『Flow』考えずにいられない映画【黒猫は○○だった】

アニメ映画

徹底的に動物として描き、セリフがないからこそ、深く考えさせられる

Flow』を鑑賞しました。

ロシアと国境を接しているラトビアで作られた作品で、史上初めてのアカデミー賞アニメーション映画賞を受賞した作品。

第97回 アカデミー賞(2025年) 第82回 ゴールデングローブ賞(2025年) 第77回 カンヌ国際映画祭(2024年)となっており、凄まじい記録を樹立していますね。

この映画、セリフが一切ないんですよ。動物の鳴き声だけ。

ダニー
ダニー

えぇ、それでストーリー分かるの?

bitotabi
bitotabi

だからこそ、推測するしかないから、とっても深く考えさせられるんだ。

今回の記事では、映画『Flow』を読み解くヒントとなるような解説をしていきます。

結末に関するネタバレは含みませんので、未鑑賞の方もご安心ください。

また、鑑賞後に気になるシーンがあってモヤモヤしている人もぜひお読みください。

作品概要

Introduction:ラトビア出身のクリエイター、ギンツ・ジルバロディス監督の長編2作目となる『Flow』。2024年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でプレミア上映を飾り、同年のアヌシー国際アニメーション映画祭で審査員賞、観客賞含む4冠を受賞。2025年ゴールデングローブ賞では『インサイド・ヘッド2』『野生の島のロズ』『モアナと伝説の海2』ら錚々たるビッグタイトルをおさえてアニメーション映画賞を受賞。大規模なスタジオ作品では数百人が携わり、予算が数百億円とも言われるアニメーション制作において、全編がオープンソースソフトウェアBlenderで制作され、スタッフは50人以下、制作費は350万ユーロ(約5.5億円)という、アニメーション制作の常識を覆す極めてインディペンデントな体制と革新性も、驚きと賞賛を以て受け止められている。そして2025年アカデミー賞®では、ハリウッドメジャー大作を抑え、長編アニメーション賞受賞の快挙を果たし、アニメーション映画の歴史を変えた作品となった。
本編で描かれるのは、洪水に呑まれつつある世界を舞台に、時には運命に抗い、時には流され漂う一匹の猫と、道中を共にするさまざまな動物たちを見つめる、圧巻の映像体験。ジルバロディス監督が「この作品は、とても個人的なストーリーでもあります。かつての作品では全て1人で手掛けていた私が、本作では主人公の猫のように、チームを組み協力すること、仲間を信頼すること、違いを乗り越えることを学びました」と語るとおり、主人公の猫はもちろん、共に旅をする動物たちが各々の魅力を全開に、成長しながら旅をしていく様にも注目だ。

Story:世界が大洪水に包まれ、今にも街が消えようとする中、ある一匹の猫は居場所を後に旅立つ事を決意する。流れて来たボートに乗り合わせた動物たちと、想像を超えた出来事や予期せぬ危機に襲われることに。しかし、彼らの中で少しずつ友情が芽生えはじめ、たくましくなっていく。彼らは運命を変える事が出来るのか?そして、この冒険の果てにあるものとは―?
https://flow-movie.com/

本作は、『Flow』というタイトル通り、全編通してほとんどが、流れるようなワンカットで進行します。

黒猫の歩んだ道を、私たちもそのまま追跡する。そういった展開になっています。

ディズニーやドリームワークスの作品のように動物たちが話したり、人間のように服を着たりということは一切なく、徹底的に動物として描かれてて、セリフがないからとても考えさせられるんです。

そして、何より驚きなのが、異例の大ヒットとなった本作が、僅か50人で制作されたという点なのではないでしょうか。

加えて、オープンソースのアニメーション作成ソフト「Blender」で作っているから制作費もローコスト。

数百人が携わり、予算が数百億円とも言われるアニメーション制作において常識を覆すような革新的な作品になったわけであります。

bitotabi
bitotabi

それではここから、本作が一体何を伝えようとしているのかを解説していきます。

 



黒猫は監督自身

本作を紐解く一つのポイントとして、作品概要にもあるように、「黒猫=監督」であるということを掴むと、物語で伝えたいであろうことがくっきりしてくるのではないかと思います。

物語の序盤で、黒猫の飼い主は彫刻家であることが何となくお分かりいただけると思います。ギンツ・ジルバロディス監督のお父さんも彫刻家だったそうなんです。

監督は5年前この作品を手掛けるまで、たった一人でアニメを作ってきたんです。

18歳の時に作った『Aqua』という短編アニメも黒猫が海の上で船に乗っているもので、本作はそれを下敷きに作ったのではないかと思われます。

監督が一人で作ったショートフィルム『Aqua』

そして今回『Flow』で、初めて50人の仲間と共にアニメを作ったんですね。

レトリーバー、ワオキツネザル、カピバラ、そしてヘビクイワシという4人の仲間と共に旅をする物語を描いたわけです。

黒猫は、それぞれの仲間から、色々なことを教わるんです。

優しさや、好奇心、親切心、正義感。などなど。

『Aqua』でも『Flow』でも、黒猫は魚を獲ることを覚えます。『Aqua』では黄色い魚1匹でしたが、『Flow』ではたくさんの種類のを獲ることができるんです。おそらく、この色彩豊かな魚というのは、アニメーション制作を指しているのではないかなと感じました。

一人ではできなかったこと、表現できなかったことが、できるようになった。そういう意図があるのかなと。

あと、黒猫が鹿に囲まれる夢を見るシーンがあるんですけど、これは普通に就職して普通に生きることへの不安に見えますね。「鹿=マジョリティ」を表現してるんだと思います。

 



ヘビクイワシについて

中盤で、大きなヘビクイワシが黒猫を食べようとするシーンがあるんですが、一羽の勇敢なヘビクイワシに助けてもらうんですね。

結果、そのヘビクイワシは裏切り者だとされて、翼を折られ、群れから追い出されるんです。

このヘビクイワシも、監督と誰かを描いているのかなとも思ったんですが、どうも監督に師匠のような人はいないようなんですよ。

じゃあ、これが何を意味するのかというと、やはりラトビアという国とロシアの関係なのではないかと思われる。

ラトビアはロシアの隣国で、もしウクライナとの戦争に区切りがついたら、次はラトビアが狙われるのではないかということも考えられます。

そういった政治的な不安を表現しているんじゃないかなと思います。

ダニー
ダニー

次はラストシーンについて少し触れるから、まだ観ていない人は気をつけてね!

 



ラストについて

こちらに関しては鑑賞後に観た方向けになりますので、まだ観ていない人は一旦閉じていただいて、作品を鑑賞してからお読みください。

物語が進むと共に、水はどんどん増えていきました。

そして彼らは船で旅をするうちに、ものすごく高いところまで来てしまったことが、最後に分かるんですよね。

地上にいる時は遥か高みにあったような高い山や塔の上に辿り着いてしまっていたわけです。

そして、水は少し引いてきた。ここまで高く登ってしまった一行は、もう引き返すことはできないのかもしれない。

そんなラストのように思ったんです。

気楽にアニメーションを作ることはもうできないのかもしれない。そんな、やや切なさも残すようなエンディングでしたね。

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます。

Flow』について解説しました。

bitotabi
bitotabi

各賞受賞も納得。めちゃくちゃ考えさせられる作品です。あなたなりの考察もぜひ教えてください。

ダニー
ダニー

監督がいろんな思いをこめて作ったことが分かったよね。

 

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