『E.T』観た後解説【少年と宇宙人を通して描いたもの】

SF映画

エリオットとE.Tは、二人で一つ

映画『E.T』を観た後に読んでいただきたいネタバレありの解説です。

bitotabi
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映画を鑑賞した後に、ストーリーのネタバレを踏まえた上で解説する記事です。この記事を読むと、スピルバーグが伝えたかったメッセージがよりお分かりいただけると思いますので、是非、映画を観た後、余韻に浸りながら読んでいただければ幸いです。

ダニー
ダニー

まだ観てない人は、先『E.T』の観る前解説を読んで、映画を観終わったらにこの記事を読んでね!

ヨーダが出てくる理由

『E.T』では、ハロウィンの仮装をして街を歩く子どもたちの様子が映ります。

その中の一人に、1980年に公開された『スターウォーズ帝国の逆襲』に登場するキャラクター、ヨーダの仮装をした子がいるんです。

E.Tと割と似た見た目で、ちょっとしたギャグシーンのように見えるこのシーンなんですが、実は結構深いんです。

ヨーダというキャラクターも、パペットを使っているんですよね。さらに、モデルとなる人物が存在したり、非常に深いセリフを放つ、ジョージ・ルーカスの分身とも言える役割もまた担っています。

そこに着想を得たスピルバーグは、E.Tというキャラクターに自身を投影しているのです。

E.Tとエリオットは二人で一つ

スピルバーグは、元々人間を撮るのが苦手だったんです。

それまでの『未知との遭遇』や『JAWS』でも、人間の描き方がなってないと、批評家に叩かれていました。

それを乗り越えたのが、本作『E.T』なのです。

先述の通り、ジョージ・ルーカスがヨーダを描いたことに着想を得て、スピルバーグはE.Tのキャラクター像を作りました。

可愛くないけど見終わったらみんなが愛してくれるような狙いで。ヒットしたからこそ、世界中でカワイイと愛されるキャラクターですが、登場シーンも結構怖いですし、元々は母親くらいしか愛されないような醜い見た目のキャラクターとして作ったんです。

そんなE.Tは、エリオットの母親のことをやたらと気にします。故郷の星にいる本当のお母さんに思いを馳せていたのでしょう。

そして、スピルバーグ自身、幼少期に母親からの愛情を欲しがっていたんです。

でも、エリオットの母親はE.Tを拒絶するんですよね。子どもたちがE.Tの存在を打ち明けた時。「早く逃げるわよ!」って感じで。

スピルバーグも、母親から愛情を受けることは叶わなかったと、そんな風に感じていたんでしょう。

でも、E.Tは好意を寄せるエリオットの母から拒絶され、その後命の危機に瀕しても、蘇り、故郷へ帰るために頑張るんです。そして、最後の最後、別れでも母親の方は見ないし、言葉を交わすこともついにはありませんでした。それでも自分の道を進んでいく。そういった力強さを見せつけたわけですね。

そして、本作でもう一人スピルバーグが自身を投影したのが、エリオット少年です。 

エリオットは、母親よりもお父さんっ子のような印象を受けます。「お父さんなら…」というセリフを言いますし、お父さんのシャツの匂いを嗅いだりするんです。

これもまた、スピルバーグ自身、両親が離婚して、父親とは離れて暮らしています。

母・兄・妹の中で、彼だけ黒髪ですしね。これも同じです。

母親への愛情を欲しがるE.Tと、父親が忘れられないエリオット。この両名が、両親の別離が子どもに与える影響を描くと共に、スピルバーグの複雑な心境をもまた表現しているのでしょう。

それを踏まえて観ると、あのクロゼットから母親を見つめるシーンはたまらないものがあります。

 



観終わったら『フェイブルマンズ』を観よう!

そして、こういった『E.T』のある種自伝的な側面をより確信させてくれるのが、2022年に公開された『フェイブルマンズ』です。

本作はもっとストレートに、スピルバーグ自身の人生を描いた自叙伝映画になっています。

お母さんを演じた俳優も双方よく似てますし、妹の雰囲気もそっくり。

あと、『E.T』の終盤にチラッと出てくる電車のおもちゃなんかも、『フェイブルマンズ』ではよりハッキリと描かれていますので、『E.T』がいかにスピルバーグの少年期を投影しているものであるかが分かると思いますよ。

『E.T』は『未知との遭遇』の続編?

『E.T』の観る前解説で言及したように、当初『E.T』は『未知との遭遇』の続編として制作されたものでした。

登場人物の一人に、『E.T』を追う大人の男性が出てきますよね。キーズとか鍵の男と呼ばれることが多い、名前もない役です。

彼が、エリオットに対して、こんな感じのセリフを放ったのを覚えているでしょうか?

「僕も彼の友だちだよ。彼と会うのを小さい頃から待ってたんだ」

このキーズは、『未知との遭遇』の時に子どもだった人なんですよね。きっと。あの時近くにいたのかもしれないし、ニュースを見ただけかもしれない。でも、宇宙人の存在が気になって、会いたくて会いたくて仕方がなかった。そんな人物なんです。

ちなみに、スピルバーグが『E.T.』の脚本を『未知との遭遇』を配給したコロンビア・ピクチャーズに最初に持ち込みましたが、コロンビアのお偉方は、興味を示さなかったため、ユニバーサルに持っていって映画化にこぎ着けたそうです。

もし、『未知との遭遇』で地球にやってきた宇宙人の一人が、たった一人地球に置いてけぼりにされたらどうなるか。また、人間とより深い交流をもったとしたらどうなるのか。そんな設定で描いた作品だったんですね。

 



大人の顔がほとんど出ないわけ

本作では、あまり大人の顔が出てきません。特に序盤はお母さんと先生くらいなんです。

E.Tを追いかける大人たちは、腰から下くらいしか映らないんですね。岡田斗司夫さんが、これを「PEANUTS」の漫画みたいな感じだと表現していたんですが、まさにそんな感じです。

また、お母さんもE.Tを認知できずに物語が進んでいくんですよね。一見ギャグっぽいんですが、エリオットが言っていた「大人には見えないんだ」という妹に対する苦し紛れの言い訳を、ちょっと含みをもたせて本当のことのように描いているのは巧いなあと思いました。

子どもの目線でしか、視えないもの世界がある。撮影の工夫でこういった表現をしているんだと思います。

でも、終盤は大人の顔がバンバン映りますよね。E.Tが捕まっちゃってから。あれは、子どもたちだけの秘密から、大人の問題にまで発展してしまったことを描いているんですね。

ラストシーンについて

本作のラストは、エリオットがE.Tの宇宙船を見送って幕を降ろします。

実はこのシーンより後にも撮影する予定だったそうですが、エリオットを演じた少年の演技があまりにもよかったので、このシーンをラストとして採用したんだそうです。

これは本当に大成功だと思います。あの演技にあの音楽。泣けます。切なくって美しいです。

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます!

映画『E.T』を観た後に向けた解説をお届けしました。

bitotabi
bitotabi

スピルバーグ自身の少年時代を、E.Tとエリオットを通じて痛切に伝えているんですね。

ダニー
ダニー

ぜひ、『フェイブルマンズ』を観てない人は鑑賞してみてね!

 

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