若者が、戦闘マシーンに変わるまで。
映画「フルメタルジャケット」を鑑賞しました。
今作は、アメリカの汚点とも言える、ベトナム戦争を主題にした作品です。
1980年代には、ベトナム戦争映画ブームがありました。
「プラトーン」「ランボー」「グッドモーニング・ベトナム」「ハンバーガーヒル」など、いずれも名作ですが、「フルメタルジャケット」は、その中でもカルト的な人気を誇っています。
なんでそんなに人気なのかな?
なぜなら、巨匠スタンリー・キューブリックが描く、ベトナム戦争だからです。
キューブリックによる戦争作品
キューブリック監督は、全ての作品が素晴らしいです。
僕の出てる映画もね。
私は、世界一の監督だと思っています。
キューブリック監督は、同じジャンルの作品は撮らないという主義を持っています。
SFは「2001年宇宙の旅」
ホラーは「シャイニング」
歴史物は「バリー・リンドン」
社会ドラマは「時計仕掛けのオレンジ」
といった感じです。
どれも、メッセージと、氏の魂がこもった、珠玉の名作で、何度も観ても面白いです。
そんなキューブリック監督が戦争映画として選んだのが、あろうことか、アメリカが最も隠したい負の戦争、ベトナム戦争なのであります。
それだけでもメッセージ性の強さがうかがえます。
大きく2つのパートに分かれる
「フルメタルジャケット」は、大きく二つのパートに分かれます。
訓練兵時代のパートと、戦地でのパートです。
訓練パート
訓練パートでは、ハートマン軍曹というアイコニックなキャラクターが登場します。
思いつく限りの罵詈雑言を訓練兵たちに浴びせる様が、いきすぎてコミカルですらあるため、非常に人気の高いキャラクターです。
彼の暴虐性に耐えかねた訓令兵の一人、レナード・ローレンスのシーンも凄まじい。
戦地に向かう前から、辛い闘いがあるのだというドラマを見せつつ、若者が狂っていく様子を見事に描いています。
戦地パート
さて、厳しい訓練を終え、戦地での生活が始まった主人公。
彼は、報道隊員に任命され、直接闘うことはありませんでした。
そこで目にした兵士たちは、
銃を撃ちまくって微笑んだり
前線へ行きたいと願ったり
立派な戦闘マシーンでした。
しばらく、そのような、ベトナム戦争を楽しんだり、胸を張って闘ったりする兵士の、クレイジーな様子を描きます。
そして、「サーフィンバード」という曲のシーンでその様は最高潮に。
すごいでしょう?この笑顔。
主人公もまた、ネジの外れた戦闘マシーンとなってしまうのか…。
その結末はぜひ映画を観てご確認ください。
ミッキーマウスがやたら出る
「フルメタルジャケット」では、ミッキーマウスが頻出します。
ミッキーマウスマーチの替歌行進の他にも、会議室に置かれたミニチュア、ハートマン軍曹のセリフなど、やたらとミッキーマウスが登場します。
ユニバーサルとウォルト・ディズニーの因縁なのか、ディズニーのプロパガンダ的な側面を揶揄したものなのか…
とにかくキューブリック監督のことですから、きっとキチンと伝えたい思いがあるはずですので、いずれ解明したいと思います。
やっぱりすごいよキューブリック
キューブリック作品は、ストーリーだけでなく、カメラワークも秀逸です。
バイオレンスな内容であるにも関わらず、美しい映像でもってこちらを魅了するので、気持ちがグラグラと動いてしまうのです。
「時計仕掛けのオレンジ」や「シャイニング」も同様ですね。
前線へ駆けるシーン
主人公が、前線へ送り込まれ、前へ進んでいくシーン。
この時、カメラが膝下まで下がり、まるでしゃがみながら同行してるかのような感覚になります。
先日紹介したノーラン監督の「ダンケルク」でも、同じような手法が取られていました。
それを30年以上前から導入していたとは…。やはりすごい監督です。
シンメントリー
キューブリック監督といえば、シンメントリー(左右対称)なカットが有名です。
「フルメタルジャケット」では、主に訓練パートでシンメントリーが観られます。
訓練兵たちが寝泊まりする部屋の無機質でシンメントリーな様子は、冷たさと美しさを感じさせます。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
「フルメタルジャケット」は、大きく2つのパートに分けて、若者が戦闘マシーンへと変わっていく様をリアルに描いた作品でした。
キューブリック監督らしい、ゾッとするような仕掛けもたくさんです!
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