ファッション革命の影に、”家政婦のおばさん”あり
映画「ミセス・ハリス、パリへ行く」を鑑賞しました。
新年の劇場鑑賞2本目です。
1957年のロンドンとパリを舞台にした作品。
ファッションの変遷を学べるとともに、ハリスおばさんから夢を持つことの大切さや勇気をもらえる、笑って泣ける素晴らしい作品です。
今回の記事では、「ミセス・ハリス、パリへ行く」をより楽しむために、当時のファッション文化を中心に解説していきます。
STORY
舞台は 1950 年代、ロンドン。戦争で夫を亡くした家政婦がある日働き先で 1枚の美しいドレスに出会う。それは、これまで聞いたこともなかった、 クリスチャン ディオールのドレス。 500ポンドもするというそのドレスに心を奪われた彼女は パリへディオールのドレスを買いに行くことを決意。 新しい街、新しい出会い、そして新しい恋・・・? 夢をあきらめなかった彼女に起きる、素敵な奇跡。 いくつになっても夢を忘れない―見た人誰もが ミセス・ハリスから勇気をもらえる、この冬一番のハッピーストーリー!
パルコ・ムービーより引用
まずは、個の素晴らしい作品について、私の感想をお伝えさせてください!
私の感想
めちゃくちゃ感動しました。
私は割とお金を使うことに対してシビアな思考を持っていますが、それでも感動します。
また、華やかな王道を走ってきたように見える、ディオールのようなハイブランドにも経営難の時期があり、それが社会情勢に大きく関わっているのだということもインプットできました。
あと、ミセス・ハリスのキャラクターがいいです。明るくて、健気で。
ナターシャ役のアルバ・バチスタも素敵です。
それでは、解説に参りましょう!
まずは、今作の撮影に全面協力した、ファッションブランド”ディオール”について解説していきましょう👇
ディオールにショーウィンドウがない?
当時のディオールは全てオーダーメイドでした。
ドレスというものは一品物で、同じものは2度と作らなかったそうです。
今ではハリウッドスターですら、パーティの際にドレスが被ってしまうというのに…笑
当時の、ものすごいこだわりとか、上流階級意識が伝わりますね!
そもそも、時代的にあまり既製服がなかったようです。デパートでも寸法を測って作っていました。
日本でも、昔は家庭で作るケースがほとんどでしたものね。
ファッションショーは一般参加不可?
当時、ファッションショーは、一般の人が参加するようなものではありませんでした。
ごく一部の富裕層の限られた人だけが観にいって、オーダーできるという敷居の高い催しだったのです。
今では考えられないことですが、一昔前は、
上流階級はオーダーメイドで高級店で買う。
それ以外の貧困層は手作りする。
というのがほぼ真っ二つに分かれていたのです。
それでは、どのような経緯で、ディオールのような高級店が、今のような既製服を販売することになったのかというと、これには物語の舞台である1957年が大きく関係しています。
1957年という時代
なぜ今のような吊るし服や、既製品の販売が一般的になったのかというと、これはズバリ、中産階級がメイン消費者となったことにあります。
1955年にエルビス・プレスリーがデビューしました。
いわゆるポップカルチャー、大衆音楽の先駆けです。
そのあたりから、上流階級と、貧しい労働者に大別していたのが、中産階級と呼ばれる人たちがどんどんどんどん増えてきます。
そして、上流階級は没落していくと。
日本でも、アメリカでも、イギリスでもです。
そうなった時に、ブランド店が販売を始めたのが、prêt à porter(プレタポルテ)=高級既製服なのです。
「ミセス・ハリス、パリへ行く」で描かれる1957年はちょうどその過渡期という訳ですね。
ディオールがこれから変わろうとしていく様をハリスと共に楽しく描いているのです。
アンドレのモデルはイブサンローラン
そして、高級店の中でいち早くプレタポルテを始めたのが、イブサンローランです。
「オシャレはすべての人に開かれるべき」
という革命的な思想を体現した人物です。
映画ではアンドレというデザイナーがモデルになっています。
メガネをかけた見た目もよく似てますね。
彼が、ミセス・ハリスに背中を押されて、ディオール氏に物申すシーンは鳥肌ものです!
レスリー・マンヴィル
レスリー・マンヴィルは、2017年に「ファントム・スレッド」という作品で助演女優賞を受賞しています。
この「ファントム・スレッド」もまた、1950年代のロンドンを描いています。
しかし、役は真逆です。
オーダーメイドの仕立て屋のマネージャー役を演じています。
これはすごい!名女優です!!
「ハウス・オブ・グッチ」の対極
「ハウス・オブ・グッチ」は、大衆化することで、グッチというブランドの職人技が滅んでいく様を描いていましたね。
確かに高級店のTシャツなのに、ほつれや生地の薄さが気になることってありますから…。
このあたりの考え方は人によりけりでしょうか。
ファッションっておもしろいです。
インビジブル・ウーマン
この作品を観て最も驚いたポイントです。
ミセス・ハリスは自身のことを”インビジブル・ウーマン”と呼んでいます。
家政婦のような仕事は、影に徹してなんぼの、人から見えないように、注目されない存在であるという。
何とも悲しい表現です。
そして驚いたことに、”ディオール”で働く人々の中にもまた、”インビジブル・ウーマン”がいるのです。
”お針子さん”は何となくわかるのですが、なんと”モデル”にもまた、そういった側面があったのです。
詳しくは映画を観てご確認いただければと思います。
夢の大切さ
自分を”インビジブル・ウーマン”(透明人間)だという、ミセス・ハリス。
そんな彼女が、”ディオールのドレスが欲しい”と願うことで、まるで少女のような輝きとエネルギーを放つ。
やがて、その輝きとエネルギーは、周囲の人をも勇気づける。
たとえ年齢を重ねたとしても、いつまでも夢を持つことの大切さを教えてくれる素晴らしい作品です。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画「ミセス・ハリス、パリへ行く」を通じて、ファッションの歴史について紹介しました。
とてもオススメの作品です!
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