映画『暗殺の森』を午前十時の映画祭で鑑賞しました。
『ラストエンペラー』でアカデミー賞を受賞した巨匠ベルトルッチが、若き日に性と政治の危険な関係に切り込んだ野心作であり出世作です。
物語は第二次大戦前夜のローマから始まります。
哲学講師でファシストのマルチェロ(ジャン=ルイ・トランティニャン)は、パリに亡命した大学時代の恩師、クアドリ教授の身辺調査を依頼されます。
クアドリは、反ファシズム運動の精神的支柱でした。
マルチェロは婚約者ジュリア(ステファニア・サンドレッリ)と共にパリに向かい、クアドリと彼の魅力的な若妻アンナ(ドミニク・サンダ)と出会います。
しかし、組織からクアドリを暗殺せよという新たな指令が下るのでした…。
ファシストって何?
今回の鑑賞は町山智浩さんの解説付きでしたので、そちらも踏まえた上で見どころや感想をお伝えします!
ファシズムに関しても解説するよ!
ファシズムとは?
ファシズムとは、簡単に言うと独裁主義のことです。
大衆動員を積極的に利用し、市民的自由や人権を無視する国家主義をかかげ、反対派を弾圧する、この政治体制や思想がファシズムです。
イタリアではムッソリーニ政権から起こっています。
日本の軍国主義や、ドイツのナチスなども同じように扱われます。
世界恐慌やロシア革命など、資本主義が危機的状況に陥った時に現れることが多いです。
現在のイタリアでは「イタリアの同胞(FDI)」というネオ・ファシズム的な極右政党が第1党となっています。ロシア・ウクライナ問題の受け皿となって国民から支持されてしまったんでしょうね。
優れた撮影技法
『暗殺の森』は優れた撮影技法が有名です。
あの『市民ケーン』と並んで称されることもしばしば。
確かに、各カット、かなりカッコいいんです。
そして何より、現在と過去を行ったり来たりするストーリーの構造をわかりやすくさせるための工夫がすごい。
現在のパリのシーンは青、過去のシーンは白という使い分けをしているんです。
また、ところどころ、フランス国旗を思わせるカットが映りこみます。
これは、自由を象徴しているものだそうです。
それに対するように、主人公マルチェロが自分を閉じ込めていることを示唆するように、鉄格子や部屋の中に閉じ込められたように見せるカットが何度も映ります。
ゴダールの電話番号
この映画には、電話番号を読み上げるシーンがございます。
クアドリ教授の電話番号をマルチェロが読み上げるんですが、
あれ実はジャン・リュック・ゴダール監督の当時の電話番号だそうです。
この映画の中で、ベルトルッチは、マルチェロと自分を重ねていて、
クアドリとゴダールを重ねているんだとか。
信念を持って戦い続けるクアドリと、流されて生きることを選んだマルチェロ。
自分の正義や主義を貫けなかった自身へのうしろめたさを表現しているんです。
オッペンハイマー
『暗殺の森』は『オッペンハイマー』にも多大な影響を与えているのではないかと、町山智浩さんがおっしゃっていました。
同性愛的な登場人物。
二人の女性。
ダブルスーツとハットの服装。
などなど、共通点がたくさんあるんですって。
感想
普通になりたい男と、自分らしく自由であることの比較を訴えかける映画でした。
先述の通り、本作ではところどころ、フランス国旗を思わせるカットが映りこみます。
また、登場する2人の女性。
これは、自由を象徴しているものだそうです。
それに対するように、主人公マルチェッロが自分を閉じ込めていることを示唆するように、鉄格子や部屋の中に閉じ込められたように見せるカットが何度も映ります。
正常に、普通に。生きていきたい。
だから「私、おかしいの」という娼婦を抱きしめてしまう。
そしてラストシーン。
自分が人殺しではなかったことに気づいた彼は、性的趣向を見つめ直すと。
はたして彼はこれから、自分らしく生きていく道を選ぶのでしょうか。
また、本作はヌーヴェル・ヴァーグの雰囲気も強く漂う作品です。
そのため、あまり意味のないシーンでも、何かカッコいいんですよ。
きっと、タランティーノは『暗殺の森』を観てから『パルプ・フィクション』を撮っているはずです。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『暗殺の森』の見どころを解説しました。
過去に縛られ自分を閉じ込めてしまうこと、政治や思想の悲しき流行、様々なことを考えさせられる作品でした。
単純にカッコいいシーンもたくさんあるから、飽きの来ない作品だよ!
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