最もタフで、最も強く、最も成功し、頂点に立てば、誰もお前たちを傷つけない
映画『アイアンクロー』を鑑賞しました。
本作は気鋭の映画スタジオA24の作品で、私も注目していた作品です。
いやー、これは刺さりましたね。『アフターサン』以来の、感情の持っていき方が難しい、切ない気持ちで満たされる映画でした。
今回の記事では、映画『アイアンクロー』の見どころや感想をお伝えした後に、「呪われた一家」と呼ばれたそのエリック家の呪いについて解説していたいと思います。
公式サイトのあらすじはこちら!
1980年初頭、プロレス界に歴史を刻んだ“鉄の爪”フォン・エリック家。父フリッツ(ホルト・マッキャラニー)は元AWA世界ヘビー級王者。そんな父親に育てられた息子の次男ケビン(ザック・エフロン)、三男デビッド(ハリス・ディキンソン)、四男ケリー(ジェレミー・アレン・ホワイト)、五男マイク(スタンリー・シモンズ)ら兄弟は、父の教えに従いレスラーとしてデビュー、“プロレス界の頂点”を目指す。しかし、デビッドが日本でのプロレスツアー中に急死する。さらにフォン・エリック家はここから悲劇に見舞われる。すでに幼い頃に長男ジャックJr.を亡くしており、いつしか「呪われた一家」と呼ばれるようになったその真実と、ケビンの数奇な運命とは――
https://ironclaw.jp/#story
感想・見どころ
初めに、私の感想と見どころから。
おそらく、今A24に注目しているような若い世代の人たちは、プロレスにはあまり関心のない人が多いのではないでしょうか。
30代の私も同様です。
まず、そのあたりからお話しようと思います。
私と鉄の爪
『アイアンクロー』というタイトルは、フリッツ・フォン・エリックの得意技からきています。
相手のおでこや頭を握力で強く握る技です。
正直、プロレス自体実際には目にしたことがありませんが、
私は小さい頃に、遊びで父からこの技をかけられた記憶があります。
「アイアンクロー!鉄の爪!」
と言われながら、キャッキャッとプレロスごっこのようなことをして遊んだ経験があります。
もちろん、小さかった頃の私は「アイアンクロー」が誰の技だったのか知りませんでした。
そして、映画『アイアンクロー』の中では、息子たちの活躍を主に描いています。
「アイアンクロー鉄の爪」といえば、エリック家の誰が有名だったのか。一番活躍したエリック家の人物は誰だったのか。
父はプロレス全盛期を知っている世代なので、鑑賞後に父に尋ねてみました。
エリック家って誰が一番有名だったん?
息子達はクリーンファイター然として、凄みは感じなかった。何と言っても親父のフリッツ・フォン・エリックが最高やったな。
パンパンのTシャツ一枚で登場してデカい鼻と大声で喚いて眼光鋭く日本人を虫ケラ見たいに見下した仕草は圧巻やったな。
ドイツ系米人でアングロサクソンが優秀民族の象徴やと信じて黒人系とはファイトしない。…この辺のエピソードは昔の漫画のジャイアント台風で読んだかな。
握力も凄かった。リングの外で血だらけの顔面をクローで掴んだまま、片手で引っ張り上げてロープの上段越しにリング内に引きずり込んだ力は相当やったな。
とのことでした。流石はど世代!
日本では、父親のフリッツが最も有名だったようですね。
私がかけられた「アイアンクロー」はフリッツを意識したものだったと分かりました笑
映画の中では、父はチャンピオンになれず、今一つの成績で現役を去ったように見えましたが、実はそうじゃなかったみたいです。
フリッツ・フォン・エリックは、AWA世界ヘビー級王者に輝くなど、様々な成績を残しているのです。
しかしながら、1970年代後半から80年代前半は、NWA世界ヘビー級王座が世界最高峰とされた時代。
当時チャンピオンだったハーリー・レイス、リック・フレアーが盤石な強さを誇っており、フリッツは自らが巻いたことのないNWAのベルトを息子たちに獲らせようと、プロモーターとして、子どもたちを育成するのでありました。
感想・見どころ
さて、この映画の感想ですが、もう切なさが溢れ出る素晴らしい作品といえるでしょう。
かなり私の心に刺さるタイプの映画でした。
まさか、プロレスのようなエンタメ性溢れる世界に、このような側面があったとは…。
泣けますよこれは。2024年ベスト級です。『オッペンハイマー』より心に残っちゃったかも。
悲劇の描き方がもう、抜群です。
兄弟たちが摩耗していくすがたにこちらの心も擦り減っていきます。
また、俳優陣の演技やアプローチも目を見張るものがあります。
あのアイドルみたいなザック・エフロンがここまでバキバキに鍛え上げることにも驚きですが、やはりその話題に引けを取らない役への没入感。
ケリーを演じたジェレミー・アレン・ホワイトの復帰に向けたトレーニングシーンなんて、目を背けたくなるほどだったし、
デビッドを演じたハリス・ディキンソンのタイトル戦まえの緊迫感と絶望感も、
正しく鬼気迫る演技でした。
エリック家の呪い
それではここから、エリック家がなぜ「呪われた一家」と呼ばれたのかを考察していきます。
エリック家はフリッツ・フォン・エリックの息子たちが次々と亡くなっていることから、「呪われた一家」と呼ばれています。
長男ジャックjrを幼くして亡くしており、
三男デビッドが世界ヘビー級への王座決定戦へ指名を受けた直後、日本でのプロレスツアー中に急死、
四男ケリー、五男マイク、はそれぞれ自殺しています。
また、映画では描かれていませんが、六男のクリスという息子も存在し、ピストルで自殺しています。
このように、レスラーとして活躍した兄弟のうち4人がわずか10年の間に相次いで病死、自殺などで怪死しているのです…。
その呪いの正体とは一体何だったのか。考えていきたいと思います。
父フリッツの呪い
やはり呪いの正体、死の連鎖は、父親による影響があるのではないかと思います。
自分が果たせなかった夢を息子たちを使って達成させる。
そして父として以外に、プロモーターという立場がそれをさらに強制的で執拗なものにさせてしまっていたのでしょう。
「有望性1位はケリー、次にデビッド、3位がケビン…」
と、我が子たちをランク付けしてしまうのは、父親としてはあまりに残酷。
しかし、そんな父を息子たちは愛していた。
父とプロレスを信じてしまったからこそ、エリック兄弟たちは悲劇的な死を遂げてしまったのでしょう。
ドラッグの呪い
映画でも何度か描かれていましたが、エリック兄弟たちはステロイド剤を多用しています。
これも、父フリッツの勧めだったとか。
ステロイドの常用は、ドラッグへのゲートウェイになってしまうことがしばしば。
エリック兄弟たちはおそらく、ドラッグ中毒だったはずです。
デビッドの死の原因である内臓疾患も、ドラッグが原因であると言われていますし、
ケリーに関してはコカインの所持で捕まったこともあります。彼は左足切断の痛みとショックから、コカインを手放せなくなってしまったそうです。
度重なる自殺、変死の背景には、ドラッグの影響も大きかったのではないでしょうか…。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『アイアンクロー』の見どころや感想、エリック家の呪いの正体について解説しました。
素晴らしい作品ですが、元気な時に観てください。
ショッキングな内容だもんね。
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