頭の中を巡る自責の念が抜け出すことを待つ。カードを数えて。
映画「カード・カウンター」を鑑賞しました。
ポール・シュレイダー×マーティン・スコセッシの最強タッグが再結成した話題の作品です。
オバマ前大統領をはじめとする、多くの著名人が2021年のベストムービーとして選出しています。
しかしながら、初見で私は今一つ面白さを実感できませんでした。
重く暗い雰囲気に加え、政治的・軍事的な知識がある程度必要で、私にそれがたりなかったからだと思います。
しかし、映画鑑賞後に色々調べてみて、「あ、なるほど!そういうことだったのね!」と感じ、今ではもう一度観たいほどの作品になっています。
今回の記事では、「カード・カウンター」を楽しむためのポイントや、鑑賞前後に押さえておきたい知識を説明していくよ!
STORY:
公式サイトより引用
ウィリアム・テル(オスカー・アイザック)は、風変わりなギャンブラーだ。米国軍刑務所で10年間服役し、独学で「カード・カウンティング」と呼ばれるカードゲームの勝率を上げる裏技を学んだ彼は、「小さく賭けて小さく勝つ」がモットーで目立たず、匿名でいることを好む。ある日、ウィリアムはギャンブル・ブローカーのラ・リンダ(ティファニー・ハディッシュ)と出会い、大金が稼げるというポーカーの世界大会への参加を持ちかけられる。さらにその直後、二人の男と遭遇する。一人は、かつて上等兵だった自分に“消えない罪”を背負わせた男ジョン・ゴード(ウィレム・デフォー)、もう一人はウィリアムにゴードへの復讐を持ちかける若者カーク(タイ・シェリダン)だった。ラ・リンダとカークとの運命的な出会いによって、謎につつまれたウィリアムの人生が徐々に明らかとなり、人生を賭けた復讐と贖罪のゲームの終章が幕を開ける。
スコセッシ×シュレイダー
今作は、マーティン・スコセッシが製作総指揮を務め、ポール・シュレイダーが監督と脚本を務めています。
この二人、なんとあの「タクシー・ドライバー」や「レイジング・ブル」でもタッグを組んでいるのです。
いくつかの作品を手掛けた後、二人は別々に仕事をし、それぞれに映画を作ったわけですが、別に仲違いしたわけではないそうです。
お互いに今でもメールのやり取りをするほどの仲で、ポール・シュレイダー監督が、今作を手掛ける際、資金調達のために「スコセッシの名前あったら金集まりやすいんじゃない?」と考え、オファーしたところ快諾してくれたのだとか。
名前貸しのような感じなんですね笑
でも、お互いに信頼関係があるからこそ、なせる業なのでしょう!
タクシードライバーと似ている?
今作は、「タクシードライバー」と少し似たところがあります。
それは、主人公がどちらも待つ男であるという点です。
ポール・シュレイダー監督はインタビューで以下のように語っています。
ウィルは自分の人生に何かが起きることを待っている。何かが起きれば、自分の頭の中を占めているひどい考えから抜け出すことができるかもしれない、と考えているんだ。ウィルはそのきっかけ、口実を求めて、旅を続けている男でもあるんだ。若いカークを救うことで、自分自身も救われるはずだとウィルは考えているんだ。
日刊サイゾーインタビュー記事より引用
『タクシードライバー』の主人公・トラヴィスのように、ウィルが鏡に映った自分を見つめるシーンもある。
確かに、トラヴィスも受け身で、どこか自虐的なキャラクターで、今作の主人公ウィリアム・テルに似ています。
ちなみに、ラストシーンもどことなく、「タクシー・ドライバー」に似ているような雰囲気ですよ。
ショッキングでありながら、どこか救いのある、あの独特の雰囲気です。
主人公ウィリアム・テル
今作の主人公の名前はウィリアム・テルです。
この名前、どこかで聞いたことがあるなと思ったら、これですね。
スイスの童話や伝説で、我が子の頭にリンゴを乗せて矢を放つ男の名前です。
オーストリアの悪代官が自分の帽子に敬礼をしなかった弓の名手テルに、息子の頭の上にのせたりんごを射るように命じたという話で、
伝説によると、その後テルは悪代官を殺し、これを機にスイスは独立に向かったとされています。
「カード・カウンター」では、元上官に復讐することや、出会った少年を助けようとする要素が多分に含まれています。
確かに、ウィリアム・テルの伝説と、今作の流れはよく似ているので、もじった名前であることは間違いなさそうですね。
背景にある実在の事件
ここからは、映画の理解を深めるためのポイントを解説します。
「カード・カウンター」はアメリカで実際にあった事件を背景に作られた作品なのです。
それは、2004年に発覚したアブグレイブ刑務所における捕虜虐待です。
アブグレイブ刑務所で発覚したイラク戦争における大規模な虐待事件で、米国国防省は、17人の軍人及び職員を解任しました。
また、2004年5月から2005年9月までの間に、7人の軍人が軍法会議で有罪となっています。
この中で最も重い罪となったチャールズ・グラナーという兵士は10年の間服役しました。
この人物こそが、「カード・カウンター」の主人公のモデルになった訳であります。
映画同様に、強化尋問テクニックとして、正当化・黙認されていたのですが、中で行われていたことは拷問となんら変わらない、9.11に対する報復行為のようなものでした。
また、オバマ前大統領もこのアブグレイブ刑務所で行われていた行為は、拷問であったと言及しています。
だから映画の宣伝にオバマ前大統領の名前がよく挙がっているんですね。
なるほどなるほど。
もっとよく知りたい人は「強化尋問技術」「強化尋問テクニック」「アブグレイブ刑務所」「サイコパス女兵士」などで調べてみてください。
かなり過激な内容や写真もあるので、ご注意ください。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画「カード・カウンター」について解説しました。
少し重い雰囲気の映画ですが、「タクシー・ドライバー」を思わせる雰囲気や、アメリカの反省点を正面から突き付けたメッセージ性の強い傑作です。
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