『エクソシスト ビギニング』:ラジー賞の屈辱と初代への敬意、そして深遠な問い

ホラー映画

ホラー映画史に燦然と輝く金字塔『エクソシスト』(1973年)。

その前日譚として2004年に公開されたのが『エクソシスト ビギニング』です。

監督を務めたのは、ポール・シュレイダー。脚本家として『タクシードライバー』や『レイジング・ブル』といった数々の名作を手掛け、その芸術性の高い脚本と映像センスで知られる人物です。

そして、脚本を担当したウィリアム・ウィッシャーは、SFアクションの金字塔『ターミネーター2』の共同脚本家としても知られています。

これほどの才能を持つクリエイターたちが集結した本作への期待は公開前から高まっていましたが、公開後の評価は芳しくなく、最低映画の祭典であるラジー賞にノミネートされるなど、厳しい声も少なくありません。

なぜ、これほどの才能を持つ監督と脚本家が手掛けた作品が、このような評価を受けてしまったのでしょうか?

本稿では、その理由を掘り下げるとともに、実は秘めているテーマや魅力についても考察していきたいと思います。

ダニー
ダニー

気合の入った布陣なのにねぇ。

bitotabi
bitotabi

私は『エクソシスト』が大好きなので、この映画にも熱は感じました。一方で、「もったいないな」と感じるポイントもあるのも事実。詳しく解説していましょう。

なぜ評価は低かったのか?~ラジー賞が物語る「残念な点」~

興行収入こそ一定の成功を収めたものの、批評家や観客からは厳しい意見が相次ぎました。その主な理由として挙げられるのは、以下の点でしょう。

・過多なCGが生み出すチープな質感

現代の技術を駆使したはずのCGが、かえって画面に安っぽさを与えてしまったという指摘は少なくありません。オリジナル版の持つ生々しい特殊メイクや、観客の想像力を掻き立てる演出とは対照的に、本作では過剰なCGが現実感を損ない、恐怖感を薄めてしまったという声は根強いです。悪魔の描写や超常現象の表現において、CGに頼りすぎた結果、かえってリアリティを失ってしまったのは否めません。

・恐怖演出の方向性の迷走~グロテスク描写への偏り~

オリジナル版が内面的な恐怖や心理的な圧迫感で観客を震え上がらせたのに対し、『エクソシスト ビギニング』は直接的なグロテスク描写に偏ってしまったという意見も多く聞かれます。もちろん、悪魔憑きの恐ろしさを表現する上で視覚的な刺激も重要ですが、本作ではそれが過剰になり、本質的な恐怖や深みが損なわれてしまった可能性があります。単なる残酷描写は、観客の想像力を狭め、恐怖を表面的なものにしてしまいがちです。

 



それでも見出すべき魅力~テーマに宿る深遠なメッセージ、そして初代への敬意~

『エクソシスト』で悪魔パズズに取り憑かれた少女リーガンを救おうとするカラス神父もまた、病に苦しむ母親を前に、神の存在に疑問を抱き、信仰が揺らいでいました。そして、『エクソシスト ビギニング』の若き日のメリン神父もまた、第二次世界大戦という人類の犯した巨大な悪を目の当たりにしたことで、信仰の根幹を揺るがされます。

個人的な苦悩によって信仰が揺らいだカラスと、普遍的な悪によって信仰が揺らいだメリン。背景は異なるものの、かつて信仰の危機に瀕した二人の神父が、悪魔との壮絶な戦いを経験し、その中で再び信仰を取り戻していく過程こそが、二つの作品を深く結びつける重要なテーマと言えるでしょう。

さらに、『エクソシスト ビギニング』は、悪魔パズズの存在を過去から示唆することで、初代における悪魔の強大な力に説得力を持たせようとしています。

また、メリン神父が悪魔祓いの道へと進むことになる原体験を描くことで、初代における彼の強い使命感の背景を補強し、その行動原理をより明確にしています。

そして、単なる超自然的な恐怖だけでなく、戦争の悲惨さといった人間の心の闇を描くことで、初代が持っていた根源的な恐怖のテーマを受け継ぎ、より普遍的な問いを投げかけようとしている点も見逃せません。

 



今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます。

『エクソシスト ビギニング』は、その映像表現や恐怖演出において、多くの観客の期待に応えられなかったかもしれません。ラジー賞にノミネートされたという事実は、その評価の厳しさを物語っています。

しかし、目を凝らして見れば、本作は信仰、戦争、文化といった普遍的なテーマを扱い、観る者に深い問いを投げかけているのも事実です。

芸術性の高い脚本で知られるポール・シュレイダー監督と、『ターミネーター2』の脚本を手掛けたウィリアム・ウィッシャーという才能あるクリエイターたちが、随所に感じられる初代『エクソシスト』へのリスペクトを込めながら、否定的な評価だけでは語り尽くせない、本作のもう一つの側面を示唆していると言えるでしょう。

bitotabi
bitotabi

『エクソシスト』ファンであれば、それなりに楽しめるし、嬉しい演出も多い作品であります。

ダニー
ダニー

マックス・フォン・シドーとステラン・スカルスガルドのギャップはちょっと気になったよね。

 

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