不幸な人のいるところ、神はあまねく犬を遣わす
映画『DOGMAN』を鑑賞しました。
本作は『レオン』『フィフス・エレメント』のリュック・ベッソン監督作品です。
かなり評判がよく、Xでは「リュック・ベッソン完全復活!」「レオン以来の衝撃」などとつぶやかれています。
個人的には『フィフス・エレメント』はかなり好きな作品ですが、確かに、1997年以降のリュック・ベッソンは製作に注力し、監督しての作品はイマイチな印象です。
しかし、結論から申しますと、この『DOGMAN』は、なかなか面白い!
あらすじはこんな感じだよ。
ある夜、1台のトラックが警察に止められる。運転席には負傷した女装男性がおり、荷台には十数匹の犬が乗せられていた。「ドッグマン」と呼ばれるその男は、自らの半生について語り始める。犬小屋に入れられ、暴力を浴びて育った少年時代。犬たちの存在に救われながら成長していく中で恋を経験し、世間になじもうとするも、人に裏切られて深く傷ついていく。犬たちの愛に何度も助けられてきた彼は、生きていくために犬たちとともに犯罪に手を染めるが、「死刑執行人」と呼ばれるギャングに目をつけられてしまう。
https://eiga.com/movie/99902/
それではここから、映画をより楽しむための解説に参りましょう!
実際の事件とは
本作はリュック・ベッソン監督が実際の事件から着想を得たと話しています。
どんな事件なのか、気になりますよね。
私は、犬を使った泥棒の事件ではないかと思い、リサーチしてみたのですが、そんな事件は見当たらない。
なんと、犬の檻に監禁されていた事件が基となっているようです。
実際の事件の記事を発見することはできませんでしたが、リュック・ベッソン監督のインタビュー記事で事件についてぼんやりしたことはわかりました。
5歳の少年が、犬の檻に繋がれ、4年間も監禁されていたという新聞記事を読んだリュック・ベッソン監督。
その少年はその後どうなっているのだろう…。そんなことに妄想を膨らませながらできたのが、本作だそうです。
しかし私は、結局この事件を特定できなかったという点に驚きを隠せませんでした。
なぜなら、同じような虐待事件が、今なお世界中色んなところで起こっており、そういった記事で溢れていたからです。
日本でも、あちらこちらで起こっています。
何ともおぞましいですが、興味がある方は「犬小屋 監禁 事件」などで調べてみてください。
ゾッとしますよ。
ラマルティーヌとは
本作の冒頭に、ある一節が引用されます。
不幸な人のいるところ、神はあまねく犬を遣わす
という言葉です。
これは、フランスのロマン派を代表する詩人アルフォンス・ド・ラマルティーヌの詩から引用したものになります。
1800年の初めから1869年までフランスで活躍した人物で、貴族として生まれ、政治家や詩人として活動していました。
1848年の2月革命で、臨時政府の外務大臣となり、同年12月の大統領選挙ではルイ=ナポレオン・ボナパルト(ナポレオンの甥っ子)と争って敗れ、1851年のクーデターで政界を引退。
晩年は不遇で、莫大な負債のために大量の作品を書き続けましたが、これらは文学的には評価されていないそうです。
やはり絶対的なヒーローではなく、不遇な人物の一節を作品の冒頭に起用するあたりも、主人公と重ねているのかなと思います。
『レオン』『フィフス・エレメント』との大きな違い
本作の評判を聞くと、『レオン』や『フィフス・エレメント』のような、派手目のアクションと、切ないドラマを融合させたような作品を期待してしまうのではないでしょうか。
残念ながら、アクションを期待している人は満足できないかもしれません。
主人公は車椅子ですし、活躍するのも概ねワンちゃんです。(ワンちゃんの演技はもの凄いですが)
しかし、『レオン』の繊細なドラマパートを期待している人には朗報。
『DOGMAN』はめちゃくちゃドラマチックです。
主人公がなぜ今に至ったのかを語っていく、回想ムービーになっています。
これがもう、可哀想で、切ないんですよ…。
いかにして「DOGMAN」という人間が生まれたかを我々も知っていくことになるんですね。
このあたりは、『JOKER』によく似ているかもしれません。見た目も白塗りのドラッグクイーンですし。
しかし、境遇だけでいえば、「JOKER」の方が全然マシ。
「DOGMAN」はより悲惨で悲しい過去を背負っているのです。
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズに注目
本作でそんな悲しき「DOGMAN」を演じたのがケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。
『ニトラム/NITRAM』(21)では第74回 カンヌ国際映画祭男優賞に輝いています。
もの凄い演技力です。
暗い過去を持つ人物を演じさせたら、もう絶品ですね。
『ニトラム/NITRAM』では主人公マーティンを演じているんですが、これがまたとんでもない役。
オーストラリアで起こった実際の銃乱射事件の張本人を演じているんです。
『DOGMAN』で演じる役は、悲惨で社会的底辺にいながらも、どこか気品と愛に溢れている。
絶妙な演技でした。
ワンちゃんの見事な演技にも注目
本作は、『DOGMAN』が犬たちと共に生活し、犬たちと協力して悪人を倒すということで、とにかく多種多様なワンちゃんが登場します。
人を襲うというイメージから、ドーベルマンのような大型犬をイメージしてしまいますが、ビーグル位の中型犬も、チワワやパピヨンのような小型犬も登場します。
噛みつく役は、やはり大型犬が担当するのですが、終盤の撃退シーンでは、小型犬もキチンと活躍します。
小型犬が悪人をおびき寄せ、大型犬が襲う。犬種を越えた驚くほどのチームワークに魅了されました。
総勢15名のドッグトレーナーが本作の撮影に携わったそうです。
ワンちゃんと俳優とスタッフ、セットのすべてを調整するのはかなり大変で、スピード感のある撮影が求められたのだとか。
それであのクオリティは凄い!CGなしでよくぞここまで…。感動すらしてしまいます。
メインで活躍するワンちゃんは10数匹といったところですが、ラストシーンでは100匹くらいワンちゃんがいたように感じました…。
その他見どころ
とにかくリュック・ベッソン監督は犬が好きなんだろうなという、犬愛が感じられる作品です。
また、音楽も素晴らしい。
エディット・ピアフ、マリリン・モンロー、マイルス・デイヴィスなど、ジャンルを超えた様々な名曲が使用されています。
中でも私が注目していただきたいのが、『ゴッドファーザー 愛のテーマ』が流れるシーンです。
なかなか、映画でこの曲を使うのは気が引けますよ…。映画としても音楽としても偉大過ぎますから。
それだけ、リュック・ベッソン監督が本気を出して作っている覚悟のようなものが伺えますよね!
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『DOGMAN』で注目したい5つのポイントを解説しました!
ちなみに、犬はみんな無事です。
ホッ。
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