誰でも手に入るものを、幸せというのよ。
映画「怪物」を鑑賞してきました。
かなりの衝撃。
ガツンときました。
是枝監督作の全てに言えることですが、知ってたいなぁ、たくさんの人に知ってほしいなぁという現実的な問題をまざまざと見せつけられたような印象です。
今回の記事では、「怪物」を観た感想と、私なりの解説をお伝えします。
ネタバレを含んだ内容となりますので、ぜひ映画鑑賞後にお読みください!
これから観られる方はぜひこちらのネタバレなし解説を👇
田舎と学校の閉鎖的文化
今作は決して都会とはいえない港町が舞台です。
町全体が噂で溢れ、よそ者には優しくない雰囲気が漂っています。
永山瑛太さん演じる保利は、その犠牲者といえるでしょう。
また、保利や麦野家の問題が大きくなってしまった最大の要因が、学校現場の閉塞感にあります。
アクシデントを、できるだけ表に出したくない、大事にしたくないという体制によって、自体が大きくなってしまいます。
しかしこれは、学校現場のみならず、企業や個人、家庭に置き換えても、同じなのかもしれません。
世の中に溢れる隠蔽体質のようなものの愚かさに対するメッセージがこもっているように感じました。
複数部構成の面白さ
今作は、是枝監督作には珍しく、複数の構成によって進む作品でした。
物語を、複数の人物の視点で行ったり来たりすることで、最終的に事の真相がわかるような作りになっています。
終盤に向かうにつれて、「そういうことだったのか」と謎解き的な心地よさを感じることができます。
是枝監督らしい、人間ドラマやメッセージを味わいつつ、謎解きも楽しめるというのは、今作の魅力のひとつともいえるでしょう。
ミスリードを誘う仕掛け
「怪物」は上述のように、徐々に真相がわかっていくような作りになっています。
真相に至るまでに、様々な仕掛けがあり、中にはこちらのミスリードを誘うようなものもあるのが非常に面白い。
例えば、中村獅童さん演じる依里の父親の「あいつは怪物ですよ」という意味深な発言。
また、依里が書いた文字が書鏡文字になっているシーンがございます。
これらを観ると、「依里はLDやASDなどの発達障害児なのだ」という印象を受けます。
そういった要因で、同級生からからかいの対象になっているのではないかと推察する。
しかし、子どもたちが持つ最大のキーポイントはそこではないということが、物語の中盤以降に明らかになってきます。
クィア・パルム賞の理由
さて、それでは「怪物」における最大のキーポイントは何であるのか。
それは、今作がカンヌ国際映画祭の独立賞のひとつ、クィア・パルム賞を受賞しているという点から答えることができます。
クィア・パルム賞は、LGBTやクィアをテーマにした映画に与えられる賞です。
つまり「怪物」は、LGBTQに関するメッセージが詰まっている作品ということ。
少年二人に対する、母や父、担任教師からの何気ない言葉が、無意識の攻撃になってしまっているということですね。
また、テレビでおねえタレントが笑いの的になっているのも、日本人の鈍感さを描いていましたね。
いやー、これは素晴らしいです。
老若男女問わず、色んな人に観ていただきたい映画だと思いました。
慎重に、様々な可能性を考慮しながら発言したり行動したりしていかねばなと教えられました。
そうしなければ、あなたも私も、誰かにとって「怪物」になってしまうかもしれない。
誰でも手に入るものを、幸せというのよ。
という田中裕子さん演じる校長先生のセリフは、多様性が受け入れられやすい世の中になってほしいという思いがこめられているのではないでしょうか。
「怪物」とは何か
今作において「怪物」とは何を指すかを考えながら観ると、より味わいが深まります。
いったい「怪物」とは何か。登場人物それぞれの視線を通した「怪物」探しの果てに、私たちは何を見るのか。
映画公式サイトより引用
少年にとっては、自分たちの生き方や考え方を理解せず、男は男らしくと言っている大人たちが「怪物」であり、
大人にとっては、問題を起こす子どもたちやそれを隠そうとする学校の隠蔽体質が「怪物」であると…。
私はそのように推察しました。
消しゴムの意味
今作では消しゴムが何度も登場します。
湊が宿題中に落とした消しゴムを拾わないシーンや、教室の机をゴシゴシと消そうとする子どもなど。
これは今作のメッセージの一つである、自身の上書き、生まれ変わりを示唆しています。
湊は「生まれ変わったら…」という発言を劇中何度も繰り返します。
消しゴムを拾えないシーンは、変わりたい思いや、自分の本当の気持ちを伝えたい思いで揺れていることを表してるのではないでしょうか。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画「怪物」の解説記事をお届けしました!
謎解きを味わいながら、とっても大事なことを教わることができる、大変すばらしい作品です。
この映画が、広く観られることを願います。
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