アメリカンドリームを、ドーナツで掴む!
映画『ドーナツキング』をAmazon Prime Videoで鑑賞しました。
アメリカで「ドーナツキング」と呼ばれるカンボジア人男性に関するドキュメンタリー映画です。
製作総指揮は何と巨匠リドリー・スコット。
ドーナツで闘ったりするの?
むしろ、もの凄く勉強になるアカデミックな映画だよ。
この映画を観ると、アメリカのドーナツチェーンの変遷が分かるだけでなく、カンボジアの近代史も知ることができます。
1975年、カンボジア内戦から逃れ難民となり、妻と子と共に米・カリフォルニア州に渡ったテッド・ノイ。ある日テッドは、近所から漂う甘い香りに惹かれ、ドーナツ店に入る。一口でドーナツに夢中になった彼は、ドーナツチェーン・ウィンチェルで修業し、自分の店を構える。家族総出で休まず働くなか、店は妻クリスティの気さくな接客が評判を呼び、すぐに繁盛した。テッドは、自分の店で同胞のカンボジア難民たちを雇い、彼らにドーナツ製造のノウハウを教え、自活の手助けをした。系列店は拡大し、総資産2,000万ドル(日本円で約22億円)もの莫大なお金を手にした彼を、皆が”ドーナツ王”と呼んだ。成功を手にしたテッドだが、小さな躓きから人生が思わぬ方向へと転換する。
https://www.twin2.co.jp/distribution/
1970年代のカンボジア
1970年頃から、カンボジアでは内戦が勃発しました。
ベトナムの隣国であるカンボジアでも、アメリカに親米右派の政権に代わるも、やがてアメリカの軍事支援がなくなり、今度は左派のポル・ポト政権へと代わっていきます。
これが悲劇の始まりでした。
始めは英雄的なイメージでもって、首都プノンペン市民から歓迎されたポル・ポト。
しかし、彼が翌日に出した命令は、すべての市民に対する市外退去命令でした。
ポル=ポト政権のねらいは、農業主体の共同社会の建設、通貨の廃止、学校教育の否定など、極端な原始共産制の実現を強行しようとするものでした。
さらに、反対派に対する弾圧などの強圧的支配をとり続け、多数の犠牲者が出しました。
もの凄い反人道的行為やジェノサイドの歴史なので、気になる人は調べてみてください。
映画では、首都プノンペンから人がいなくなったこと、移住先でのひどい暮らしなどを語っていました。
親子が離される、9人で茶碗一杯の米しか与えられないなど、凄まじいものでした。
ドーナツで掴んだアメリカンドリーム
やがて、カンボジアの人々は、アメリカへ難民としてやってきます。
「ドーナツキング」こと、テッドさんもその一人です。
彼の新天地はアメリカ西海岸、カリフォルニア州でした。
日本ではドーナツといえば、ミスタードーナツか、クリスピー・クリーム・ドーナツあたりがメジャーですよね。
どちらも、もともとはアメリカのフランチャイズなんです。
アメリカでは朝食として食べられることもあるドーナツ。
アメリカ人のドーナツ年間消費量は約100億個といわれ、全米では2万5000店以上ものドーナツ店があり、そのうち約5000店舗がカリフォルニア州にあるんです。
カリフォルニアで、高速道路が整備され、持ち帰り需要が高まり、ドーナツ店も増えていったのだとか。
90%がカンボジア系
そんなドーナツの本場中の本場ともいえるカリフォルニア州。
なんとドーナツ店の90%を経営しているのが、実はカンボジア系アメリカ人なのです。
ここに、テッドさんが「ドーナツキング」と呼ばれる所以があります。
テッドさんは、ドーナツチェーン「ウィンチェル」で修業をした後に独立し、やがてたくさんの店を経営します。
各店の店子(店を借りている人)はみなカンボジア系。
同じコミュニティやカンボジア難民に職を与えるヒーローだったのです。
しかし、ギャンブルにハマってしまい、お金と引き換えに、店子に店の所有権を売ってしまうんです。
そして、所有権を得た彼らは、やがて独立し新しい店舗となったのです。
これが、カリフォルニア州のドーナツ店がカンボジア系ばかりである理由なんですね。
ドーナツキング恐るべし!
ピンクの箱
テッドさんはドーナツを販売する際の工夫として、箱を変えました。
それまでは、白い箱が主流だったんですが、ド派手なピンクの箱に入れて販売したんです。
ピンクの箱の方が、安く作れるんですって。ビックリです。
しかし、これが功を成すんですね。
人気が出たんです。
アニメ「シンプソンズ」でもドーナツの箱はピンクだし、いろんな映画でも「ドーナツの箱はピンク」というイメージが定着する程になっていきます。
『パルプ・フィクション』もそうでしたよね。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『ドーナツキング』について解説しました。
アメリカの難民問題や、カンボジアの歴史など、とっても勉強になる映画です。
悪銭身に付かずの学びもあるかも
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