映画『落下の解剖学』。
パルムドール受賞、ゴールデングローブ賞脚本賞、さらにアカデミー賞にもノミネートされている今期再注目作品。
もうご覧になられましたか?
今回の記事はネタバレ記事だから、観ていない人は気をつけてね!
私はめちゃくちゃ好みの作品で、ずっと余韻が残っています。
本作は、真相を傍聴席にいるような感覚で追っていくストーリーになっています。
裁判の決着は着くのですが、夫がどうして死んだのか、真相は分からないままなのです…。
そこで、今回の記事では、私なりに考えた真相について述べていきたいと思います。
真相について
私は母親による殺害が事件の真相だろうと思うのです。
率直に、この可能性が一番高いだろうと感じました。
詳しく説明していきます。
動機に関しては十分かと思いますので割愛します。
考察1 音楽
音楽は母親が遠隔でリピート再生していたのでしょう。
そもそも誰もいない時にやればいいじゃんって思うかもですが、
学生という証言者がいると有利に働くと考え、あえてあのタイミングで実行したんですね。
あと、タイミング的にも、夫が屋根裏で作業するあの時がベターだったのでしょう。
また、あの音楽は、ドイツのスティールパン・バンド「Bacau Rhythm & Steel Band」による「P.I.M.P.」という曲です。
あの夫婦って、妻がドイツ人なんですよ。夫はフランス人。
これもまた、妻が再生していたと考える、一つの要因です。
考察2 息子
息子は、事故で目が視えないと思いきや、完全に視えないわけではなく、実は少しだけ視えているということが終盤で明らかになります。
アスピリンのシーンですね。
息子が少し視えていて、母親の犯行であることも分かっているとすると、様々な行動に納得がいきます。
彼はかなり聡い少年です。
コロコロと意見を変える点も、母親を無罪にしようと思ったが故のことだったのでしょう。
ではなぜ、嘘の証言をして母親をかばったのか。
これはもちろん、大切な肉親だからというもあるでしょう。
しかし、一番大きな要因は、母が怖かったからなのではないかと思います。
父と母の喧嘩の録音テープには、
「おまえのことをモンスターだと息子も言っていた」
という声が入っていました。
この家庭は、女性優位社会で、父にとっても、息子にとっても、母は強すぎる存在だったのでしょう。恐ろしいほどに。
ラストでも、息子は、
「ママが帰ってくるのが怖かったんだ」
というセリフを言います。
これも解釈の仕方は様々ですが、息子にとって、母親はただ愛しい存在ではないはずです。
考察3 夫の遺言
本作は、裁判で妻の無罪という一応の結論がつきます。
それならば、真相がどちらにせよ、妻の勝利に思えますが、はたしてそうなのでしょうか。
弁護側や知らなかった情報として、前日の喧嘩の録音データが裁判で流されますよね。
もちろん、妻も録音されていることに気づいていませんでした。
あの録音データさえなければ、妻は、精神が不安定な夫を支える、よき妻という印象を守りきれたでしょう。
しかし、あのデータが流出したことにより、自身の浮気や、夫への暴力行為すらも明るみに出てしまいました。
裁判はニュースで報じられるほどだったので、彼女の世間的なイメージはかなり悪いものになったでしょう。
また、夫は、息子に対して自分が死んでしまうことをほのめかすような発言をしています。
ああいった録音データを手に入れた後に、何らかのかたちで命を絶ち、裁判でデータを露見させる。
この脚本を、夫は描いていたのですね…。
この場合、夫の死が自殺だったとしても、妻へのダメージは相当なものになります。
夫の遺言により、妻の世間的なイメージは失墜したことでしょう。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
まだ思いつくことがありそうなので、また追記します。もう一回観に行こうかな…。
分かった上で観ても楽しいかもしれないね!
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