テレビを消せ こんなもの見るな!
映画『悪魔と夜ふかし』をTOHOで鑑賞しました。
監督は『スケア・キャンペーン』のケアンズ兄弟。
本作もまた、一味違うぶっ飛び系ホラーになっております。
『スケア・キャンペーン』も当時としては斬新でしたが、今回の切り口がまた面白い!
どんなアイデアなの?
本作は、1977年にオーストラリアで放送された生放送番組のテープが発見され、それを映すという流れになってます。
その放送が何と、本物の悪魔に憑りつかれた少女が映っており、とてつもない放送事故になったという曰くつきの内容なんですね。
予告映像が非常によくできていますので、まずはご覧ください。
それではここから、本作について詳しく解説していきましょう。
1970年代のテレビの影響力
今なお、テレビの影響力というのは大きいものですが、1970年代は、現代とは比較にならないほど大きなものでした。
それまでは新聞やラジオが主な情報ツールだったわけですが、映像と音声付きのテレビから得る情報というのは、説得力があったんですね。
例えばベトナム戦争のニュース。
当時のアメリカ人たちは、アメリカが行う戦争は正義に基づくものだと信じていました。
しかし、実際の映像を目の当たりにすると、「本当に正しいのかな…」と疑問を抱いたわけです。
それが、ヒッピームーブメントやカウンターカルチャーへと繋がり、アメリカを越えて全世界の情勢を変えてしまったという。
凄まじい影響力ですよね。
しかし、テレビで映される情報そのものも、正しいものだけではないと。
『悪魔と夜ふかし』のように、視聴率をとるための過激な内容だったり、信憑性の低い内容だったりを放映していたという側面もあったのです。
その最たるものが、オカルトや心霊系の番組です。
オカルト番組
1970年代は、日本を含め、色んな国でオカルトブームが起こりました。
1973年に公開された映画『エクソシスト』や「ノストラダムスの大予言」がきっかけとなっています。
この年代に「ネッシー」や「口裂け女」などの都市伝説もまた、かず多く生まれています。
もちろん、テレビでもそれらの実態を検証するような内容のものが数多く放映されました。
『川口浩探検隊』や『あなたの知らない世界』などが挙げられますね。
都市伝説や怪談は、テレビを通じてどんどん広がり、やがて社会現象にまで発展していきました。
口裂け女を恐れる人々があまりにも多く出たせいで、小学校で集団下校が行われたり、花子さんの呪いが恐さやそれに伴う体調不良で引きこもってしまう若者も出る始末。
アメリカやオーストラリアもその例外ではなく、当時のテレビにおけるオカルト番組の影響力は大変強かったため、
「テレビを消せ こんなもの見るな!」
というセリフにこの意思がこもっているのでしょう。
気楽に楽しむ分にはいいけど、信じすぎると大変なことになるぞという。
ちなみに、オカルトブームというのは90年代にもありました。
個人的に、この当時はリアタイでテレビを観ていたので、記憶に残っています。
この時もまた、「ノストラダムスの大予言」が再び流行したんです。
というのも、「ノストラダムスの大予言」によると、1999年に恐怖の大王がやってきて地球が滅亡するという話があったからなんですね。
でも、当時子どもだった私の周りは、それなりに信じている人がいましたよ。2・3割くらいの人は本当に恐がってたような。
『奇跡体験アンビリバボー』などで、大予言の考察や、心霊写真、都市伝説が広く扱われるようになり、『学校の怪談』などで拍車がかかったという感じ。
さらに極めつけは1999年の『リング』ですね。
テレビとビデオテープから伝播する呪いというテーマは、正しくテレビやビデオの影響の大きさを表しているのではないでしょうか。
さて、2000年代まではそんな感じで影響力の強かったテレビですが、2010年代になるとその勢いが弱まります。
現代への警鐘
2000年代の終わりに何が起こったか。
それは、iPhoneの普及です。
2008年から販売され、 2009年には国内のスマホ出荷台数およそ7割をiPhoneが占め、日本中で一気にiPhoneが広まりました。
そして今となってはガラケーを私物として使っている人はほとんどいませんよね。
正に、爆発的な普及だね。
テレビが1950年代から1970年代でほぼすべての家庭まで普及したことに対し、スマホは2007年から2010年代にはほとんどの人が持つようになったと。
テレビが約20年かかったのに対し、スマホは約10年で普及しています。
そして、もはやスマホなしでは生活できない。そんな域にまで達していますよね。
しかしながらその爆発的な普及により、個々のモラルや、厳密なルールというのが曖昧なまま今日に至っている。そんな風に感じるのです。
だからこそ、情報に関しては特に注意深くならなくてはならないのではないでしょうか。
『悪魔と夜ふかし』では、番組を面白くするために、
「悪魔は存在する」
という方向で、視聴者や観客に迫っていました。
そのため、悪魔や霊現象の類に反論を唱える有識者を実に煙たがるんですね。
プロデューサーや司会者、観客みんなで。
そして、映画として観ている私も、
こいつムカつくし、邪魔だなぁ。
なんて思ってしまいました。
これ、集団圧力とか同調心理、グループシンク、黒い羊効果と呼ばれるものですよね。
これに警鐘を鳴らしているのが本作『悪魔と夜ふかし』なんだろうなと思います。
Twitterやインスタでバズった情報は、真偽はさておき、あっという間に広まってしまう。
ネットにおける一つのミスで、職を失った芸能人や一般人がどれほどいるのでしょう。
そして、あなたはそういった情報が流れてきた時、どれくらい信じ込んでいますか?
一度立ち止まって考える、もしくは波のように流れてくる情報から距離を置く。
そういう習慣を持っているでしょうか。
くれぐれも気をつけていきたいものです。
ファウンド・フッテージ映画
お説教っぽくなっちゃったので、最後にこの映画の面白いポイントを一つ。
本作は「ファウンド・フッテージ」というジャンルの映画になります。
ファウンド・フッテージ(found footage)は、特にホラー映画でよく使われる手法で、物語の中で「発見された」未編集の映像として提示されるものです。
この手法は、視聴者にリアルなドキュメンタリーのような感覚を与えることを目的としています。
設定: 映像は、撮影者が行方不明になったり、亡くなったりした後に発見されたという設定が多いです。
スタイル: 手持ちカメラで撮影され、揺れやブレが多く、編集されていないように見せかけたり、現代と違って古い映像だったりします。
目的: 視聴者にリアリティを感じさせ、恐怖感を増幅させることを狙っています。
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『パラノーマル・アクティビティ』などが代表的な作品です。
なので、この映画もあたかもこういう出来事が実際に1977年ハロウィンのオーストラリアであったんじゃないかと思われそうですが、実のところこれといった元ネタは無いそうです。
でも、オカルトブームで世界中が沸いていたことは事実だし、また、司会者が所属していた怪しい紳士クラブのようなものも実在していたそうです。(この辺りは、『アイズ・ワイド・シャット』なんかを観るとよく分かると思います)
本作の70年代っぽさは、当時のテレビがすきな人にはたまらないのではないかと思います!
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
『悪魔と夜ふかし』について詳しく解説していきました。
色々書きましたが、気楽に観るべき映画だと思います笑
終盤は笑っちゃうほどの展開ですし。
オカルトブームを体験している人は懐かしんで観られそうだよね。
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