浮き沈みがあっても、生き抜く
映画「ブギーナイツ」を鑑賞しました。
本作はポール・トマス・アンダーソン監督(通称PTA)が26歳の若さで作った作品です。
ポルノ映画をテーマにしているのですが、とても熱いし、感動的だし、美しいんです。
90年代の映画の中で、光り輝く作品のひとつと言えるでしょう。
映画好きの間ではファンの多いPTAですが、私は今回が初めての鑑賞でした。
勉強不足でお恥ずかしい…。
どんな所が良い作品なの?
PTAの映画愛
本作は、とにかくPTAが映画を愛しているのだということがよく伝わってきます。彼の父親はアーニー・アンダーソンという人物で、テレビの司会やラジオのパーソナリティをしていました。ゲテモノ映画の批評みたいなこともしていたので、とにかく映画に詳しい。そんな父のもとでPTAは育ったので、映画への知見が非常に深いのであります。加えて、映画の撮影スタジオのすぐそばで暮らしていました。そのため、「怒りのキューバ」のようなマニアックな作品から、「スターウォーズ」「燃えよドラゴン」「トランスフォーマー」のようなメジャー作まで、幅広く映画の小ネタを挟んでいます。
ポルノがテーマである理由
本作は、ポルノ映画の「アラビアのロレンス」と称されることがあります。個人的には無声映画からトーキー映画への変遷を描いた、「雨に唄えば」にも通じるところがあるように思います。
どうしてあえてポルノ映画をテーマにしたのかというと、PTA自身が生まれ育った場所サンフェルナンド・バレイでは、ポルノ映画の撮影が合法であり、庭先で撮影してもわいせつ罪で逮捕されなかったんだそう。ポルノ映画に慣れ親しんだPTAは、1970年代のポルノ映画について掘り下げていきました。その中で出会ったのがラドリー・メッガーという監督。この監督の作品は、美的センスやストーリー、時代考証など、本物の映画に匹敵するほど素晴らしい映画をつくっていました。ヨーロッパにロケに行っているほど。その監督をロバート・レイノルズにあてはめ、ジョン・ホームズというポルノ男優をマーク・ウォルバーグが演じています。
カメラも音楽も凄まじい
本作はカメラワークと音楽が見事です。ステディカムを利用した長回しのシーンがたくさんあります。中でも、先述の「怒りのキューバ」のオマージュであるプールのシーンや、ドラッグを買わせるために銃を振り回す男の館へ潜入するシーンの緊迫感。本当に、いい映画観てるなぁと感じさせてくれます。これらのシーンの音楽がまたいい。絶妙にマッチしていたり、とんでもなくミスマッチだったり…。鑑賞者を退屈させない仕掛けが満載なのです。
主演はディカ・プリオを予定?
当初、主演のポルノ男優役はレオナルド・ディカプリオにオファーしていたそうです。しかし彼は「タイタニック」を選びました。マーク・ウォルバーグは本作で大々的なブレイクを果たしますが、子を持つ親になった上に、敬虔なカトリックであるため、本作に出たことに後悔の念もあるんだとか。しかし、私の目には彼の切ない表情や、落ちていく様、上がっていく様も素晴らしく映りました。きっと、自身の置かれた状況が、役柄と被っていたのでしょう。
他のキャストも素晴らしい。バート・レイノルズを覗いて、本作が、ジュリアン・ムーア、ジョン・C・ライリー、ウィリアム・H・メイシー、ドン・チードルなど、後に90年代00年代の映画で大きく活躍する俳優たちを押し上げたことは間違いないでしょう。
中でも、これ以降PTA作品の常連となるフィリップ・シーモア・ホフマンの演技は必見。泣けてきます。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
「ブギーナイツ」の見どころを解説しました。
ポルノ映画に関わった人々の群像劇、まさかここまで感動するとは思いませんでした。
「X」の見方も変わってきそうだね!
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