あなたにレクイエムを。
映画『ゾディアック』を鑑賞。
1969年にアメリカはサンフランシスコで起こった「ゾディアック事件」をご存知でしょうか。
カップルやタクシー運転手などを無差別に狙った連続殺人です。
いつどこで襲われるかわからない恐怖に、サンフランシスコ全ての人々が怯えた事件なんです。しかもこの事件、未解決なんですね。
そして、この事件を基にした映画『ゾディアック』の監督は『セブン』「ファイトクラブ」のデヴィット・フィンチャー。
公開されたのは事件からおよそ40年後の2007年。
なんで2007年に1969年の事件を映画にしたんだろ?
よし、詳しく解説していこう。この記事を最後まで読めば、デヴィッド・フィンチャーがなぜこのおぞましい「ゾディアック事件」をテーマに映画を制作したかがよくわかりますよ!
STORY
“ゾディアック”と名乗る連続殺人犯と、その事件の解決に挑む者たち。「殺人」と「真実の究明」という全く逆の立場にいる人間たちが、謎が謎を呼ぶ事件を巡り、次第にその運命を狂わされていく…。
Amazon Prime Videoより引用
それではここから、『ゾディアック』の見どころと、デヴィット・フィンチャー監督が今作を制作した理由を解説していきましょう!
「ゾディアック事件」をテーマにした理由
デヴィット・フィンチャー監督の代表作『ファイトクラブ』といえば、殴ったり蹴ったり転がったりと、派手な演出が印象的。
一方、今作『ゾディアック』は、殺害シーンはおぞましいものの、全体的に結構地味めな演出。
刑事ものということで、『セブン』に雰囲気が似ていないこともないんですが、事実を基にしている分、もう一段展開がスローですし、これといって派手なシーンもありません。
『ドラゴンタトゥーの女』のようにバイクアクションがあるわけでもありません。
ではなぜそのような映画をフィンチャーが作ったかというと、そこには彼自身の過去にまつわる秘密があるのです。
デヴィット・フィンチャーは1969年当時、事件の現場から橋を挟んですぐの場所マリン郡という場所に住んでいました。
歳は、小学校低学年だったそうです。
ゾディアックを名乗る殺人鬼は、次は子どもを乗せたスクールバスを狙うという犯行声明を新聞社や警察に送っており、フィンチャーとその家族だけでなく、サンフランシスコ周辺のすべての人々が恐怖したのであります。
映画の中では外出禁止令も出ているほどでした。
そして、デヴィッド・フィンチャーは、ゾディアックのトラウマを払うために映画を作ったそうです。
クリエイターには、一定数こういう作り方をする人がいますよね。
スティーブン・キングや、庵野秀明と同じ感覚ですね。
藤本タツキの『ルックバック』もそうかもしれません。
鬼気迫るリアルな描写
『ゾディアック』は、その当時を知るフィンチャーが作ったからこそ、リアリティ満載な仕上がりになっているんです。
デヴィッド・フィンチャーは、事件の調査に関して、なんと18か月もの期間を費やしたそうです。
記事やニュースを調べるのはもちろんのこと、最初の被害者のカップルの男性に、実際にインタビューしたりしたんだとか。
その他にも『ゾディアック』に対する熱意は相当なもので、69年当時のワーナーとパラマウントのロゴを使用したり、
当時の町並みや雰囲気を再現するためにCGを駆使したりしています。
ゼロベースで作ったんじゃなくて、今の街の風景から高いビルとかを消したそうなんですね。
一見地味な作品のようで、かなり時間もお金もかかっています。
犯行シーンの恐ろしさ
この映画のすごいところは、犯行や殺人シーンのおぞましさ。
最初のカップルを撃った時の突発的かつ無慈悲な描写や、
湖で背中を何度も刺すシーンは思わず目を背けたくなるほど。
私はホラー映画大好きなので、スプラッターも平気な方ですが、それでもきつかったですね。
また、終盤の地下室のシーンも怖いんですよ。
ジェイク・ギレンホールが走って逃げるのも納得。めちゃくちゃ怖いです。
ゾディアックに取り憑かれた人々
実はこの作品、後半はほとんど犯行シーンがありません。
ゾディアックを名乗る人物を、
探したり、
自分がそうだと言い始めたり、
ゾディアックと関わることで名声を得たり、
様々なかたちで関わった人々のドラマを描いています。
それだけ事件の影響がとてつもないものだったってことを伝えたかったんだろうね。
ジェイク・ギレンホールについて
ゾディアックの正体に迫るのが本筋ではありますが、半分は彼演じる漫画家ロバート・グレイスミスのドラマ映画と言っても過言ではありません。
彼は、暗号解読好きが高じて、ゾディアックを追うことに魅了されてしまうんです。
実際の彼も家庭はめちゃめちゃになり、1980年の別居後、1983年に離婚しています。
序盤は比較的爽やかで、刑事とは違った斜めからの視点でもって犯人を追う、切れ者っぽいキャラクターですが、次第にどんよりとした雰囲気を帯びていきます。
『ナイトクローラー』を観たことがある人ならご納得いただけると思いますが、
非常にジェイク・ギレンホールらしい役へと変化していくのが味わい深いです。
なんとなく爬虫類っぽい感じですよね。
ロバート・ダウニー・Jr.
『アイアンマン』のトニー・スタークや『シャーロックホームズ』の売れっ子、ロバート・ダウニー・Jr.も出演しています。
最近だと『オッペンハイマー』の演技も凄かったよねえ。
彼はジェイク・ギレンホールの同僚の新聞記者役。
ゾディアックに関する報道の中で、注目を浴び、一躍時の人になるのですが、やはり次第に生活が崩れていきます。
終盤の、酒におぼれてしまってしどろもどろな表情。「アイアンマン」で捕虜になったときよりキツそうです。
事件への想いを成仏させる
『ゾディアック』は何ともハッキリしない終わり方をするんです。
一応、こいつが犯人だろうというデヴィッド・フィンチャーなりの結論には至るんですけどね。
実際の事件が事実上未解決なので、当然といえば当然なのですが、ぼんやりさせつつ、一応の決着をつけるこの曖昧な終わり方にしたことには理由があります。
ゾディアック事件の関係者には、上記2人の人物の他に、警察をリタイアした人もいます。
つまり、ゾディアックを追うあまり、生活環境や精神状態に多大な支障をきたした人物が多数いる訳です。
ゾディアック事件のせいで人生がめちゃくちゃになってしまったんですね。
そんな人たちへ向けて、
全てを知って自身が壊れてしまうくらいなら、自分なりの決着をつけた方がいいという思いを込めて、デヴィッド・フィンチャーはこのエンディングに仕上げ、公開したそうです。
ゾディアック事件に翻弄された人たちへのレクイエムとして作った、実は愛のある映画なのです!
だから、もやもやした終わり方でも、怒らないでくださいね。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
実際の出来事を基にしたデヴィッド・フィンチャー監督作『ゾディアック』に関する情報をお伝えしました。
とても長い映画だけど、面白い映画なのでぜひ鑑賞してみてね!
ちなみに長いのは、ゾディアック事件を追う疲労感を鑑賞者に少しでも体験してもらいたからだそうですよ。
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