『AKIRA』に関して知っておきたい10のこと

アニメ映画

1988年に公開され、その圧倒的な映像と革新的なストーリーで世界を震撼させたアニメーション映画『AKIRA』。

公開から35年以上経った今もなお、その魅力は色褪せることなく、多くのファンを魅了し続けています。

bitotabi
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本記事では、『AKIRA』をより深く知るための10のポイントをご紹介します。

ダニー
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観た人も、まだの人もぜひ読んでみてね!

1. 息をのむ映像美と驚異的な制作時間・費用

『AKIRA』の映像は、公開当時、そして現代においても驚異的なクオリティを誇ります。総作画枚数は約15万枚、総カット数は約2200カットにも及び、制作費は約10億円と言われています。これは、当時のアニメーション映画としてはまさに破格の規模です。

同年公開の『となりのトトロ』の作画枚数が約5万枚であることと比較すると、その差は歴然です。 特に、金田バイクが滑り込むように停止するシーンは、その緻密な描写と迫力で観る者を圧倒します。この一連のシーンだけに特化した作画枚数の公式な記録はありませんが、映画全体の膨大な作画枚数とカット数、そして数百名規模のアニメーターが動員されたことからも、気の遠くなるような時間と労力が費やされたことが伺えます。

手描きアニメーションの限界に挑戦した、まさに職人技の結晶と言えるでしょう。

2. 唯一無二の音楽が織りなす革新的な音響世界

音楽を担当した芸能山城組のサウンドは、『AKIRA』の世界観を決定づける重要な要素です。彼らは、世界各地の民族音楽や祭りの音をフィールドレコーディングで採取し、ブルガリアン・ヴォイスのような独特の歌唱法や、ガムランなどの民族楽器を大胆に取り入れました。

さらに、自作の楽器や特殊な音響効果も駆使し、従来の映画音楽にはない、土着的な力強さ、神秘性、そして実験的な響きを生み出しました。日本の伝統芸能である歌舞伎囃子雅楽の要素も融合され、作品に独特の精神性と儀式的な雰囲気を与えています。鉄雄が振り向く印象的なシーンでは、重厚な民族音楽的な打楽器のリズム、不気味な電子音、そして呪術的な女性ボーカルが絡み合い、彼の内なる力を強烈に表現しています。

『AKIRA』の音楽は、それまでのジャパニメーションの音楽表現を大きく塗り替える、オリジナリティ溢れるサウンドスケープを創り出したと言えるでしょう。



3. 時代の熱狂とカウンターカルチャーの息吹(1980年代の日本と世界)

物語の舞台となる未来のネオ東京は、1980年代の日本の若者文化、特にバイクファッション、そして社会に対する反抗精神(カウンターカルチャー)を色濃く反映しています。

当時の日本は、バイクブームの中で改造バイクや暴走族が若者文化の一翼を担い、自由なファッションが流行していました。管理教育や画一的な社会に対する不満も高まっており、作中の若者たちのエネルギーや怒りの源泉となっています。

世界的に見ても、パンク・ロックヒップホップが既存の社会体制や価値観への反抗として台頭し、冷戦下の不安が若者たちの間に広がっていました。

『AKIRA』は、こうした時代背景の中で、若者たちの持つエネルギー、不満、そして未来への不安を、独自のSF的な世界観の中で増幅して描いていると言えるでしょう。



4. 騒然とした留置所の背景にある社会情勢(1980年代の日本と世界の政治・社会情勢)

物語の中で、留置所が常に騒がしい様子は、政府と反政府勢力(革命派)の激しい衝突を象徴しています。

1980年代の日本は、安定した経済成長の裏で政治腐敗への批判が高まり、新左翼運動の残滓によるテロ事件も散見されました。

世界では、冷戦の激化と各地の紛争、第三世界の革命運動、そしてテロリズムの台頭など、不安定な社会情勢が続いていました。

『AKIRA』における政府と革命派の衝突は、これらの現実の出来事を直接反映したものではありませんが、社会の矛盾や不正に対する不満、既存の権力構造への挑戦といった、当時の世界共通の社会情勢を背景に描かれていると解釈できます。

5. 豪華声優陣がキャラクターに命を吹き込む(日米の実力派キャスト)

『AKIRA』のオリジナル版(日本語版)の声優陣は、豪華な顔ぶれです。

  • 金田正太郎役:岩田光央(代表作:タッチ – 上杉達也役、頭文字D – 藤原拓海役、ONE PIECE – エンポリオ・イワンコフ役)
  • 島鉄雄役:佐々木望(代表作:幽☆遊☆白書 – 浦飯幽助役、機動戦士ガンダムΖΖ – エルピー・プル役、MONSTER – ヨハン・リーベルト役)
  • ケイ役:小山茉美(代表作:Dr.スランプ アラレちゃん – アラレ役、機動戦士Ζガンダム – ハマーン・カーン役、美味しんぼ – 栗田ゆう子役)

