揺りかごから墓場までそんなに長くはない!
人生はキャバレーよ!
映画「キャバレー」を鑑賞しました。
1973年の第45回アカデミー賞にて、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、編集賞、撮影賞、美術賞、録音賞、オリジナル・ミュージカル賞の8部門を受賞した驚異的な作品です。
作品賞を受賞していない作品にもかかわらず、8部門の受賞は最多かもしれません。(ちなみに第45回の作品賞はゴッドファーザー。これはしゃーない)
私は今回”午前十時の映画祭”にて、初めて鑑賞しました。
ジャケットやポスタービジュアル、タイトルから想像するに、ダンサーが夢を追う系、夜の街を描いた系、または華やか系作品だろうと推察していました。
しかし、違いましたね…。めちゃくちゃ感動するし、ベルリンとアメリカの夢の終わりをクロスオーバーして描いた、とんでもない作品でした。
今回の記事では、映画「キャバレー」がここまでたくさんの受賞をした作品である理由を解説します。
まさに、映画で学ぶに値する、素晴らしい1本です。
1931年のベルリンとは
そもそも、「キャバレー」の舞台であるベルリンは当時どういった状況だったのかを解説しておきましょう。
1931年のベルリンは、とても自由な場所でした。
1918年に第一次世界大戦で敗れたドイツでは、帝政が崩壊しました。
その後「ワイマール共和国」が1919年に成立し、1933年のナチスの台頭までの約20年間続きます。
この時代は「黄金の20年代」とも呼ばれ、民主主義の精神や自由な思想をもって、様々な芸術や文化が花開きました。
その中心地であるベルリンは、ドイツだけでなく、イギリスやアメリカの裕福な人々にとっての社交場として存在したのです。
そのため、アーテイストやダンサーなど、芸能で有名になりたい若者たちが夢を求める場所でもありました。
「cabaret(キャバレー)」もまた、そんな場所だったのです。
キャバレーはどんなところ?
「cabaret(キャバレー)」は、現在の日本のキャバクラのように、女の子が男性にお酌をするような店とは少し違います。
主に、ショーを見せる場所です。
富裕層や知識人が集う為、ショーの内容も、政治批判や時事ネタを盛り込んだ内容が多かったのだとか。
映画でもまさしく、そんな感じでした。
また、ダンサーだけでなく、腹話術や、スタンドアップコメディのような出し物もあったそうです。
今でいう、寄席と、ショーパブを合わせたような雰囲気をイメージされるとよいですね。
そこで、金持ちや著名人の目に留まり、何とか道を切り開こうとするのが、演者の目標だったわけです。
ちなみに、キャバレーに登場する”キット・カット・クラブ”は、18 世紀初頭にロンドンにあった英国のクラブ”キット・キャット・クラブ”をもじっています。
政治と文学の強い結びつきがあったクラブだったそうです。
ベルリンとアメリカの自由の終わり
「キャバレー」では、自由なベルリンがナチスによって滅びる寸前を描いています。
ワイマール共和国及びベルリンは、1933年にナチスに政権を奪われて、完全に自由を失いました。
ユダヤ人も、同性愛者も、ことごとく迫害を受けたのです。
※劇中の主人公は、同性愛者で、カトリック信者がほとんどであるイギリスにいることができなかったからベルリンにきたのですが、政権交代と共にベルリンを離れました。そして、ユダヤ人の友人も恐らくアウシュビッツに…
そして、これを当時のアメリカの社会情勢と重ねた作品が、映画「キャバレー」なのです。
映画「キャバレー」は1972年に作られました。
1972年のアメリカとは
1960年代から1972年にかけて、アメリカは革命が度々起こっていた時代です。
ヒッピーや言論の自由など、カウンターカルチャーが旺盛な時代。
ベトナム反戦運動をして、ロックが鳴り響き、ラブ&ピースが謳歌された時代。
何もかも自由でした。
しかし、1972年にニクソンが大統領になったことで、アメリカのカウンターカルチャーも終わりを向かえます…。
1933年のベルリンと、ほとんど同じように終わってしまった”自由”を強烈に描いているのです。
だからこそ、当時のアメリカの人々の心を強く打ったのでしょう。
ライザ・ミネリについて
サリーを演じたライザ・ミネリ。
自由奔放な様子がとてもチャーミングでした。
彼女はオズの魔法使いでドロシーを演じたジュディ・ガーランドの娘であることをご存じでしょうか。
めちゃくちゃ似てますよね。
ジュディ・ガーランドは、ドラッグやアルコールの中毒になって苦しんだのですが、ライザ・ミネリもまた、同じような道を辿っています。
なんと悲しい因果でしょうか…。
また、「キャバレー」では、ショートカットを披露していますが、あれは、女性の開放的な思想を表す髪型で、和田アキ子さんもあの髪型を真似しているのだとか。
ダンサー・イン・ザ・ダークとの関連
「キャバレー」で素晴らしい演技を披露し、助演男優賞を受賞したジョエル・グレイ。
キット・カット・クラブのMC兼ダンサーとして何度も登場します。
私の中で一番印象に残った役でした。
彼は、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」にも出演しています。
しかもタップダンサーとしてです。
これは間違いなく、「キャバレー」のオマージュです。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
「キャバレー」の素晴らしさや見どころを解説しました!
まさに映画で学ぶに相応しい作品です。
アメリカとベルリンの自由の崩壊、悲痛の叫びを描いた超傑作。
涙が出ますよ。
まだ観たことのない人はこの機会にぜひ!
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