「心臓の前に脳が壊れるすべての人へ」
映画『VORTEX』をシネリーブルで鑑賞しました。
新作のたびにその実験的な試みと過激描写で世界中を挑発し続けてきた鬼才ギャスパー・ノエ監督。
これまでの作品で描写されることが多かった「暴力」「セックス」を封印し、「病」と「死」をテーマに自身の経験を経て新たな世界を作り上げたました。
人は、いかに死んでいくのか?誰もが目を背けたくなる現実を、監督自身の経験を踏まえながら、真正面から冷徹なまでにまざまざと描いた、新境地の作品です。
STORY:映画評論家である夫と元精神科医で認知症を患う妻。離れて暮らす息子は2人を心配しながらも、家を訪れ金を無心する。心臓に持病を抱える夫は、日に日に重くなる妻の認知症に悩まされ、やがて、日常生活に支障をきたすようになる。そして、ふたりに人生最期の時が近づいていた…。
https://synca.jp/vortex-movie/
何だか凄そうだね…。
まずはキャストについて解説していきます!
主演は何と…!
主演は、80歳にして初主演を果たしたホラー映画の帝王ダリオ・アルジェント。
言わずと知れたホラー界の巨匠ですね。
『サスペリア』『インフェルノ』『サスペリアⅡ』などが有名です。
いわゆるジャッロ映画というジャンルを確立した人物ですね。
2022年に最新作『ダークグラス』が公開され、80歳ながらまだまだ現役バリバリです。
『ダークグラス』の記事の中で、ジャッロ映画についても詳しく解説していますので、ご一読ください。
それに加え、今回の俳優としての活躍。
凄まじいエネルギーですね…。
もう、ドキュメンタリーを観ているかのような素晴らしい演技でした。
もう、息苦しそうな演技は本当にこちらも息が詰まるほど。
映画評論家という、自身とも被るような役どころなので、セリフの中には、映画作りに対するメッセージが込められているものもたくさん観られました。
妻を演じるのは『ママと娼婦』の娼婦役で鮮烈な映画デビューを飾り伝説的な女優となったフランソワーズ・ルブラン。
彼女は認知症患者を演じています。
これがまたリアルなんですよ…。
映画だということを忘れてしまうほどでした。
OPに注目
本作はOPに面白い仕掛けがあります。
主演や監督の名前と共に、生年が表示されるんです。
Gaspar Noé 1963 Dario Argento 1940 Françoise Lebrun 1944
みたいな感じです。
もちろん、ユニークな演出だとは思いますが、これによって、年齢が映画を読み解くキーになるんだなとい仕掛けにもなっています。
二つの画面
本作はスプリットスクリーンの画面分割によって、老夫婦の日常が2つの視点から同時進行で映し出されていきます。
ギャスパー・ノエ監督の作品『ルクス・エテルナ』でも同じ技法が用いられていました。
他の映画ではなかなか体験できないですよ。
なにせ、情報量が2倍ですからね。
めちゃくちゃ忙しくて、疲れます笑
それもまた、認知症患者自身と、介護者の苦労に少しでも近づけるような仕掛けなのかもしれませんね。
主に映画では妻と夫それぞれの視点が映し出されます。
果たして、一方の視界が閉じられる時、どのような演出がされるのか…。
このあたりにも注目してご覧ください。
映画に対するメッセージ
先述した通り、本作ではダリオ・アルジェント演じる映画評論家のセリフを通じて、映画に対するメッセージが込められています。
彼は、映画と夢の関連について執筆中であるという設定です。
また、本作はセリフのほとんどがアドリブだということなので、ダリオ・アルジェント自身の思いが詰まっているといえるでしょう。
「映画館は夢の雰囲気と近い。映画館で映画を観ることは、極限のリラックス状態だといえるだろう」
というセリフがとても印象に残りました。
また、フェデリコ・フェリーニと溝口健二の名前も登場します。
フェリーニといえば、『82/1』。
夢との結びつきが非常に強い作品です。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『VORTEX』の見どころをお伝えしました。
ギャスパー・ノエの攻めっぷりが新たなかたちで映像化された本作。見逃せませんよ。
ダリオ・アルジェントの凄まじい演技にも注目だね!
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