残すから わたしの心のカメラに
映画「アフターサン」を鑑賞しました。
こちらの作品、かなり評判がよかったので、公開日から気になっていました。
結論から申しますと、かなり胸が苦しくなるお話でした。
人によっては注意が必要なほど、ショッキングな内容です。
ぜひ元気な時に観てほしいです。
しかし、エンディングの美しさや、俳優の演技、多くを語らずに観る者を魅了する魅せ方の巧さは、間違いなく後世に残る名作といえます。
今回の記事では、映画「アフターサン」について詳しく感想と解説をお伝えします。
映画を観てよく分からなかった人は作品を振り返る参考にしてください!
結構わかりにくい映画だから、1回の鑑賞で感動したい人は事前にこの記事を読んだ方がいいかも!
STORY:
思春期真っただ中、11歳のソフィ(フランキー・コリオ)は、離れて暮らす若き父・カラム(ポール・メスカル)とトルコのひなびたリゾート地にやってきた。輝く太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、親密な時間をともにする。 20年後、カラムと同じ年齢になったソフィ(セリア・ロールソン・ホール)は、ローファイな映像のなかに大好きだった父の、当時は知らなかった一面を見出してゆく……。
映画公式予告より引用
日焼けした後に塗る薬
まずタイトルの「アフターサン」について解説します。
アフターサンとは、日焼けの後に塗る薬のことです。
作中では、父が娘にこのアフターサンを塗るシーンが何度も出てきます。
日焼けで傷ついた身体と、主人公ソフィの心の傷を、重ねたネーミングになっているわけですね。
どうしてソフィは傷ついているといえるの??
父・カラムの希死念慮
ソフィの心の傷が何かというと、それは大好きな父が亡くなってしまっていることです。
おそらく、あの11歳の旅行のすぐ後に、父・カラムは亡くなっています。
彼は鬱病を患っており、映画をよく観ると、希死念慮を思わせるシーンがいくつか出てきます。
海のシーンやベランダのシーン、崖のシーンなどがそうです。
11歳のソフィも、何となく父の異変に気付いてはいますが、楽しい旅行の雰囲気を壊したくなかったり、子どもだから何ともできないという、この歯がゆさや健気さがまた、この映画の素晴らしさでもあり、辛いところでもあります。
ストロボおよびラストシーンについて
今作のラストは、現在のソフィの部屋から、空港で分かれた父親のシーンに切り替わるものになっています。
あの頃の父が、空港の廊下を歩き、ドアの向こうへ消えていって、映画は幕を降ろします。
ドアの向こうは、映画の中で何度も登場するクラブのストロボの部屋でした。
あのストロボは、どうやら死の世界を表しているようです。
あえて言葉で語らず、あの演出で魅せるのは、本当にお見事。
グッときました。
また、終盤のダンスシーンも必見。
QUEENとデヴィッド・ボウイの、「アンダープレッシャー」の“This is our last dance”という歌詞でもまた、父が亡くなったことを示唆しているのです。
ペルシャ絨毯
ペルシャ絨毯も今作では注目すべき見どころのひとつです。
言わずもがな、ペルシャ絨毯は高級品です。
「海外旅行にいけるくらいなんだから、買えるんじゃない?」と思われそうですが、実はカラムは経済的にあまり豊かではなかったようです。
父と娘のあの旅行も、よく観ると実はパッケージ旅行で、あまり派手に遊んでいる様子は見られません。
ソフィのセリフでも「あんまりお金ないんでしょ?」みたいなものがありましたね。
しかし、彼は、ペルシャ絨毯を買いました。
そしてその絨毯は、大人になったソフィの部屋に敷いてあります。
これはぜひ見逃さずに観ていただきたいシーンです。
監督が実際に経験したお話
最後に伝えておきたいのが、この作品は監督の実体験を基に作った作品あるということです。
シャーロット・ウェルズ監督は、2015年にショートフィルムを撮っています。
「Tuesday」という作品です👇
この作品もまた、亡き父を思う内容になっています。
シャーロット・ウェルズ監督はインタビューの中でこのように語っています。
自分の父との関係のエッセンスを取り込んだ作品だと考えています。一般的に映画では、父親は不在だったり機能不全だったりするイメージで描かれる方が多いように思いますが、今作ではとても親しい関係の父と娘の姿、そして良い父親の姿を描きたいと思いました。私自身の父親を追悼している面もあると言えます。
fansvoiceより引用
確かに、こういった映画はこれまでなかったですよね…。
監督自身が、映像化したことでお父様との思い出を昇華できていることを願うばかりです。
みんな、あんまりインタビューせんとってあげて…
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画「アフターサン」の感想や見どころをお伝えしました!
心に刺さりすぎて辛い人もいるかもしれませんが、今までにない親子の関わりを描いた素晴らしい映画です…!
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