『コール・ジェーン』を観て、中絶について考える。

ドキュメント・ノンフィクション系映画

お母さん、戻ったほうがいいわ

映画『コール・ジェーン』をシネリーブルで鑑賞しました。

1960年代のアメリカで女性の選択の権利としての人工妊娠中絶を描いた実話を基にした映画です。

bitotabi
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面白い上に、とても勉強になる作品でした!

ダニー
ダニー

重いテーマだけど、コメディタッチだからとっても観やすかったね。

主演は監督としても俳優としても活躍するエリザベス・バンクス。

また、シガニー・ウィーバー、ケイト・マーラ(ルーニー・マーラの姉)、クリス・メッシーナらが脇を固めています。

今回の記事では、映画『コール・ジェーン』をより楽しむための解説をお届けします。

「ジェーン」は実在した団体

https://www.heyalma.com/a-brief-history-of-the-jane-collective/

本作に登場する「ジェーン」は実在した団体です。

人工妊娠中絶が違法だった1960年代後半から70年代初頭にかけて、推定12,000人の中絶を手助けしたと言われています。

主人公のジョイは、妊娠しますが、出産すると自身の命が危ないということで、中絶を選択します。

しかし、当時は自由に中絶をする権利が女性にありません。もし勝手に中絶したら、それは殺人罪として罪に問われてしまうんです。

そして母体の命を守るために、中絶を許すのは男性医師たちでした。

複数の男性医師たちが会議をした結果、子どもの命と天秤にかけて、中絶に値するかどうかを決められるんです。

映画の中では、その会議はジョイさん本人の目の前でおこなれていました。「50%の確率で、母体も助かる。ならば中絶は反対!はい、ダメ!」って感じで会議は終了するんですよ。

bitotabi
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これには驚きました…。

他に道はないものかとジョイが尋ねると、精神科医の診断書があれば許されるといわれるのですがそれも上手くいきません。

主人公の夫は弁護士なので、法律を破るわけにはいかず、手を貸せずにいるんですね。

何とかするには闇医者に頼むしかなく、必要金額は1000ドル。

実は、当時のアメリカで、女性は銀行口座をもつことが許されなかったので、夫の小切手を偽装する必要があります。

それに加えて、闇医者の手術では命を落とす可能性がかなり高い。

そこで、主人公が頼ったのが、秘密組織「ジェーン」でした。

実際に活動してた時の名前は「ジェーンコレクティヴ」です。

南部の黒人奴隷解放団体「地下鉄道」にヒントを得て結成された組織で、中絶したい女性を助けるために発足されました。

電話番号と「ジェーンに電話して」というメッセージが書かれた紙を町中に貼り、中絶したくて困っている女性を助ける運動をしていました。

彼女たちの闘いは実を結び、この中絶合法化の契機となったのが、1973年にテキサス州ダラスの地方検事ヘンリー・ウェイドを相手に闘った裁判「ロー対ウェイド事件」であり、その勝訴も映画では描かれています。

しかし、1973年アメリカ連邦最高裁が合法判決を下した「ロー対ウェイド事件」から50年、今、米国では、再び違法とする動きが活発化し、論争が激化しています。

アメリカの連邦裁判所が中絶の権利を憲法は守らないという判決を出し、共和党が多数派の州議会の州は中絶を禁止してしまったのです。

だから、今も共和党が支配していない州へ中絶しにいかなければならず、「ジェーン」は今も活躍しています。メンバーは違えど、意思はそのままに、名前もそのままだそうです。

ですので、女性たちが自ら権利を勝ち取った実話を映画化した本作は、今観るべき社会派作品だと言えます。

 



性教育がなかった?

当時のアメリカでは、性教育がほとんどされていませんでした。

映画の中でも、ジョイが少女へ子どもの出来るメカニズムについて説明を求められるシーンがあるんですが、上手く伝えられないんです。

メカニズムどころか、自分の身体のことすらわかっていない様子でした。

当時のアメリカは、それだけ性について閉鎖的だったんですね…。

ちなみに、1912年頃からアメリカで活躍していたマーガレット・サンガーという女性。

彼女は産児制限のために、パンフレットを作って配布するんですが、それが猥褻罪に値するということで、逮捕されたそうです。

https://www.thoughtco.com/margaret-sanger-biography-3530334

どうして中絶は罪なのか

どうして中絶が罪に問われていたのか。(現在も州によっては禁止されています)

これは、キリスト教福音派のような、キリスト教倫理の強い人々が欧米にはたくさんいるからです。

敬虔なカトリックの考え方では、避妊具も教えに反するものだと言われます。

婚姻前の肉体関係や、子どもを堕ろす行為は、罪深いものだと考えられてきたわけです。

このあたりは、映画『あのこと』を観るとよく分かると思います。

しかし、1960年代から1970年代にかけて世界各地の女性解放運動は、「妊娠」の呪縛から解放されようと、まずは避妊薬の獲得を目指し、それが実現すると、引き続き中絶の合法化を目指しました。

キリスト教倫理の強い欧米諸国で中絶は厳禁とされていましたが、1967年のイギリスで解禁されたのを皮切りに、1970年フィンランド、1973年アメリカ、1975年フランス、1976年西ドイツなど各国で次々と合法化されていったのです。

映画の中で、ジョイがベトナム反戦運動を見て「流れを変える大きな力を感じた」といっているシーンがありました。

ベトナム戦争以降、カウンターカルチャーが世界中に広がり、性が解放されたと共に、避妊に対する意識も大きく変わっていったのでしょう。

 



日本の性教育は?

欧米の話だと油断するなかれ。

日本の性教育もかなり抑圧されているんです。

現在、日本の教育現場では、避妊を教え辛い現状があります。

2018年に東京都足立区の区立中で性交を扱った授業をしたところ、一部の都議会議員がそれを問題視します。

このことが、性教育に携わる教員が萎縮するきっかけとなりました。

学校現場では、正しい知識をいかにして生徒に伝えるか苦慮しています。

日本の教育課程では、中学1年生のときに、成長に伴い男女の体がどのように成熟していくかや、ヒトの受精卵がどう胎内で成長するのかを学びます。

しかし教科書には、受精の前提となる性交についての記述はありません。

その理由は、国が定める学習指導要領に「妊娠の経過は取り扱わないものとする」という一文があるためです。

これが通称「はどめ規定」と呼ばれています。

この「はどめ規定」によって、避妊具の推奨はできないという現状にあるわけです。

日本にはキリスト教やイスラム教は多数派ではありませんので、あくまで道徳観とか倫理観で判断することになりますが、これを正しいと思うか危ういと思うかは人それぞれでしょうね…。

一つの現実として、望まない妊娠を避けたいのであれば、子どもを信じるだけでなく、ご家庭で妊娠や避妊具のお話をされるべきかもしれません。

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます!

映画『コール・ジェーン』をより楽しむための解説や感想をお伝えしました。

ダニー
ダニー

とっても勉強になる映画だよね。

bitotabi
bitotabi

ちょっと真面目な方向にいってしまったので伝えられませんでしたが、シガニー・ウィーバーがめっちゃカッコいいですよ。「来世でオペラを唄いたいから」ってセリフなんてたまりませんでした。

 

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