで、子どもにも戦争の恐さとか悲しさを伝えたいって思いでもって作られ、今なお読み継がれているわけでしょう。
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だから私は、犬にフォーカスして報じることは断然賛成です。山田あかね監督、これからもガンガンやっちゃってください。私は応援します。
ウクライナやEU諸国では
さて、日本では犬や猫がペットとして飼っている人はたくさんいますよね。犬や猫のような小動物を愛する国だと言えると思います。
では、国の取り組みやサービスに関してはどうでしょうか。
日本って、平成の真ん中くらいから、野良犬をめっきり見なくなりましたよね。
日本では、野良犬は、保健所が狂犬病予防法に基づき収容しています。保健所では、迷い犬や捨て犬、飼い主不明の負傷している小動物、虐待されていたペットなどを保護・収容し、その後「収容動物情報」が公示され、一定の条件を満たしていれば里親希望者への譲渡、または飼い主へ返還がなされます。 また、動物保護のボランティア団体が保健所から引き取って保護し、譲渡会で里親を探すケースもあります。一定の条件を満たしていない場合は、ご存じですよね。殺処分されます。
この辺りは、犬と人間が共生するために、ある程度仕方がないことだとは思います。狂犬病って、かかったら人間でも簡単に死んじゃいますから。
では、他の国ではどうしているのでしょうか。『犬と戦争』では、ウクライナのこんな取り組みが紹介されていました。
ウクライナには、まん丸に太った野良犬がたくさんいるんです。そして、彼らは耳にタグのようなものを付けられています。
これ、狂犬病のワクチンを接種した照明なんですって。そして、太っている理由は、市民が助け合ってエサをあげているから。カフェに野良犬のためのチャリティーボックスがあるくらいなんですよ。
ワクチンの費用は、政府がお金を出してるんだとか。
これは、大分日本と考え方が違いますよね。
さらに、戦争が始まってすぐに、ビクトールという男性は、アニマルチップというものを無償で配布しました。
これは、犬の身体に埋め込むマイクロチップで、スキャンすると飼い主が誰だか分かる仕組みなんです。
もし、戦火によって犬と飼い主が離ればなれになってもまた再会できるように。
これはなかなか素晴らしいですよね。地震災害の多い日本でも、導入してよさそう。実際、東日本大震災では、原発20㎞県内に住む人たちは、犬や猫たちを置いていかなければならず、たくさんの犬猫が路頭に迷ってしまったそうですから。
チップを埋め込むなんて、不自然で動物虐待だという意見もあるかもしれませんが、飼い主としての責任という側面から視ると、これも必要かもしれませんよね。
また、EUの取り組みで面白いなと思ったのが、PETS(Pet Travel Scheme)です。これは、ペット(犬・猫・フェレット)用のパスポートなんですよ。
これがあれば、EU諸国を一緒に移動することができるんですって。
ちなみに、日本から海外へ犬を連れだすにも、マイクロチップの埋め込みが必要です。これは、犬を飼っているそこのあなた。考え時なのかもしれません。ワンちゃんも、海外の絶景を眺めたいかも…?
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
『犬と戦争』について解説しました。
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戦争の中で、犬や猫のようなペットの命をないがしろにしないレジスタンス。熱いものが込み上げました。
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色んな人に知ってほしい作品だね。
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