『カオルの葬式』愛も憎しみも込み上げる

コメディ映画

亡くなったからこそ愛憎ふりかえる

カオルの葬式』をWeb試写会にて鑑賞しました。

第19回大阪アジアン映画祭にてJAPAN CUTS Award、ダッカ国際映画祭で最優秀脚本賞を受賞した作品です。

別れた妻が亡くなり、その喪主を務めるべく岡山県の山村の寺へ赴くというストーリー。

ただお葬式の様子を辿るようなしっとりした感動ドラマではなく、『カオルの葬式』は、ダークコメディ ×「不謹慎エンターテインメント」として、混沌とカオスを描いた作品なんです。

bitotabi
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近年では、なかなか異色な作品ですよね!感想をお伝えしていきます。

ダニー
ダニー

ストーリーの結末に関するネタバレはないから安心して読んでね!

監督は『狂い華』『青春カレイドスコープ』の湯浅典子

キャストには、朝ドラ『カムカムエヴリバディ』の新津ちせや、名バイプレイヤーである足立智充が顔を揃えています。

岡山県にある寺を舞台に、昔からの風習が残る葬儀と、今を生きる人々の様子を描き、製作にスペインやシンガポールのスタッフも参加した国際共同製作作品となります。

この映画、田舎で昔ながらの葬式を執り行うということで、すっごく現代っぽさがないんです。昭和以前の日本のような、そんな感じ。

どことなく、相米慎二や、伊丹十三の作品にリスペクトを込めた雰囲気を感じずにはいられませんでえした。

テーマが同じことから伊丹十三の『お葬式』はもちろんのこと、中盤以降の展開は相米慎二の『お引越し』のような少し不思議な世界観も併せ持っていました。

まずは、葬式というテーマに沿って、ストーリーの感想を述べていきます。

娘を残し、若くして亡くなった女性。

亡くなったからこそ、思い出すことや気づいたことがある一方で、葬式独特のあの空気感。

飲んだり騒いだり、誰かを茶化したり。参列者に色めき立ったり。それが何ともリアルで面白いんですよ。

直近の親族で無ければ、案外そんなもんだし、何だったら同窓会的な盛り上がりもみせてしまうというか。

bitotabi
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私は葬式が割と好きなんです。

ネガティブな思いが溢れにくいような気がするからです。

結婚式だと、「これからどうなっていくんだろ」「離婚しないといいな」「新郎の父親禿げてるな。じゃあ新郎も…」とか、いろいろ考えちゃうからです。

これからも頑張っていかければならないような。そんな少し重い空気を感じます。

でも、葬式は、結婚式と違って、もう終わり。亡くなった人にとっては、不安なものは何一つないわけです。だって、亡くなってますから。

で、参列者の方は、その人との思い出を振り返る。

死んだ人に対して、悪い風に考えるってことはほとんどないように思うんですよね。そもそも、嫌いな相手だったら、行かなくていいわけだし。

知ってる人と会ったら、「あの人とこんなことしたよね」という会話をして、その後「ところで最近何してんの?」「今度またゆっくり話そうよ」みたいな、比較的しっとりと明るい話題ができると思っているんですよ。

しかし、『カオルの葬式』では、そんな私の考えとは違う部分も描いていました。そのあたりが冒頭にお伝えした「不謹慎エンターテインメント」と表される由縁なのかなと。

 



ストーリー以外のところで感想を申し上げますと、カメラワークが面白くて退屈しないなという印象を受けました。

下から見上げるようなポジションや、上から見下ろすようなポジションがとっても面白い。

新津ちせ演じる娘が、遺体を見下ろすカット。生きてる娘が見下ろしているのか、それとも遺体となった母が見上げているのか。何ともいえないような素晴らしいショットです。

また、岡山をロケ地に据えているだけあって、自然を派手に映すカメラもいい。

ドローンを使っているであろう臨場感と動きのある映像は、アクション映画にも引けを取らないものです。

強いて言えば、せっかく日本の古き良きの建物を舞台にしていて、その中をたくさん映すシーンが多かったので、小津調のような定点で部屋の隅から撮るようなカットも観てみたかったなと思いました。

ダニー
ダニー

最後までお読みいただきありがとうございます!

bitotabi
bitotabi

今後も順次ミニシアターで上映されるようなので、ぜひ劇場でご鑑賞ください。

 

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