シリーズきっての異色作を、今こそ語りたい
か~えせ~ か~えせ~
か~えせ~ か~えせ~
緑を青空を か~えせ~
どうしたのいきなり
みんなお馴染み、『ゴジラ対ヘドラ』の歌だよ。
『ゴジラ対ヘドラ』をご覧になられたことはありますか?
私はそこまでゴジラファンというわけではないのですが、この『ゴジラ対ヘドラ』は随分前、ホラーとかサスペンス映画とかを見まくった時に出会い、すでに鑑賞していました。
というのも、この『ゴジラ対ヘドラ』というのは、シリーズの中でも特に異色の作品で、かなり恐いというか、ヤバいんです。ぶっ飛んでます。
もう設定から音楽から何から、他のシリーズとは一線を画す内容。
今回の記事では、そんな『ゴジラ対ヘドラ』の異常っぷりを語っていきたいと思います。
異常なポイントその① 子ども向けじゃない
まず初めは、明かに子ども向けではないというところ。
ゴジラシリーズは元祖『ゴジラ』は別物として、徐々に子ども向けエンタメ作品になっていく傾向がありました。
『ゴジラ対ヘドラ』の前作前々作は『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』『怪獣総進撃』になるんですが、ゴジラとその他の怪獣たちが大暴れしたり、スパイ風味のストーリーを楽しむようなかなりエンタメ性の高い作品になっていました。
特に、『怪獣総進撃』なんて、もろに子ども向け。子どもの妄想の中で怪獣が暴れて、かつそれが子どもの成長に繋がるというジュブナイルな展開でした。
その後に公開されたのが『ゴジラ対ヘドラ』
「東宝チャンピオンまつり」という子ども向け作品の同時上映イベントの中の作品の一つとして上映されました。
同時上映は『帰ってきたウルトラマン』『みなしごハッチ』『いなかっぺ大将』『日本昔ばなし わらしべ長者』。
このラインナップの中で上映されたということを頭に置いておきながら、この続きをお読みください。
『ゴジラ対ヘドラ』は、公害が大きく取り上げられています。
当時水俣病とか光化学スモッグとか、公害問題が大きな社会問題となっていました。
人間が出す産業廃棄物や汚染物質によって、自然はおろか人間の身体にまで影響が出ていたんですね。
そのため、人間の最大の敵は公害であると。そこで、初めてゴジラを監督することになった坂野義光は、公害を怪獣にしてゴジラと戦わせようとしたわけです。
また、この「東宝チャンピオンまつり」に入ってしまっていることからもわかるように、ゴジラがヒーローになってしまい、段々とネオテニー化していくことにストップをかけたかったのだとか。
たしかにもう、キングギドラが現れてからは、完全にゴジラを応援する形になってますもんね。シェーとかしてたし…。
新たに、原点回帰、荒ぶる神としてゴジラを復活させたい、そんな想いの中出来上がったのが『ゴジラ対ヘドラ』なのであります。
そういった意味では、初代『ゴジラ』に最も近い作品だと思えなくもないです。
結局坂野監督は、やりすぎちゃった結果これ以降ゴジラを撮影することはできませんでしたが…笑
さて、この時点で子ども向けではないということはお分かりいただけかと思いますが、まだまだこの作品が異常であるポイントがございます。
異常なポイントその② 音楽がやばい
さて、続いては音楽ですね。
もう、上記の公害問題へのアンチテーゼがふんだんに詰まった楽曲がメインテーマになっており、冒頭と終わり、そして劇中でもかかります。
その名も『かえせ!太陽を』
鳥も 魚も どこへいったの
トンボも蝶も どこへいったの
水銀 コバルト カドミウム
ナマリ 硫酸 オキシダン
シアン マンガン バナジウム
クロム カリウム ストロンチウム
汚れちまった海 汚れちまった空
生きものみんな いなくなって
野も 山も 黙っちまった
地球の上に 誰も 誰も いなけりゃ
泣くことも出来ない
かえせ かえせ かえせ かえせ
みどりを 青空を かえせ
かえせ かえせ かえせ
青い海を かえせ かえせ
かえせ かえせ かえせ かえせ
命を 太陽を かえせ かえせ かえせ
かえせ かえせ かえせ
作詞は監督の坂野義光、作曲は眞鍋理一郎、歌っているのは麻里圭子とハニー・ナイツ&ムーン・ドロップスです。
もうドストレートですね。ファンクでサイケデリックな曲調もたまりません。
1971年に公開された『ゴジラ対ヘドラ』で使用されたこの曲ですが、約40年の時を経て、再び耳にすることが多くなりました。
1971年から40年、そう2011年東日本大震災ですね。福島第一原発。
あの原発事故でプルトニウムやストロンチウムという言葉が頻繁に聞こえてくるようになり、原発再稼働をやめろ!という想いから、いろんな場所でこの曲が使われたり、カバーされたりするようになったというわけです。
私が本作を観たのも、もしかしたらこの頃だったのかもしれません。
また、その他の音楽に関しても、これまでのゴジラシリーズとはかなり違います。
ゴジラの登場シーンがいつものBGMじゃないんですよね。
音楽を務めた眞鍋理一郎もまた、今回が初めてのゴジラ。師匠である伊福部昭に気を使ったというか、委縮した結果、あのような奇妙な音楽になっちゃったみたいです。
滑稽な気もするし、恐い気もする。不思議な音楽です。
異常なポイントその③ 演出が恐い
まあもうヘドラの見た目からして、もの凄く恐いんですが、本作は演出や映像もめちゃくちゃ奇妙で恐い。
まず、この作品では人が死ぬシーンがしっかり映るんですよ。
あまりこれまでのゴジラシリーズでは、人が死んでいくシーンというのは映さなかったんですが、『ゴジラ対ヘドラ』ではそれはもうはっきりと映します。
しかもグロくて恐い。
大分恐くないですか?これ。
強烈な臭気を発するヘドロと、硫酸のようなガスをまき散らすことで、ヘドラが通った後は人の肉は溶かされてしまうんですよ…。
しかもそんなヘドラは、人間による公害によってどんどん大きく、強くなっていく。最後はゴジラよりも遥かに大きな怪獣になってしまうんです。恐い。
さらに、当時公害以外に社会現象となっていた、「ゴー・ゴー」。地下で若者がサイケデリックな音楽と共に踊り狂うイベントですね。
これもしっかり見せてくるんですよ。
しかも、主人公の一人である若者が、酩酊状態にあるんですね。
多分ドラッグをキメているんじゃないかと思います。
結果、バッドトリップして周りの人が魚に見えるような演出まで。
いやー、これは流石にやばいでしょう…笑
あと、見逃せないのが、アニメーション。
『ゴジラ対ヘドラ』では、3回くらいアニメーションのシーンがあります。
これもシリーズ唯一なんじゃないでしょうか。
これもまた、奇妙で恐いんですよね~。アバンギャルドな雰囲気がムンムンなんです。
特にアニメーションのシーンは公害へのアンチテーゼが強く表れているように感じました。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『ゴジラ対ヘドラ』の異常っぷりを解説しました。
はたして、「東宝チャンピオンまつり」をルンルンで観に行った子どもたちは、どう感じたのか…。
泣いちゃう子とかいなかったのかな…。
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