『水のないプール』生の実感を代償に、男は溺れていく

クライム・サスペンス映画

映画『水のないプール』をAmazon Prime Videoで鑑賞しました。

『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』を観てからというもの、若松孝二監督の作品が気になって気になって仕方がない。

そこで、映画に出てきた『水のないプール』を鑑賞してみました。

bitotabi
bitotabi

私にとって、初めての若松作品。
とにかく、「衝撃」の一言でした。

ダニー
ダニー

ゴクリ…。

男は地下鉄の駅員。仕事はキップ切りに駅の掃除ばかり、家に帰ればヤケに太って口うるさい女房、毎日クソ面白くもないゼ。雨の夜、若い男2人に暴行されていた若い女を助けてやった。退屈な毎日は変わらないゼ。酒場でヤクザとケンカし右手を怪我した。その帰りに不思議な少女に出会った。クソな毎日は変わらないゼ。なにもかもうまくいかない。いつまでこんな毎日が続くんだ。無力、焦り、渇き・・・ある日、家族とピクニックに行った男は衝撃的な光景を目撃する。それは男の中で何かがはじけるきっかけとなった。そして男は〝生〟を輝かせるために闇夜に翔ぶ-(C)若松プロダクション・スコーレ株式会社

Amazon Prime Video作品紹介ページより引用

本作は、実在した事件である、「仙台クロロホルム連続暴行魔事件」に着想を得ています。

めちゃくちゃ過激です。ゴリゴリの性犯罪がテーマになっています。

それなのに、キャストが物凄いんです。

内田裕也にMIE、ジュリー、タモリ、赤塚不二夫、安岡力也など、多ジャンルの芸能人が顔を揃えています。

今だと考えられないですね…。

ちなみに、ピンク・レディー解散直後の1982年にこの映画は作られており、その後またピンクレディーは復活しています。

内田裕也演じる主人公の男は、慌ててコケたり、ケンカに巻き込まれたり、妻にボロカスに言われたりと、人間臭さや鈍くささをよく見せるんです。

これが、リアリティがあっていい…。

今の映画の洗練されたサイコパスキラーのような感じではなく、あくまでも地続きの人間。

自分の周りにもいそうだし、何かきっかけがあれば自分もこのようになってしまうかもしれない…。そんな危うさを感じさせるのです。

 



タイトルとなっている『水のないプール』。

映画の中で、実際に水をはっていないプールが、何度か登場します。

物語に直接関わってくる訳ではなく、偶像的なカットとして。

これはきっと、空っぽの男の心を描いているのかなと思います。

仕事や家庭では決して満たされない男の欲望のようなものを。

 



シャボン玉を吹く女も、セットで登場します。

シャボン玉については、心の平穏、癒しのようなものと、

すぐ割れたり、長く続いたりなど、夢の実現性のようなものも暗喩しているのかなと思いました。

彼の犯罪行為は、きっと儚い夢だけど、できればこの快楽が長く続けばいいな…。

という感じでしょうか。

Amazon Prime Videoのアイキャッチになっているシーンも特徴的です。

内田裕也がニヤリと笑っていますね。

このシーンは、同僚から顔を殴られ、自分の血を観てからニヤリと笑うんです。

『水のないプール』の中で、日常から離れた刺激によって、男の心は満たされていく。

それは、夜な夜な繰り返す若い女との性行為であったり、

同僚に殴られて流す血であったり、

生を実感するものなんですね。

そんな生の喜びを一度知ってしまうと、もう戻れない。

水の中で溺れていくように、堕ちていく…。

あまりにもアンタッチャブルで刺激的な作品でございました。

最後までお読みいただきありがとうございます!

映画『水のないプール』の感想と解説をお届けしました。

bitotabi
bitotabi

若松孝二監督作品、エネルギーに満ち満ちています。めちゃくちゃ面白かったです。刺激が強すぎます。

ダニー
ダニー

Amazon Prime Videoで観られるよ!

 

https://www.amazon.co.jp/gp/video/storefront?benefitId=default&tag=neotennoji-22

 

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