これまで俺はずっと誰かの助手席だった
『フォール・ガイ』をAmazon Prime Videoで鑑賞しました。
『ラ・ラ・ランド』のライアンゴズリングと、『クワイエット・プレイス』のエミリー・ブラントが出演する映画で、多分ラブコメなんだろうなと思って、映画館では見なかった作品なんですよね。
でも、鑑賞してみて、それは間違いだったことに気づきました。
この映画、アクション映画やスタント、ひいては映画そのものへの愛とオマージュがふんだんにつまっている作品だったんです。
むしろ、これから映画鑑賞にハマりたい、アクション映画を掘り下げてみたい。そんな人にはうってつけの作品なんじゃないかと思うほど。

今回の記事では、『フォール・ガイ』につまった映画愛や、その他見どころについて詳しく解説していきます。

結末はネタバレしないようにするから、これから観る人も安心して読んでね。
監督は元アクション俳優
監督のデビッド・リーチは『ファイト・クラブ』でブラピのスタントダブルを務め、その他にも数々の映画でスタントを演じた経験がある人なんです。脚本も書いてます。
だからスタントマンへのリスペクト、オマージュがいっぱい。
『ロッキー』、『MIP』、『ワイルド・スピード』、『マイアミ・バイス』、『キル・ビル』、『真昼の決闘』、『逃亡者』、『ラスト・オブ・モヒカン』、『ボーン・シリーズ』、『007』、『テルマ&ルイーズ』などなど。
また、アクション以外にも。『メメント』や『ダンボ』、『ノッティングヒルの恋人』、『ラブ・アクチュアリー』、『プリティ・ウーマン』なんかも出てきます。
本当に、やたらと映画の名前が出てくるんですよね。とにかく映画愛が強い。
その愛ゆえに、冒頭でもうちょっと泣けます。『ワンハリ』が好きな人ならこの感じ、お分かりいただけるんじゃないかと。
特に、自身の経験もあってか、スタントマンとして生きる人の葛藤とか苦労の描き方がめちゃくちゃ巧いんです。時にコミカルに、時に切なく描きます。
スタントダブルとして演じてる時の、主演の衣装と比べてやれてる感じとか、細かいところが笑えるんですよ。
でも、「俺はいつも誰かの助手席だった」と陽の目を浴びないことを嘆いたり、「本当はいつも恐かったんだ」と吐露したり。なかなかグッとくるところがあるんですよ。
経験者の監督だからこそ、説得力がありますね。流石です。もう一度同じようなテーマの作品を作ったとしても、私は観に行っちゃうと思います。
それくらい感動したし、デビッド・リーチにしか作れないし、書けない作品なのではないかと。
極上のアクションシーンには理由がある
本作の主演はライアン・ゴズリング。
『バービー』を観た人はご存じだと思うんですが、めちゃくちゃいい身体してるんですよね。
でも、アクションを演じている印象はほとんどない。セクシーな男性の役柄として筋肉を魅せる側面はあっても。
はたして彼にアクションができるのか…?
結論、彼はアクションがかなり得意で、本作ではアクションシーンの一部を演じているんです。
初めのビルの12階から落ちるスタントとシドニー・ハーバーブリッジを車で引きずられるスタントは本人が演じています。
しかし、一部なんです。
しかし、その他多くのあまりにも危険なシーンは、4人の選りすぐりのスタントマンが立てられています。
つまり、スタントダブルですね。これぞ、デビッド・リーチの作りたかったものなんでしょう。
カーアクション、バトルアクション、パルクールアクション、落下アクションなど、それぞれ長所を活かして分けられています。
得意なアクションを演じているというだけあって、物凄いシーンの撮影に挑んでますよ。ここまでクオリティの高いアクション映画は、なかなかお目にかかれません。
CGばっかりだと冷めるけど、この映画はほとんどガチでやってるから、めちゃくちゃいいんです。熱いんです。
すべてのアクションに愛を込めて
『フォール・ガイ』に込められたアクション映画愛を語るには、まだ足りませんので、もう少しだけ。
中盤から、犬が出てきます。この犬がまた名演なんですよ。パルムドック間違いなしって感じ。
悪漢の股間に嚙みつくという特技を持っているんですが、これは『ワンハリ』を意識してそうですね。
あと、『マッドマックス2』とかのオマージュでもありそうです。
で、このワンコ、ジャン・クロードって名前で、ジャン・クロードも80年代後半から90年代に特に活躍したアクションスターなんですよ。
まだまだ、アクションの小ネタはあるんですが、もうきりがないので、とにかく伝えたいところだけ。
親指を立てるポーズを「サムズアップ」って言うんです。

