「あたしホンマは市子って言うねん」
映画『市子』を鑑賞しました。
本作、かなり素晴らしい作品で、日本が抱える問題の一つをテーマにしたものなのですが、ネタバレなしで見どころを語るのがなかなか難しいです…。
今回の記事では、映画を観た後に浮かび上がる疑問や作品の細かな設定、シーンについて解説していきます。
もしまだご覧になっていない方は、一旦劇場で鑑賞してからこのページをご覧ください。
この先、ネタバレ注意です!
無戸籍の人を支援する会
映画に登場した、無戸籍の人を支援する団体ですが、ああいった団体は本当に存在します。
エンドロールの中にも「NPO無戸籍の人を支援する会」がクレジットされていました。
どういった団体なのかというと、戸籍が無い人が住民票やマイナンバー、そして戸籍取得までの手続きを伴走して支援する。
戸籍がない事が理由で病院や学校に行けないなどの問題解決。
どこで生まれ、親が誰なのかわからなかった無戸籍の人を支援し、住民票とマイナンバーそして戸籍の取得の経験をもとに可能な限り迅速に支援する。
といった運動をしているそうです。
どうして無戸籍の人が存在するのかというと…。
何らかの理由で出生届を出されなかったことが一番多い要因になります。
・300日問題で出生届を躊躇する場合
・DV被害で避難中の出産で居場所を知られることを恐れる、
・望まない妊娠で病院に行かず自宅出産
などが、主に出生届を出されなかった理由になるそうです。
映画の中で市子は300日問題だろうと言われていたね。
妻が元夫との離婚後300日以内に子どもを出産した場合、その子どもは民法上元夫の子と推定されるため、実際には子どもの血縁上の父と元夫とが異なっていたとしても、原則として元夫を父とする出生の届出しか受理してもらうことができず、戸籍上も元夫の子どもとして扱われることになるという問題、あるいは、このような戸籍上の扱いを避けるために、母が子どもの出生の届出をしないことによって、子どもが戸籍に記載されず無戸籍になっているという問題のことです。
https://gifu.adire.jp/column/573/
また、映画ではこのあたりには触れていませんが、その他にも無戸籍の理由があります。
・出生後母親の母国に出生届が出されていない
・戦争被害者(満州からの帰国者の登録漏れなど)
・人身売買被害(強制労働の為密航させられるなど)
などなど。
近年、マイナンバー制度の施行にともない無戸籍の人が想定よりも多数存在することが明らかとなり、問題となっているそうです。
このあたりが、映画を作るきっかけになったのかもしれませんね。
市子(イチコ)
「市子」という名前も気になるポイントです。
実は「市子」を辞書で調べるとこんな意味があるんですよ。
1 神霊・生き霊 ・死霊 を呪文を唱えて招き寄せ、その意中を語ることを業とする女性。梓巫 。巫女 。口寄せ。
2 神前に奉仕して、神楽を奉納する少女。神楽女。神女。
いわゆるイタコさんみたいな意味ですね。語感も似ています。
死んだ妹の月子に成りすましているあたりに、繋がりを感じますよね。
また、神に仕えるといった、神聖な意味合いを持つ名前であることも気になりますし、次のお話にも重なります。
蝉(セミ)
本作では、セミやセミの抜け殻が何度も登場します。
日本では1週間で亡くなってしまう儚いものとして扱われることが多いセミですが、中国では地中から出てきて飛び立つセミは、生き返り、復活、再生の象徴として古くから扱われています。
また、中国の詩において、セミは露しか口にしない清廉な生き物と考えられたので、無欲で清廉なるがゆえに不遇を強いられるメタファーとなっていることもあります。
さらに、古代ギリシアにおいてはアリストテレスが『動物誌』において、セミを「再生と不死の象徴」として扱っています。
といったように、セミは儚い命ではなく、再生や復活、または清廉なものとして考えると、それぞれのシーンが何を伝えたかったのかが見えてくるはずです。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『市子』を深く味わうための3つのポイントを解説しました。
日本が抱える問題を、ドラマチックに描いた素晴らしい作品です。
とても学びが深まるね。
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