兵器、情報…そして、ハイブリッド戦争の第三の攻撃とは
映画『人間の境界』を鑑賞しました。
ベラルーシ政府が多くの難民をポーランド国境へと移送する「人間兵器」とよばれる策略に巻き込まれた人々の過酷な運命を、難民家族、支援団体、国境警備隊など複数の視点から描き出す群像劇です。
これは、かなりハードな内容。思わず目を背けたくなるような悲惨な出来事を圧倒的なリアリズムで映像化した作品です。
公式サイトのあらすじはこちらです👇
「ベラルーシを経由してポーランド国境を渡れば、安全にヨーロッパに入ることができる」という情報を信じて祖国を脱出した、幼い子どもを連れたシリア人家族。しかし、亡命を求め国境の森までたどり着いた彼らを待ち受けていたのは、武装した国境警備隊だった…。
https://transformer.co.jp/m/ningennokyoukai/
今回の記事では、『人間の境界』を観て学んだことや、日本でも問題になっている難民問題について解説します。
この記事を読むのにオススメな人
・難民問題に興味がある人
・『人間の境界』をこれから観る人
・『人間の境界』を観てもっといろいろなことを知りたくなった人
それでは解説に参りましょう!
ベラルーシとポーランド
ベラルーシとポーランドは、隣国になります。
ベラルーシはロシアとウクライナにも囲まれていますね。
ポーランドはEU加盟国ですが、ベラルーシはそうではありません。
ベラルーシのルカシェンコ大統領は、ヒトラーやプーチンの思想を持つ人物なんです。
ベラルーシでは、1994年以来、ルカシェンコ政権による独裁政治が続いており、「欧州最後の独裁国家」と非難されています。
現在、ヨーロッパで代表的な独裁国家であり、共産主義の名残が最も強く見受けられる国であり、国連人権理事会から人権状況が破滅的な国と評されているのです。
そのため、ベラルーシはポーランドを含めたEU加盟国から経済制裁を受けています。
その経済制裁に対抗する手段として、ベラルーシがとったのは難民を使った攻撃だったというわけです。
ベラルーシやその周辺にいるシリアなどの難民をポーランド国境に連れて行って、送り込むというもの。
難民を受け入れる体裁を取っているポーランドはそれに対し、国境付近の森を立ち入り禁止にし、国境警備隊を設置し、ベラルーシへ送り返す。
ベラルーシはまたポーランドへ送り込む…という最悪のスパイラルが生まれてしまったというわけです。
しかしこの難民を使った「人間兵器」の問題は、ロシア・ウクライナ戦争にて、一応の収束を向かえました。
プーチンから戦争に参加しろと言われて、拒んだことがきっかけで、ウクライナからの移民を受け入れざるをえなくなり、その他の難民受け入れも緩和されたというところでしょうか。
しかし、今なお完全にクリアになったかというとそうでもないんじゃないかな。と思っています。
隠したかったポーランドの闇
表向きは難民を受け入れるといいながら、それを拒んでいたポーランド。
もちろん原因はベラルーシが作っているわけですが、それを国際的に隠していたというのは大きな問題ですよね。
そこで立ち上がったのがアグニエシュカ・ホランド監督だったわけであります。
国境警備隊の若者と、
難民救済グループ、
難民家族、
3つの視点から、さながらドキュメンタリーのように闇を暴きます。
実際に難民だった過去や支援活動家の経験を持つ俳優をキャスティングしているそうです。
なので、本当に見ごたえがあります。
悲しさとか、やりきれなさ、怖さで涙を流したのは久しぶりの経験でしたね…。
また、この映画、驚くことにポーランド政府が出資しているんですよ。
日本ではそういうことがあまりないんですが、ポーランドやヨーロッパの国では、国が映画製作に対して出資をするということはよくあるケースだそうです。
日本でも、是枝裕和監督がそれに向けて活動をしていますね。
川口クルド問題
さて、日本ではあまり移民問題と言われてもピンとこないこもしれませんが、
埼玉県川口市ではクルド人という移民がたくさんいることで問題になっているんです。
特に関西の人はいまいちピンときませんよね。私もそうです。
位置でいうとこんな感じ。
東京都の足立区や板橋区と面した位置関係なんですね。
便利がよく、滞在するにあたって家賃が東京に比べて安価であることでだんだんと集まってきたようです。
およそ15年で、日本で難民申請したトルコ国籍の人は9700人以上といわれており、そのほとんどがクルド人であるといわれています。
トルコ、イラン、イラクなどにまたがった山岳地帯に居住し、ペルシャ語系のクルド語を母語とする民族で、そもそも日本のような町での生活に慣れていないケースが多く、そのことが問題になりがちです。
「川口市民がこんな被害にあった」
という意見がある一方で、
「難民を受け入れないなんて非人道的行為だ」
という意見もあがっている現状。
こればかりは、私自身の目で確かめたことではないので、実際にどのような現状であるのかをよく知った上で意見を持ちたいなと思います。
2023年7月に病院で起こった騒動の様子だけで判断するのは、絶対にやめたいですね。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『人間の境界』について解説しました。
すごく心苦しい内容ですが、観てよかったです。
日本で起こっていることにも、目を向けていきたいね。
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