アクション映画だと結構出てくるんですよね。『怒りのデスロード』でも『ロッキー』でも絶対ありました。
『フォール・ガイ』でも主人公がこれを多用するんですよ。もう本当ダサくて最高。そこをいじられる感じもまたいい。
スタントマンとそのチームが悪いやつをボコボコにするシーンがあるんですけど、スタントを生業にしている人たちの努力とかいかに大変かとかがよく伝わってきてこれもまた最高。
そして、エンドロールではスタントマンやスタッフたちの活躍が映像として観られるんですよね。ジャッキー映画みたいな感じ。
最高のリスペクトだと思います。
セクシーベーコンという考え方
プロデューサー役の女性が、セクシーベーコンという考え方を披露するシーンがあります。
これなんなのかというと、犬に薬を与える時に、美味しそうなベーコンに包んで出せば、喜んで食べるでしょうという比喩なんです。
映画に置き換えると、集客のために表立った設定は、ラブコメとかヒーローものとか、メロメロのドラマとか、分かりやすいものにするけど、本当に伝えたいメッセージは内側に潜めて作るという。
それを語った後で分かりやすく過去の恋愛の回想シーンを入れてくるのが最高に笑えるんですけど。
でも、確かにこういう映画ってたくさんありますよね。なんだったら、そういうものに気づけたこそ、映画を観てきてよかったと感じる部分でもあります。
改めて、意識して行きたいなと思いますね。
オーストラリアロケ
『フォール・ガイ』の主な舞台はオーストラリア。
だから、オーストラリアのロケも多いんです。
オーストラリアって、砂漠がたくさんあるから壮大なSFアクション作品とかでロケ地になることが多いんですよね。
『マッド・マックス』とか『ウルヴァリン』とか『MIP』とか。
そこもまた、本格アクションたる所以といったところでしょうか。
カギとなる二つの作品
アクション愛以外に、もう一つ本作で大事なメッセージがあります。
ライアン・ゴズリング演じる主人公は、役者業以外の部分で、いろいろ困難に巻き込まれていくわけなんですが、とにかく今撮影している映画を完成させなきゃだめだという強い意志を持っているんですね。で、その思いをエミリー・ブラント演じる元恋人の映画監督に語るわけです。
「絶対に完成させなきゃダメだ。未来の君みたいな人が、この映画を観て映画を作ろうと思うかもしれない」と。
で、その作っている映画のタイトルというのが『メタルストーム』で、SFラブアクションという詰め込み過ぎ危険な予感のするものなんですよ。
でもですね、この『メタルストーム』、実際にあった作品で、1983年にユニバーサル・ピクチャーズ製作で公開されました。
また、『フォール・ガイ』は、1980年代に放送されたテレビドラマ『俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ』をリメイクした作品でもあるんです。で、チラッと当時実際に出演していたキャストが出てきたりします。
きっと監督はこれらの映画が昔大好きで、映画に関わる仕事をしようと思ったきっかけになったんでしょうね。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
『フォール・ガイ』について解説をお届けしました。

ただのラブコメアクションだと思っていたら、それはまんまとセクシーベーコンでした。

アクション愛がたっぷりのいい映画なんだね。
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