愛について打ち明けられない葛藤

映画

部屋に入ってやらなくて悪かった

映画『異人たち』をTOHOシネマズで鑑賞しました。

今回の記事は、映画『異人たち』をより深く味わうための解説です。

bitotabi
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読んでからでも楽しめますので、ある程度情報をインプットしてから観たい人や、映画を観て疑問をお持ちの方は復習としてお読みいただければと思います。

ダニー
ダニー

公式サイトのあらすじはこちらです!

夜になると人の気配が遠のく、ロンドンのタワーマンションに一人暮らす脚本家アダムは、偶然同じマンションの謎めいた住人、ハリーの訪問で、ありふれた日常に変化が訪れる。ハリーとの関係が深まるにつれて、アダムは遠い子供の頃の世界に引き戻され、30年前に死別した両親が、そのままの姿で目の前に現れる。想像もしなかった再会に固く閉ざしていた心が解きほぐされていくのを感じるのだったが、その先には思いもしない世界が広がっていた…

https://www.searchlightpictures.jp/movies/allofusstrangers

タイトルについて

本作は山田太一さん原作小説『異人たちとの夏』を『荒野にて』『さざなみ』のアンドリュー・ヘイ監督が映画化した作品です。

本来「異人」というのは、外国人とか別の人を意味する言葉ですが、ここでいう「異人」は人とは異なるもの、つまり幽霊のようなものを指しています。

原作の『異人たちとの夏』や1988年公開された映画では、お盆を舞台にしているんですね。お盆に両親の幽霊が帰ってくるような感じでしょうか。

そして、今回の『異人たち』では「夏」がなくなってますね。西洋でお盆がないというのもありますし、どちらかというとクリスマス寄りの脚色になっていました。

加えて、「異人」という言葉がトリプルミーニングになっているんじゃないかと、私は思います。

まず、両親の幽霊を指す異人。

そして、同性愛者である、主人公やハリーを指す異人。

性的マイノリティである同性愛者を表す表現としても、「異人」という言葉を用いているのではないでしょうか。

また、原題は『All of Us Strangers』です。

「私たちみんなが、異人である」という意味になります。

「Stranger」は日本語とは若干意味が違って、「初めて来た人 よそから来た人」などの意味の他に、「知らない人」という意味もあります。

さらに、「未経験な人」という意味もあるんですね。

人を愛することを知らない、真剣に人と向き合うことから逃げてきた主人公アダムに対して「未経験な人」という意味も込めているのではないかと感じました。(同性と愛し合うことも初めてだと言ってましたね)

もう一つだけ加えておくと、『All of Us Strangers』には「私たちは家族や大切な人にとっての、周囲の人々それぞれにとっての『異人たち』なのか?」と言う意味も込められているのです。

 



80年代の同性愛

さて、上述の通り、『異人たち』が原作と大きく違っている点が、同性愛というテーマです。

https://www.searchlightpictures.jp/movies/allofusstrangers

原作では女性との恋愛を描いていますが、『異人たち』では男性同士。

これは、アンドリュー・ヘイ監督の実体験を少なからず描いているのが理由です。

両親と会うあの家は、監督自身が育った家なんだそうですよ。

アンドリュー・ヘイ監督は、オープンリーゲイ。

もしかすると幼少期に主人公アダムと同じように、ゲイだということで、ひどいいじめにあっていたのかもしれませんね。

でも、監督の両親は交通事故で亡くしたわけではないそうです。むしろ、幼い頃に離婚されているそうです。

さらに、両親へのカミングアウトもしたのだとか。

80年代は、クィアやゲイにとってかなり風当たりの強い時代だったんです。

今のように多様性を受け入れるような風潮はなかったですし、エイズが社会問題となっていたので、同性愛嫌悪が凄まじかったんですね。

お母さんの「そろそろ帰れば」というセリフは、そういった風潮を表しているんです。

そういった自分と同じ年代に生きた人へのエールのようなものが、ひとつこの映画には込められているんだと思います。

お父さんの「部屋に入ってやらなくて悪かった」というセリフは、泣いちゃいました。

でも、性的マイノリティに悩む人だけでなく、「きちんと両親に言っておけばよかった」「向き合っておけばよかった」など、そういった後悔や悩みを抱えた人にもそっと寄り添ってくれるような映画になっているんですよ。

だからこそ、監督は自身の経験とは少しずれたかたちで脚色したのだと思います。

 



音楽を知るとよりよく分かる

映画『異人たち』では80年代を中心に、たくさんのロックやテクノポップが流れます。

80年代には、ゲイであることをオープンにして活動するグループがたくさんいたのです。

「イレイジャー」や「ブロンスキービート」「フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド」などですね。

また、当時のシンセポップやテクノ、オルタナ系のバンドには、それまでの武骨でハードなロックとは少し違う、華やかなサウンドや柔らかなサウンドを奏でるグループもたくさんいて、それらはゲイの人々に好まれる傾向があったんです。

『異人たち』でもそういった曲がたくさん流れるので、音楽を楽しみながら鑑賞できます。

使用された曲をこちらでまとめましたのでぜひ。ラストシーンについてもこちらを読めば分かります👇

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます!

映画『異人たち』について解説しました。

bitotabi
bitotabi

性的マイノリティに悩む人だけでなく、「きちんと両親に言っておけばよかった」「向き合っておけばよかった」など、そういった後悔や悩みを抱えた人にもそっと寄り添ってくれるような映画です。

ダニー
ダニー

配信に時間がかかりそうだから、映画館に行けそうな人はぜひ!

 

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