立ち上がれ、バルボア
映画『籠の中の乙女』を鑑賞しました。
『聖なる鹿殺し』『哀れなるものたち』『ロブスター』のヨルゴス・ランティモス監督の作品です。
これまた、かなり変わった作品です。
詳しく解説していきたいと思います。
ネタバレ注意!
作品概要
本作は2009年の作品で、全編ギリシャ語です。
家族の絆を誰にも壊されたくない父親の「妄執」と、それに振り回されて育った子どもたちの生活を描いた本作は、人間の怖さ、エゴイズム、理想の家庭とは何か?といった問いを、微細な心理描写とアーティテイックな映像による演出で描き出し、第62回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」グランプリを獲得、翌年米アカデミー賞®外国語映画部門に堂々ノミネートを果たした。
「どの家族にも、それぞれのルールがある」とするヨルゴス・ランティモス監督が作るこのシチュエイションは、「あまりにも極端な状況」がクライマックスに向かう際の緊張とともに、観る者の心を揺さぶるだろう。
あらすじ:ギリシャの郊外にある裕福な家庭。だが、一見普通にみえるこの家には秘密があった。 両親が子どもたちを外の世界の汚らわしい影響から守るために、ずっと家の中だけで育ててきたのだ。 邸宅の四方に高い生垣をめぐらせ、子どもに「外の世界は恐ろしいところ」と信じ込ませるために作られた「厳格で奇妙な」ルールの数々。
学校にも通わせないその様子は外の世界からすれば異常なことだったが、純粋培養された従順な子どもたちはすくすくと成長し、幸せで平穏な日々が続いていくかのように見えた。 しかし、成長とともに好奇心の芽生えた子どもたちは恐怖を抱えつつも、次第に外の世界に惹かれていくのだった…。
http://kago-otome.ayapro.ne.jp/intro.html
「どの家族にも、それぞれのルールがある」というところから着想を得て、ルールで子どもたちを縛り付け、まるで犬猫を飼うような感覚で子どもを育てる社会問題へ一石を投じた作品なんですね。
ちなみに英題は『Dogtooth』=犬歯という意味。
この家庭を巣立つのは、犬歯が抜けるまでという意味なんですが、犬歯は大人の歯なのでそんな日はこないんですよね。
本作は、2009年・第62回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリを受賞し、10年・第83回米アカデミー賞では、ギリシャ映画として史上5本目となる外国映画賞にノミネートされるなど、高い評価を受けています。
本作がどうして海外で高い評価を獲たのかというと、それは2つの側面があります。
それはアメリカにおけるホームスクールと、映画讃歌の2つの側面です。
ホームスクール
欧米諸国では、学校に通わずに自宅で学習する、ホームスクールという教育を選択する過程が一定数存在します。
アメリカではおよそ30人に一人がホームスクールで学習しているそうで、これは決して少ない数ではないと言えますよね。
ちなみに歌手のビリー・アイリッシュもホームスクールで育っています。
ホームスクールを選択する家庭は、学校環境が良くないため、いじめ等の問題を避けるためや、障害、深刻なアレルギー、オリンピックを目指すようなスポーツ活動、芸能活動など、様々な理由があります。
また、宗教上の理由で、ホームスクールを選択するのも珍しくありません。
中でも、キリスト教福音派の家庭は、ホームスクールを選択するケースが特に多いのだそうです。
キリスト教福音派とは、キリスト教の潮流の一つ。聖書の記述を忠実に守り、伝道を重視し、積極的に行動することを旨とします。
プロテスタントの系譜を引いているんですが、米国では宗教別人口の約4分の1を占め、主流派のプロテスタントを上回る最大勢力なんです。
聖書の教えに反する、ダーウィンの進化論や、科学的な宇宙の理論、多様性を受け入れるべきだという学校教育が、福音派の思想と合わないから、学校には通わせづらいというわけですね。
こういった理由で、ホームスクールを選択することは危険も孕んでいるのではないか、こういったメッセージが込めらているという点が、受けた理由の一つでしょう。
ちなみに、2023年に公開された『M3GAN』も、ホームスクールに対するメッセージが込められています。
映画讃歌
この映画は、ビジュアルがとても美しいので、途中まではハイセンスなオシャレ映画だと思い込んでしまいます。
しかし、後半はかなり熱い。
映画のオマージュがいくつか出てくるんですよ。
ふとしたきっかけで、長女が映画を観てしまうんです。もちろん、この家では映画のような俗物はスーパータブー。
『ロッキー』を観てシャドーボクシングをしたり、
『JAWS』のセリフをプールの中で暗唱したり、
『フラッシュダンス』の振り付けを一心不乱に踊ったり。
親や家庭が教えてくれない大切なことを、映画が教えてくれる。
そんな熱いメッセージが詰まっているんですね。
オシャレ系映画、サスペンス映画に見せかけて、実は映画の大切さとか素晴らしさを語っていると。そりゃあ映画祭で絶賛もされますよね。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『籠の中の乙女』について解説しました。
流石はヨルゴス・ランティモス。奇妙な雰囲気ムンムンです。『聖なる鹿殺し』が好きな人はめちゃくちゃオススメ。
映画への愛も詰まっていてたまらないよね!
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