鬱々とした気持ちが最後は逆転する。不思議な映画。
映画「ドッグヴィル」を鑑賞しました。
ラース・フォン・トリアーの作品です。
ラース・フォン・トリアーといえば、代表作「ダンサー・イン・ザ・ダーク」がそういわれるように、鬱映画を作ることで有名です。
本作も、もれなく、そういった感じでした。
個人的に、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」は、そこまできつくなかったので、本作の方がダメージを受けましたね…。
「キングダム」を機に、すっかりラース・フォン・トリアーの作品の沼にハマってしまいました。
前に「メランコリア」を観ていたよね。
本作もかなり強烈で刺激的だったよ!
作品概要
2003年 監督:ラース・フォン・トリアー デンマーク・イギリス他
STORY:大恐慌時代の廃れた鉱山町ドッグヴィル。偉大な作家となることを夢見ていたトムは、ギャングに追われたグレースを奉仕と引き換えにかくまうことを町の人々に提案する。しかし、住人の態度は次第に身勝手なエゴへと変貌してゆき…。
アップリンク京都作品紹介ページより引用
本作は第56回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にノミネートされました。
もう、カンヌ常連ですね。この作品で6度目のノミネートだとか。
鬱映画としてもメジャーな本作ですが、
一番の特徴は何といってもそのセットの大胆さにあるでしょう。実にカンヌ味があります。
床に白線を引いただけのセット
本作は、全編大きなスタジオのようなところに、白線と少しの舞台セットが置かれているだけなんです。
まるで、舞台演劇を観ているような気分になります。
犬まで白線なんです笑
でも、全然退屈しないし、手抜きをしているようにも一切思えない。
これが奇才ラース・フォン・トリアーの凄さといったところでしょうか。
人間の醜さと愚かさを真っ向から描く
本作に登場するドッグヴィルの人々は、はじめこそ寛容で親切ですが、次第に主人公グレースに対して厳しい態度を表します。
男性にいたっては、なんだかんだ理由をつけて彼女を襲ったりするんです。
もう最低ですね。
で、これは社会の縮図というかアメリカという国の人々を表しているんですよ。
弱い者から搾取し、指図し、支配しようとするというね…。
5章以降はどんどん落ち込んでいく展開です。
しかし、最後の最後、変化が訪れます。
ラストシーンはスカッとしちゃいました…
ラストでは、グレースの父親とその子分たち(マフィア)がやってきて、村に火をつけ、銃でもって村人を皆〇しにします。(マフィアの一人にリトル・ブラザーがいます)
はじめは葛藤するグレースですが、考えた末に怒りの方が勝ってしまい、指示を出してしまうのです。
散々グレースが酷い目に合っているのを観てきたので、正直私はスカッとしてしまいました…。
大量虐〇なので、めちゃくちゃ悪いことしてるんですけどね。
しかし、この気持ちの逆転というか、揺さぶりこそが、ラース・フォン・トリアーの仕掛けなのだと思います。
一体どう受け止めればいいのか。これを我々に鬱々と考えさせるために作った映画なのでしょう。
そして、その直後に流れるエンドロールも素晴らしい。
アメリカのストリートで暮らす人々や、貧困層の人々の写真が次々と流れるんです。
アメリカって実はこんな一面があるんやでと。
ほんと、すごい監督や…。
犬に関する考察
白線で“DOG”としか書かれていなかった犬ですが、最後の最後に登場します。
この犬の名前が「モーゼス」なんですよ。(ここの飼い主のお母ちゃんは、子どもの名前も神話からとったものをつけている少し変わった人だった)
そして、村人がみんな亡くなった後このモーゼスだけ生き残って、ラストショットではその姿まで現れます。
モーゼスはどう考えても「預言者モーゼ」から来ているはずです。
人間は皆いなくなって、人間を導くモーゼだけが生き残った。
村人たちに嫌気がさしたとも捉えられますし、別の村でまた人間を支えようという希望のあるラストともとれますね…。
ニコール・キッドマンもいい
本作はニコール・キッドマンが主演です。
いわゆるドル箱俳優なので、こういった映画との相性はいかがなものかと思いましたが、めちゃくちゃよかったです。
非道な扱いを受けても人を信じようとする健気な女性が、見事にハマっていました。
「アイズ・ワイド・シャット」とはえらく違う役でしたね。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画「ドッグヴィル」の見どころや考察をお届けしました。
あなたはあのラスト、いかがでしたか?スカッとしちゃいました?
エンドロールもたまらないよね。
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