映画『ボーはおそれている』をTOHOシネマズで鑑賞しました。
本作は『ミッドサマー』『ヘレディタリー』などのホラー映画をヒットさせた、アリ・アスター監督の最新作です。
今回もホラーかと思いきや、なんとコメディ映画なのです。(オデッセイ・スリラーと称されることもありますが)
主演は『JOKER』でアカデミー賞に輝いたホアキンフェニックス。
これを聴くだけでもめちゃくちゃ気になる映画だね!
今回の記事では、映画『ボーはおそれている』の見どころや映画をより深く味わうためのポイントをネタバレせずにお伝えします!
日常のささいなことでも不安になってしまう怖がりの男ボーは、つい先ほどまで電話で会話していた母が突然、怪死したことを知る。母のもとへ駆けつけようとアパートの玄関を出ると、そこはもう“いつもの日常”ではなかった。その後も奇妙で予想外な出来事が次々と起こり、現実なのか妄想なのかも分からないまま、ボーの里帰りはいつしか壮大な旅へと変貌していく。
https://eiga.com/movie/99338/
アリ・アスターのコメディ
冒頭でもお伝えしました通り、アリ・アスター監督は『ミッドサマー』や『ヘレディタリー』など、ぞっとするようなホラージャンルの作品で知られています。
じゃあ、コメディなんて面白くないんじゃないの?
と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
そもそもコメディというものは、主人公が酷い目に合うのが基本です。
チャップリンの有名な言葉に、このようなものがあります。
「人生は近くで見ると悲劇だが遠くから見れば喜劇である」
タンスの角に小指をぶつけたところを遠くから観る分には面白いけれど、ぶつけた人の表情や苦悩に注目すると悲劇なるというわけですね。
それが他人であればなおさら。
なので、ホラーとコメディもまた見せ方によって紙一重であるというわけです。
そもそも、俯瞰した目線で観れば、ホラー映画でも、思わずクスリと笑ってしまうこともありますし、最近のホラーってジャンルの垣根を越え始めているというか、コメディ要素を含んだものも多いです。
『NOPE』や『X』、『Pearl』なんかがいい例だと思います。
ボーはユダヤ教徒
『ボーはおそれている』を観る際に、必ずおさえておきたいのが、主人公ボーはユダヤ教徒であるというところです。
ユダヤ教では、火葬を禁じており、死後24時間以内の土葬を義務付けています。
そのため、ボーは急いで実家に帰らなければならないというわけですね。
ちなみに、アリ・アスター監督もユダヤ系です。
なので、『ボーはおそれている』自体も、ユダヤ教の毛色が色濃く出ています。
ヨブ記が元ネタ
ユダヤ教にとっての聖書である旧約聖書の中に、「ヨブ記」というお話があります。
神様を信じながら幸せに暮らすヨブという人がいます。
神様たちが、不幸な目にあっても神様を信じることができるかどうか賭けをして、ヨブに様々な災難を見舞わせる。家畜は死ぬし、家が崩壊して子どもも死んでしまい、妻も去ってしまうという散々なお話なんです。
ヨブは友人に相談すると、「君が何か悪いことをしたから、そんな目に合うんじゃない」と言われる始末。
ヨブが神様に、「なぜこんなに酷い目にあわせるのですか?」と尋ねると、
「君の不幸は世界全体の歴史の中で何か大きな意味があって私が考えてやっていることなんだから文句を言うな」と言われちゃうんですね。
何とも理不尽なのですが、ユダヤ人にとっては大事な教えなのです。
ユダヤ人たちは、ローマ帝国に国を奪われ、2000年間国のない民として差別をされ続け、ナチスに皆殺しにされかけたという歴史があります。
もう、ヨブと自身を重ねてしまっても仕方がないわけであります。
だから、『ボーはおそれている』はアリ・アスター監督のユダヤ人らしさが詰まっているんですね。
ちなみに「おそれている」というのも、ユダヤ人は何をするにも、「神様の教えに反していないか」ということを慎重に考えながら暮らしているという点に結びついています。
また、映画の中でボーがある家族の部屋で寝かされるシーンがあります。
そこにはK-POPのアイドルのポスターがたくさん貼られています。
ユダヤ教では偶像崇拝が禁じられているので、アイドルのポスターなんかも厳密にはタブーなんです。
ボーにとっては大ピンチ!なんですね。
このような、細かい禁止事項が、ユダヤ教にはたくさんあります。
映画の中で、ボーが「すみません」と言っているシーンや困っているシーンを、そういった目線で観るとより理解が深まって楽しめると思いますよ。
きっと、『ヘレディタリー』や『ミッドサマー』でも、そういったユダヤ教的なシーンはあるんでしょうね。
私も再鑑賞して、検証してみようと思います。
強迫性障害と母親
『ボーはおそれている』でホアキン・フェニックス演じる主人公ボーは、セラピーに通う精神的疾患をもつ病人です。
その病気とは「強迫性障害」。
強迫性障害とは、強い不安や恐怖、こだわりがあることで、やりすぎともいえる考えや行動を止めることができず、日常生活に支障が出てしまう病気のことです。強迫症とも呼ばれます。
彼が強迫性を感じる要因はユダヤ教以外に、母親の存在も大きいでしょう。
母親があまりにもボーを縛り付けてきた結果、「お母さんの望むことをしなくては」と感じ過ぎてしまうという強迫性に囚われてしまったんですね。
一般的にも、強迫性障害は、母親と接することが原因で起こるケースも少なくないのだとか。
母とボーの関りや会話にも、ぜひ注目していただきたいです。
そして、母とヨブ記と強迫性障害が見事に融合したラストシーンをぜひ味わってみてください。
とか言って本当は恐いんじゃないの?
冒頭でお伝えしました通り、本作は基本的にはコメディです。
真剣に観すぎず、ニヤニヤしながら観ることをオススメします。
コメディといいつつ、アリ・アスターだから恐いんじゃないの?
とお思いの方も多いでしょう。
そうなんです。結構恐いです笑
まず、音楽が恐い。ほとんどホラー映画のそれと変わりません。
また、バイオレンスなシーンも多いですし、その見せ方もかなりグロテスク。
「これ笑っていいのかな?」と感じてしまうほどです。
でも、基本的にはボーのおっちょこちょいさとか、彼の身に降りかかるあまりにも理不尽なことを笑って観た方が楽しみやすい作品です。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『ボーはおそれている』の解説をお届けしました。
ポイントはコメディであることと、アリ・アスター監督のユダヤ人らしさです。
強迫性障害にも注目だね!
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