海外版では、

  • 金田役(過去の英語版):カム・クラーク(代表作:ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ – レオナルド役、メタルギアソリッド – リキッド・スネーク役、NARUTO -ナルト- – 緑青アオイ役)
  • 鉄雄役(過去の英語版):ジョニー・ヨング・ボッシュ(代表作:TRIGUN – ヴァッシュ・ザ・スタンピード役、BLEACH – 黒崎一護役、コードギアス 反逆のルルーシュ – ルルーシュ・ランペルージ役)

といった実力派声優たちが、それぞれの言語でキャラクターに新たな命を吹き込んでいます。彼らの卓越した演技は、『AKIRA』という作品の深みをさらに増し、世界中の観客を魅了する要素の一つとなっています。

6. 革新的な制作手法:プレスコの導入

『AKIRA』の制作において特筆すべき点は、プレスコという手法を本格的に導入したことです。

通常のアニメ制作とは異なり、アニメーション制作前に声優がセリフを収録し、その録音に合わせてアニメーターが映像を制作するこの手法により、『AKIRA』はキャラクターのリアルな口の動きと豊かな感情表現、そして音楽との一体感を実現しました。声優は映像に縛られることなく感情を込めた演技に集中でき、アニメーターはそれに合わせて細やかな動きを描くことが可能になったのです。

この斬新な試みは、作品のクオリティ向上に大きく貢献し、後のアニメーション制作にも影響を与えました。



7. 驚くべき予言性と東京オリンピック

『AKIRA』が公開された1988年当時、2020年の東京オリンピック開催は決定していませんでした。

しかし、作中には「東京オリンピックまであと147日」という看板が登場し、その予言的な描写は公開当時から大きな話題を呼びました。

さらに、実際に2020年(実際には2021年開催)の東京オリンピック開会式では、『AKIRA』を彷彿とさせるような演出も見られ、その影響力の大きさを改めて示しました。

未来を描いた作品が、現実の出来事と重なるのは、非常に興味深い現象と言えるでしょう。

8. 世界を魅了したジャパニメーションの金字塔(バイクシーンはオマージュ多数)

『AKIRA』は、その圧倒的な映像クオリティと革新的な演出によって、海外のアニメーターやクリエイターに多大な影響を与えました。

ジャパニメーション」という言葉が世界に広まるきっかけの一つとなり、その後の日本アニメの海外展開に大きく貢献しました。

特に、金田の駆る特徴的な赤いバイクの疾走感あふれるシーンや、スライディングストップといったアクションは、公開後、国内外の様々な作品でオマージュされています。

近年では、ジョーダン・ピール監督作『NOPE/ノープ』や、可愛らしいパペットアニメ『PUI PUI モルカー』、そして世界的な人気を誇る『ポケットモンスター』など、ジャンルや表現方法を超えて、『AKIRA』の象徴的なバイクシーンへのリスペクトが感じられる場面が見られます。その革新的な映像表現や、ディストピア的な未来を描く世界観は、現代の多くのSF作品やクリエイターにインスピレーションを与え続けています。

9. 映画版ならではのキャラクター描写

映画版『AKIRA』は、限られた尺の中で、原作漫画の序盤部分をベースにしつつ、キャラクターの描写にいくつかの独自のアレンジを加えています。

鉄雄の暴走はより急激に描かれ、不安定さや焦燥感が強調されています。ケイ金田をサポートする、より内面的なキャラクターとして描かれ、超能力も限定的です。

金田のリーダーシップと仲間を思う気持ちが強く描かれ、人間的な弱さや優しさが見られます。

大佐は国家の秩序を守ろうとする、よりストレートな軍人として描かれ、アキラに対する複雑な感情は簡略化されています。

これらの変更は、金田鉄雄の対立を軸とした物語をよりフォーカスし、視覚的なインパクトを強めるための意図的なものと言えるでしょう。

 



10. 今なお色褪せない魅力:リバイバル上映の頻度

公開から35年以上が経過した現在でも、映画『AKIRA』は多くのファンに愛され続けており、その証拠にリバイバル上映が頻繁に行われています。

正確な回数を全て把握することは困難ですが、1988年の劇場公開以降、数多くの映画館やイベントで、定期的にリバイバル上映されています。

特に、デジタルリマスター版が制作されて以降、その高画質・高音質で再び劇場体験を求めるファンが多く、全国各地の映画館で上映される機会が増えました。ミニシアター系の映画館では、特集上映の一環として『AKIRA』が上映されることも珍しくありません。

また、アニメーションフェスティバルなどのイベントでも、そのカルト性から上映作品として選ばれることが多いです。

これほどまでに頻繁にリバイバル上映が行われるアニメーション映画は稀であり、それは『AKIRA』が時代を超えて人々の心を捉え、色褪せない普遍的な魅力を持っていることの何よりの証と言えるでしょう。

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます。

『AKIRA』が持つ革新的な映像、深遠なテーマ、そして多くのクリエイターに影響を与え続けるその力は、これからも決して衰えることはないでしょう。

bitotabi
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この記事を通して、『AKIRA』の魅力を再発見し、まだ観たことのない方は、ぜひその衝撃的な世界を体験してみてください。

ダニー
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