I’ll just record it in my little mind camera.
l want to know that you can talk to me about anything.
As you get older, you know.
Whatever parties you go to… Boys you meet, drug you take.
If you do, remember, okay?
映画『Aftersun』をAmazon Prime Videoで鑑賞しました。
一度映画館で観て、大変ショックを受けた作品。
2023年のベスト5に入るほど、好きな映画です。
でも、何度も観るのは、少し辛い作品でもあります。
それほどに、痛切。
しかしこの映画、今一つ何を伝えたいのか分からない人も、多いんじゃないかと思うんです。
なぜなら、あまりストレートに多くを語ってはくれないからです。
そのため、ある程度こちらから推察しなくてはならないんですね。
そこで、今回の記事では、本作の魅力や痛みを伴う監督からのメッセージについて解説します。ぜひ、鑑賞直後にお読みください。ネタバレしても構わない人はそのまま読んでいただいても構いません。わかってても切なすぎるのが、本作ですから。
お父さんのカラムと、娘のソフィそれぞれの行動に注目するのがポイントだよ!
これは監督自身の物語
はじめに重要なのが、本作はシャーロット・ウェルズ監督自身の経験を基に描いているということです。
こちらが実際の写真と映画のキャストの比較ですね。
監督自身、大好きだったお父さんを若くして亡くしています。
同性のパートナーがいるという点も同じ。
11歳、父と過ごした最後の夏休みを振り返りながら、この映画を作ったんですね。
そして、何より重要なのが、事実として、お父さんは心の病気が原因で亡くなってしまっているということです。
父と娘それぞれの行動にフォーカス
それではここから、物語を紐解くための、考察をお伝えしていこうと思います。
先述の通り『Aftersun』はシャーロット・ウェルズ監督自身とお父さんの思い出をもとに作られています。
そのため、ダイレクトにすべてを伝えるような構造にはなってないんですね。
当事者だから描き切れなかった部分とか、ストレートには描きたくなかった部分が、多分にあるのでしょう。
なので、私なりに気づいた事をなるべく細かくお伝えしていこうと思います。
娘・ソフィの心にフォーカス
まずは、ソフィについて。
ソフィは11歳になったばかり。学年でいうと、小学5年生ですね。
これくらいの年齢って、父親と二人っきりで行動できる最後の年齢だと思うんですよ。平均的に。
だからこそ、いろいろな興味や感情の芽生えが垣間見えるんですね。
それによって、父とのすれ違ってしまったこともあったと。監督自身、そのあたりを後悔している気持ちもあるんだろうなと思います。
そんなソフィにフォーカスを当てると見えてくるものの大きなものが、「性への関心」と「性自認」です。
ちょっと年上のお兄さんお姉さんに憧れたり、男の子とキスするのってどんな感じなんだろう。
そういった好奇心が見え隠れしているんですね。
そんなタイミングだからこそ、両親が別居して暮らしていることも心に深くフックしている。
男女が愛するってどういうことなんだろう。
人を好きになるってどういうことなんだろう。
そんな最中、男性同士のキスを目撃するシーンもあるんですよね。
結局、大きくなって、ソフィは同性のパートナーと暮らすことになるんですが…
そういった、思春期特有のものと、性自認的なものという、ソフィの複雑な心境を汲み取りながら観ると、また観え方が変わってくるはずです。
父・カラムの心にフォーカス
父・カラムについては、先述の通り心の病、鬱的な行動にフォーカスしてみましょう。
彼は本作の中で、何度も何度も希死念慮(死にたい願望)を示しています。
・ベランダから下を覗く
・ベランダの手すりに立つ
・バスに轢かれそうになっても気にしない
・自分の腕を切る
・ライセンスを持たずにダイビングする
・夜の海に入っていく
などですね。
娘と二人っきりの旅行ということを踏まえると、どれだけ追い込まれていたかが分かると思います。
加えて、心の病を抱えていることを示唆するものとしては、
・「how to meditate」瞑想の本を読んでいる
・「TAI CHI」太極拳の本も読んでいる
・「スコットランドは太陽が足りない」というセリフ
・カラオケを断る(人前に出ることを極端に嫌う)
・ベッドの上で嗚咽しながらむせび泣く
などなど。スコットランドのように太陽が出ない国は、鬱病の人がとっても多いんです。
あと、印象的なシーンで、ソフィから11歳の誕生日の話題を振られるシーンがあります。
この時、カラムは「カメラを止めて」とシリアスなトーンで言うんですね。
そして、11歳の誕生日は、誰も覚えていなかったと言います。
母親に自分から伝えたことで、ようやく父がおもちゃ屋に連れて行ってくれたと。
また、他の家族の父親が、子どもの腕を強く引くのをじっと見ているシーンがあります。
これらのことから、カラムは幼少期に父からは暴力、母からはネグレクトの虐待を受けていたのではないかという推察ができます。
加えて、カラムがバイセクシャル、あるいは同性愛者である可能性も、見え隠れしています。
ダイバーの男性と話すシーンとかね。
これもまた、ソフィと重なって意味深に映ってきます。
こういった彼のバックグラウンドを汲み取ると、希死念慮にも共感出来てしまいますよね。
そして、少し不思議なクラブのシーンや、ラストのシーンについては、こちらで詳しく解説していますので、ぜひご拝読ください。
二人の心情が分かった上で重要なセリフ
幼さと、大人になりたいという狭間で揺れるソフィ。
「撮影はしてないよ でも残すから 私の小さな 心のカメラに」
何となくもう旅行は最後かもしれないな。とか、ずっと大好きだからね。という思いがこもっていますね。
そして、心の病に苦しみながら、娘のために生と死の狭間で揺れるカラム。
「何でも話していいんだよ 大きくなって いろんなパーティや 男の子やドラッグのこと 覚えておいて」
いつまでも見守っていたい。どうか自分のように苦しまないでほしい。
そんな切望のような心の叫びに聞こえてきます。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
映画『Aftersun』について詳しく解説しました。
悲しい気持ちが滲み出ているため、こちらも苦しくなりますが、本当に素晴らしい作品です。
二人の行動や気持ちを汲み取りながら、観てみてね。
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