不寛容方式 人格権の侵害 そして人種問題 教育現場の悩みは尽きない
映画『ありふれた教室』をテアトルで鑑賞しました。
第73回ベルリン国際映画祭にて2つの受賞を果たし、ドイツ映画賞主要5部門受賞、アカデミー賞国際長編映画賞ノミネートなど、世界中の映画祭を席巻した作品です。
教育現場のリアルな現実に根ざし、世界中の学校やあらゆるコミュニティーでいつ発生してもおかしくない「今そこにある脅威」を見事に描きます。
社会の縮図というべき「学校」を舞台にした極限のサスペンス・スリラーです。
今回の記事では、感想と、不寛容方式や人格権の侵害などについて解説を述べていきたいと思います。ネタバレをふくみますので、未鑑賞の方はご注意ください。
公式サイトのあらすじはこちら!
仕事熱心で正義感の強い若手教師のカーラは、新たに赴任した中学校で1年生のクラスを受け持ち、同僚や生徒の信頼を獲得しつつあった。そんなある日、校内で相次ぐ盗難事件の犯人として教え子が疑われる。校長らの強引な調査に反発したカーラは、独自の犯人捜しを開始。するとカーラが職員室に仕掛けた隠し撮りの動画には、ある人物が盗みを働く瞬間が記録されていた。やがて盗難事件をめぐるカーラや学校側の対応は噂となって広まり、保護者の猛烈な批判、生徒の反乱、同僚教師との対立を招いてしまう。カーラは、後戻りできない孤立無援の窮地に陥っていくのだった・・・…。
https://arifureta-kyositsu.com/
不寛容方式とは
本作の舞台であるドイツの中学校では、「不寛容方式」を取り入れているということでした。
英語でいうと、ゼロ・トレランス方式というもの。
学校のルールを違反する行為に対するペナルティーの適用を基準化し、これを厳しく適用することで、学校規律の維持を図ろうとする考え方です。
1990年代にアメリカ合衆国で始まった教育方針の一つで、
アメリカでは1970年代頃から学級崩壊が深刻化し、学校内での銃の持込みや発砲事件、薬物、飲酒、暴力、いじめ、性行為、学力低下や教師への反抗などの諸問題を生じました。
その対策として取られた手法の一つが、ゼロ・トレランス方式なのです。
ペナルティの対象を決め、措置を図ることが何より重要になるので、白黒はっきりつけようとしていたわけですね。
厳しさ故に、生徒たちは従順になりそうなのもですが、そんなこともない。
特に新人教員である主人公に対しては反抗的な姿勢が目立っていました。
かつ、この学校では留年とか落第とかの危機感を生徒たちは強く感じているようなんです。
そのあたりのストレスも相まって、生徒たちの不満は大きくなってしまったのかもしれませんね。
人格権の侵害
本作で、主人公のカーラは、同僚が財布を盗んだという決定的な証拠を掴みます。
自分のノートパソコンのカメラを起動させ、盗撮するという手段を用いて。
まあ、上手いことやったなあと私は思ったんですが、同僚の一人が、
「これは人格権の侵害だ」
と発言するんですよね。
これは結構ドキリとしました。
決定的な証拠を掴んだとしても、同僚を信じられずに、カメラで盗み撮りしていたという行為が侮辱的であると。
最近、パワハラ対策として、ポケットにスマホを忍ばせて、上司との会話を録音しているという方法をとる人が多いようですが、くれぐれもその扱い方は慎重に。
地続き故の問題
『ありふれた教室』は、ドイツの中学校が舞台です。
ドイツはヨーロッパなので、地続きの国。
つまり、多様な人種が共に暮らしているんですね。移民としてのルーツを持つ人がたくさん住んでいます。
ここが日本とは大きく違う。
ポーランド、トルコ、インド系やイスラム系の生徒もたくさんいるようでした。
で、劇中で疑われるのは全て移民系の子どもっぽいんですよね。
言葉には表さずとも、差別的な考え方が根付いているのでしょう。
主人公自身も、自分がポーランド移民のルーツを持っていることを隠したい気持ちを持っているんです。
日本では、朝鮮系や中国、フィリピンなどをルーツに持つ人もいますが、もっとマイノリティです。
決して変な偏見を持たずに、平等な目線で接していきたいものです。
感想
ちょっとした対応から、ずぶずぶと悪い方向へ沈んでいく本作。
でも、すべては信頼関係なのかなと思いました。
新人ゆえに、同僚とも生徒とも保護者とも信頼関係を築けていない。
主人公自身も猜疑心でいっぱい。
これでは弁解も何も聞く耳を持ってもらえないのでしょうね。
しっかりと互いの信頼関係を積み上げながら、共に問題解決へ向かっていく。
こういった姿勢が大事なんじゃないかと。
でも、あの不寛容方式というのは、ハマれないと難しそうですね…。
ブレたらまた、信頼関係が崩れてしまいそう。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『ありふれた教室』の解説と感想をお伝えしました。
教育現場の悩みをギュッと詰め込んでずぶずぶと沼にハマっていく恐ろしい作品でした。
ヨーロッパならではの問題も出てきていたね。
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