白砂のような死んだ脳では、自分で食べるのも無理だ
映画『インフィニティ・プール』を鑑賞しました。
本作は、ブランドン・クローネンバーグ監督の作品です。
あの、ボディホラーの大家、カナダの巨匠、デヴィッド・クローネンバーグの息子さんですね。
前作『ポゼッサー』も、かなり面白かったので、期待を込めて観に行きました。
こりゃあ、観てよかった。2024年に入ってから観たサスペンス・ホラー系の中では、かなり上位に入りました。
どんなお話なの?
妻と共にリゾート地にやってきた売れない作家が、とんでもない出来事に巻き込まれていくお話だよ。公式サイトのあらすじはこんな感じ。
高級リゾート地として知られる孤島を訪れたスランプ中の作家ジェームズは、
https://transformer.co.jp/m/infinitypool/
裕福な資産家の娘である妻のエムとともに、
ここでバカンスを楽しみながら新たな作品のインスピレーションを得ようと考えていた。
ある日、彼の小説の大ファンだという女性ガビに話しかけられたジェームズは、
彼女とその夫に誘われ一緒に食事をすることに。
意気投合した彼らは、観光客は行かないようにと警告されていた敷地外へとドライブに出かける。
それが悪夢の始まりになるとは知らずに……。
今回の記事では、映画『インフィニティ・プール』の見どころや、監督の伝えたかったことについて考察していきます。
ネタバレを含んでいるので、未鑑賞の人は気をつけてね!
ブランドン・クローネンバーグの監督性
冒頭でもお伝えしましたが、『インフィニティ・プール』の監督であるブランドン・クローネンバーグは、巨匠デヴィッド・クローネンバーグの息子です。
ホラー好きの人ならばご存じかもしれませんが、デヴィッド・クローネンバーグは、ボディホラーというジャンルを確立させた、ホラー史において超重要な人物です。
身体の一部が何かに変化する特殊メイクや身体を使った特殊メイクをボディホラーと呼ぶのですが、これが本当にお見事。
CGには出せない、特殊メイクの生々しいねっちょりした雰囲気がたまらないんですよ。
観たくないけど観たくなる。クセになっちゃう監督です。
また、セリフで多くを語らないので、ストーリーに抽象性が増し、奇妙で難解に感じる点も特徴です。これがまた、繰り返し観たくなるポイントになっているんですね。
さて、そんな偉大な父を持つ、ブランドン・クローネンバーグ。
父の影響を受け、ここまではホラーテイストの作品を手掛けてきました。
『インフィニティ・プール』も同様です。
近未来的な設定も、父の影響を強く受けていることを感じますね。
とにかく「っぽさ」はめちゃくちゃあるので、どの作品を観ても、昔からのパパバーグファンはそれなりに満足できるはずです。
違いがあるとすれば、ストーリーが分かりやすいところと、アーティスティックで洗練されたような印象が強いところでしょうか。
もう、本作のオープニングとエンドロールなんて、めちゃくちゃカッコいいですよ。
劇中でも、視覚的に刺激が強い映像を使ってきます。トリップ感がえげつない。
あと、子バーグは、顔に特殊メイクを施しがちですね。『アンチヴァイラル』も『ポゼッサー』もそうでした。『インフィニティ・プール』では、奇妙なお面が何度も登場します。顔に対する執着が異常に強いです。
パパバーグは、ボディホラーや奇抜な設定でもって、鑑賞者を満足させてやるという使命を熱く貫いてきた。
子バーグは、父の意志を引き継ぎつつ、さらにアーティスティックな刺激を加えてやるというチャレンジ精神を感じますね。
ミア・ゴスの演技が強烈
主要キャラクターとして出演するミア・ゴス。
A24のホラー『X』と『Pearl』の怪演で注目を集めた彼女。
本作ではさらに一つ殻を破ったように思います。凄まじい演技です。
初めは妖艶な雰囲気で、ええやんええやんって感じで鼻の下を伸ばしてしまうのですが…、
映画が進むにつれてどんどん激しい人物に変わっていく。
セクシーな魅力と、ヴァイオレンスな演技力の両方を見せつけてくれます。
間違いなく本作のベストアクターです。
アレクサンダー・スカルスガルドにも注目
主演のアレクサンダー・スカルスガルドにも注目です。
彼は、『ノースマン』で暴れまわる主人公のアムレートを演じているんですよ。
だから、アクションが相当できるはずです。
でも、今回はそれを封印して、演技力で勝負にきました。
身体も、筋骨隆々ではなく、作家としてありえそうなスマートな見た目に絞っています。
むしろ、頼りないというか、弱弱しいというか、赤ちゃんみたいな表情まで見せてくれます。
彼の役どころに関しては、上品ぶったり、凶暴になったり、弱弱しくなったりと、コロコロと変化していくので、とても見ごたえがありますよ!
『インフィニティ・プール』で伝えたかったこと
ブランドン・クローネンバーグが本作で伝えたかったことは、ヒエラルキーでしょう。
何をしても許されてしまう、ヒエラルキーのてっぺんにいる人物。
こういった社会問題に対するメッセージがこの奇抜なSFの中に込められているのです。
こういった、階級の分断や逆転のようなものを描く作品が、近年ちょっとしたブームになっています。
『逆転のトライアングル』とか『ザ・メニュー』なんかもそうですね。
金持ちが痛い目に合う映画です。「イートザリッチ(金持ち喰い)映画」と呼ばれます。
上記の作品と同じようなタイミングで北米では公開されたので、ひとつムーブメントに乗っかるかたちにはなったんでしょうね。
それだけ、映画の作り手や鑑賞者にとっても関心の高いテーマだといえます。
『インフィニティ・プール』は、主人公だけ痛い目にあって、他の富豪どもはバッドエンドになりませんでしたが、おぞましさとか不平等感を訴えるには十分だと思います。
『インフィニティ・プール』では、人を殺しても金さえ払えば自分のクローンを作って逃れることができるという設定で、この金持ちや偉いやつは何をやっても許されるという社会構造を描いたというわけです。
高校とか大学でも、同じようなことが言えますよね。あいつは許されるのに…。みたいな。
そういったメッセージに加えて、自分が死刑されるところを見るとどんな気持ちになるのかとか、同じ事実を共有したものが集まるとどういったことになるのか、どんな罪も許されると分かると人はどのように変わっていくのか…といった倫理観に迫ることができるのも本作の魅力です。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『インフィニティ・プール』の見どころや解説をお届けしました。
ブランドン・クローネンバーグの次回作も楽しみです!
またこの刺激を味わいたいよね…。
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