巨匠、原点回帰。
2023年に観ても、ジャッロは面白い…?
ダリオ・アルジェント監督の最新作、「ダークグラス」が公開されました。
ローマで娼婦ばかりを狙った猟奇的な連続殺人事件が発生。その4人目のターゲットにされたコールガールのディアナもまた殺人鬼によって車を衝突させられ大事故に遭い、両目の視力を失ってしまう。同じ事故で両親を亡くした少年チンとの間に絆が生まれ、一緒に暮らすこととなるが、サイコパスの殺人鬼はその後もしつこくディアナたちを殺害しようとつけ狙う。
「ダークグラス」公式サイトより引用
こちらの作品、いわゆるジャッロ映画というものでして、1960年から1970年頃に日本でも結構なブームとなったジャンルです。
「サスペリア」「フェノミナ」などを生み出した、ホラー・サスペンスの巨匠ダリオ・アルジェント監督の最新作「ダーク・グラス」を楽しむためのポイントをいくつかご紹介します。
ホラーやサスペンスの古い作品を掘り下げたい方にとっても、オススメの記事だよ。
まず初めに、「ジャッロ」とは何かをご説明いたします。
ジャッロとは
ジャッロの起源は1929年のイタリアに遡ります。きっかけは「モンダドリ」という出版社が、アガサ・クリスティをはじめとする英米のミステリー作家の翻訳シリ ーズの刊行を開始したこと。黄色い表紙が 特徴の同シリーズは、「リブリ・ジャッリ」 (イタリア語で「黄色い本」の意味)と名付けられました。これが話題を呼び、追随するように他の出版社もミステリー小説を黄 色い表紙で刊行していったことで、イタリアではミステリーや探偵小説に対し、ジャッロという呼称が定着するようになったのです。
POPEYE「真夏のホラー大冒険」より引用
そんな中で作られたのが、マリオ・バー ヴァ監督の「知りすぎた少女」(1963)。 若い女性が犯罪に巻き込まれる姿を描いた この作品は、“ジャッロ映画第1号”と呼ば れることになります。 それは彼がかねて作 っていた「血ぬられた墓標』(1960)な どの怪奇映画とは異なり、本作には犯人 探しの要素があったから。そんなバーヴァ の影響もあり、イタリアでは60年代からジ ャッロ的要素が映画に取り入れられ、70年代に絶頂期を迎えます。
元々は、小説の特徴から来ている言葉なのですね。
今やもう日本では、映画のカテゴリーを表すような言葉となっていますが。
ちなみに、タランティーノ監督の「パルプ・フィクション」も三文小説からとったタイトルなんですよ。
では、映画に移り変わっていった様子を説明していきましょう。
はじめにジャッロ小説を映画化したのは、マリア・バーヴァ監督と言われており、その後、ダリオ・アルジェント監督も台頭してきたような系譜です。
ダリオ・アルジェント監督
上記引用の続きとなります。
その立役者と言えるのが、ダリオ・アルジェント監督で、デビュー作「歓びの牙」 (1970)以後、「4匹の蠅』(1971)、 「わたしは目撃者』(1971)と続けざま にジャッロ映画を作ります。バーヴァが”静” なら、アルジェントは“動”。
POPEYE「真夏のホラー大冒険」より引用
アルジェントといえば、華麗なる殺人シーンが有名ですよね。ビジュアルが 重視されている半面、謎解き部分の脚本が練られてないと批判されたりもしますが (笑)。しかし、他のジャッロ映画は話が複 雑すぎて、イタリア国外の観客にはついて いけないものが多いんです。その点、強烈なビジュアルには言語や国境を超えた魅力 がある。そういう作り方をしているからこ そ、アルジェントは世界的な監督になった のではないかと思います。実際、バーヴァとは違って、アルジェントの作品はデビュー作からほとんどすべて日本で公開されていますから。
その後、こうした先駆者たちの影響もあ り、ストーリーを犠牲にしてもビジュアル面を強調するのがジャッロの特徴となって いきます。冗長になるくらいなら、整合性がなくてもたるみのない作品にしたいということなんでしょう。商売として世界市場 を見据えているので、見せ場を作らなけれ ばいけないということでもある。そういう 傾向は、他の国のホラー映画には見られません。ただ90年代くらいまではよく作られ ジャッロ映画も今では壊滅状態。 アルジェントが1人で孤軍奮闘している状況です。 彼にはこれからも頑張ってほしいですね。
細かいストーリーよりも、殺人シーンの鮮やかさ、カットの美しさなど、ビジュアル面に注力するのが、アルジェント監督のジャッロ映画です。
ストーリーも複雑なものではないので、頭を空っぽにして映像を味わうのがいいのかもしれませんね。
ただ、「サスペリア」「インフェルノ」あたりは、魔女の伝説やカルトなストーリー性も強いので、考察を楽しむタイプの映画です。
代表作ではありますが、ストレートなジャッロとはいかない作品です。
「サスペリア2」に関しては、ジャッロ映画として楽しむことができます。
非常にオススメです。
「サスペリア2」は「サスペリア」とストーリー上なんの関係もない映画です。「サスペリア」の人気にあやかって日本の配給が勝手に名付けたひどいタイトルです笑
詳しくは↓の記事を読んでみてね。
「ダークグラス」の見どころ
それではここからは、「ダークグラス」の見どころを解説します。
鮮やかな殺人シーン
監督本人がジャッロ映画を改めて公開すると言っているだけあり、その特長である殺人シーンはかなりのものでした。
血の鮮やかさがお見事!
スプラッターやホラーにある程度耐性のある私ですが、映画館でヒェッっと声が出てしまいました笑
監督の娘が出演している
アーシア・アルジェントが出演しています。
今作は娼婦が襲われるという筋書きだったので、もしや我が娘に…?という想像が膨らみますね。
いったいどんな役なのか、鑑賞してお確かめください。
とてもいい役ではありました。
ダリオ・アルジェントは犬好き
今作では、たくさん犬が出てきます。
中でも、盲導犬の活躍は素晴らしく、尊敬の念すら感じます。
ダリオ・アルジェント監督は間違いなく犬好きなのですね笑
イタリアでも、盲導犬は大活躍してるってことがわかりました。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
「ダークグラス」の見どころや、ジャッロ映画について解説しました!
今の映画は複雑すぎてわかりにくいと感じている人や、古典的なサスペンスホラーが好きな人には非常にオススメできる作品です。
X(旧Twitter)はこちら
https://twitter.com/bit0tabi
Instagramはこちら
https://www.instagram.com/bit0tabi/
Facebookはこちら
https://www.facebook.com/bit0tabi/
noteはこちら
https://note.com/bit0tabi
コメント