『桐島、部活やめるってよ』持たざる者はどちらか

ドラマ映画

俺は、俺はいいよ

映画『桐島、部活やめるってよ』をAmazon Prime Videoで鑑賞しました。

一応二度目の鑑賞なのですが、一度とはかなり印象が変わりました。

というのも、前回私が鑑賞したのは10年以上前。

20代前半でした。社会人ではあったものの、どちらかというとまだまだ学生気分の抜けてない年代。

加えて映画も今ほどは好きじゃなかったし、知識もありませんでした。

すごい作品らしいけど、なんだ、よく分かんないな。これで終わり?

なんだか肩透かしをくらったような。そんな感想を持ったのが一度目

しかし、10年の時を経て観た今回二度目

ラストはもう泣けちゃいましたね。東出君と一緒に。

少なからず、そういう人、いるんじゃないでしょうか。

bitotabi
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そこで、今回の記事では、『桐島、部活やめるってよ』の凄さを語っていこうと思います。

ダニー
ダニー

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・『桐島部活やめるってよ』をこれから観たけどよく分からなかった人

・『桐島部活やめるってよ』のどこが凄い作品なのか知りたい人

・『桐島部活やめるってよ』は好きな作品だけどもう少し踏み込んで考えてみたい人

ザックリとしたあらすじ

一応、『桐島、部活やめるってよ』のあらすじをザックリ解説しておきます。

舞台は、とある高校。

2年生の主人公たち。いつもと変わらない金曜日にふと違った出来事が二つ。

HRで、進路希望用紙が担任の先生から配られる。ボチボチ進路について考えなければならない。

そして、もう一つ。「桐島」が部活を辞めるらしいという噂が流れている。当の桐島は学校を休んでいるようだ。

バレー部のキャプテンで県の選抜にも選ばれているほどの桐島。顔もよくてモテモテの桐島。スクールカーストの頂点にいる桐島。

そんな桐島が部活を辞め、学校にも来ない。一体どういうどういうことなのか…。

というのが主なストーリーです。

この桐島がいなくなった数日間を、いくつかの生徒の目線で描きます。

で、このいくつかの生徒の目線も大きく二つに分かれるのかなと思っています。

 



宏樹サイド

一つ目は東出昌大さん演じる宏樹サイド。

桐島がいなくなったことで大慌てしている側ですね。宏樹の連れというか取り巻きというかそんな人たちはここに入るんじゃないかと思います。(しかし宏樹だけは取り巻きとはちょっと違った段階にいるので、それについては後ほど)

親友だったということで、一番動揺しているのがこの宏樹です。

この宏樹サイドの人間というのは、いわゆるスクールカーストの上位層にいる人間。

目立つ子とか、一部の運動部ですね。

彼らを観る上で重要なのが、本音を声に出していうことがほとんどないということなんですね。

高校生の頃って、絶妙にこういう夢を語ったり、思っていることをぶちまけたりするのってカッコ悪いものだと思っていませんでした?

この現実と同じような感覚を、映画の中でもやっちゃってるから、本作はすごいんだろうなと思うんです。

普通の青春群像劇だったら、言っちゃうようなセリフを、決して言わない。

bitotabi
bitotabi

当時の私は、それ故によく分からなかったのだと思います。

気を使いまくってるんですね。

原作小説には、「人間関係は、ガラス細工のようなものだ」という一節がありました。

正にそういったことを映画で表しているのでしょう。

ちなみに原作小説は一人一人の内面がしっかり書かれています。真逆なんですよね。

 



前田サイド

で、もう一つが前田サイド。

神木隆之介さんが演じている映画部の子です。前野 朋哉さん演じる武文と野球部のキャプテン、そして吹奏楽部の実果もここに入るのかなと思います。

彼らは、桐島がいなくなっても、何も変わらないんです。

ただ、自分の好きな部活動を、懸命にやるだけ。実果は恋路が絡んでいますが。あれもただ自分の好きな気持ちを大切にしているだけだろうと思います。

 



どちらが持たざる者か

この映画は、どちらかというと東出昌大さん演じる宏樹の心の動きをメインに描いている気がします。

少なくとも、私が一番感動したのはそこでした。

運動もできて、顔が良いから可愛い彼女もいて、勉強もできる。

それだけど、なにか虚無感を感じている。

同じような性質を持っていた桐島がいなくなったことをきっかけに、自分が何のために生きているのかが分からなくなってしまったんですね。

理想の高校生活の象徴のような存在である桐島。彼がいなくなったことで、周りの生徒たちも大慌て。

そして、それと反するように、前田サイドを映画は描く。

映画作りが好きで仕方がない前田。

野球部のキャプテンもまた、野球が好きで仕方がないのだということが分かる。

吹奏楽部のあの子にも出会う。

そして、そういったクッションを挟んで、ラストで前田と宏樹は話すわけですね。

前田が好きな映画について。

監督を目指しているわけじゃなく、好きだから、嬉しいから、たまらないからやってんだと。

しかし、宏樹は、それと比較できるような自分の「好き」や「生きる意味」を持っていない。

宏樹は何もかも持っているはずの自分よりも、ずっと達観したところにいるのかもしれない。

ラストの涙はそういった気持ちが溢れてしまったのではないかと思います。

何でも持っているリア充と「好き」を見つけている非リア充。

夢を持っているのはどっちでしょう?

 



その他の視点

本作では、宏樹たちサイドでありながら、徹底できない登場人物たちもいます。

バドミントン部の女の子や、バレー部のリベロの子ですね。

バドミントン部の女の子は周りに合わせてはいるけど、譲れない気持ちとか、好きなものは見つかっているけど、ある一定の線を引いている。もしかすると、一番共感しやすい子なのかもしれません。

リベロの子は、桐島の控えだったから、いなくなって出ることができるようになるんですが、この葛藤が辛い。原作小説はより心情を分かりやすく描いていますよ。

あと、前田たち映画部は、ゾンビ映画を撮っていますよね。

ジョージ・A・ロメロが好きで。

ロメロのゾンビ映画は、社会風刺的なメッセージを込めて作られています。消費社会や戦争に対するメッセージを。

ただただ群れをなすゾンビを、愚かな人間のメタファーとして描くことが多いんですよね。

で、本作では松岡茉優が一番のゾンビだったんじゃないかと。

また演技が上手すぎて、嫌な感じとか愚かしい感じがドロッと出てていいんですよね。

それから、屋上から誰か生徒が飛び降りるシーンがあるんですが、あれは桐島じゃないみたいです。

「そんなことより、桐島いるらしいぞ!」という愚かさをまた、描いた演出だろうと思います。

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます!

映画『桐島、部活やめるってよ』について解説しました。

bitotabi
bitotabi

再鑑賞して本当によかった。傑作です。

ダニー
ダニー

これは、大人の方が刺さっちゃうね。

 

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