今なお、メキシコでは年間約6万件の誘拐事件が。
報復を恐れず 誘拐ビジネスの闇に迫った 勇気と希望の作品。
映画「母の聖戦」を鑑賞しました。
中米のメキシコでは、年間約6万件にもおよぶ誘拐事件が頻発しています。
犯罪組織による誘拐ビジネスに対し、被害者家族は報復を恐れて泣き寝入りすることがほとんど。
一人の女性が監督自身に胸の内を打ち明けたことから作られた、実話がベースの今作。
すごく恐いね…。
今回の記事では、メキシコの誘拐ビジネスの闇に立ち向かう勇気ある映画から得た学びをお伝えします。
この映画を観たならば、実態を知ることが、大切です。
STORY
メキシコ北部の町で暮らすシングルマザー、シエロのひとり娘である十代の少女ラウラが犯罪組織に誘拐された。冷酷な脅迫者の要求に従い、20万ペソの身代金を支払っても、ラウラは帰ってこない。警察に相談しても相手にしてもらえないシエロは、自力で娘を取り戻すことを胸に誓い、犯罪組織の調査に乗り出す。そのさなか、軍のパトロール部隊を率いるラマルケ中尉と協力関係を結び、組織に関する情報を提供したシエロは、誘拐ビジネスの闇の血生臭い実態を目の当たりにしていく。人生観が一変するほどのおぞましい経験に打ち震えながらも、行方知れずの最愛の娘を捜し続けるシエロは、いかなる真実をたぐり寄せるのか……。
オフィシャルサイトより引用
まずは、監督がこの作品を作るに至ったきっかけからお伝えします。
映画を作ったきっかけ
今作を作ったきっかけは、ミリアム・ロドリゲスというメキシコ人の女性が監督に打ち明けたことから始まります。
監督は危険な環境で青春を過ごす若者のドキュメンタリーを企画していました。
そんな最中、知人からの紹介を受け、彼女と出会います。
彼女は、「朝目が覚めると、この拳銃で自殺するか、誰かを殺すか考えてしまう」と言うのです。
一見普通の主婦のように見える彼女がなぜそのような暴力性をもってしまったのか。
彼女は、主人公シエロと非常に似た経験をして、それが本作の基になっています。
当初は、彼女自身に密着し、捜索の様子を撮影したドキュメンタリー映画にするつもりだったそうです。
危険すぎる撮影
ですが、その地域で撮影することの危険さや、検閲の厳しさなど、超えるべきハードルの高さを知り、2年半リサーチした資料を基にしたフィクションとして作ることを決断しました。
実際に、監督が感じた危険は本物でした。
なんと、そのメキシコ人女性は、2017年5月10日、自宅の目の前で殺されたそうです。
とても残酷なすがたで。
その日は、メキシコにおける、母の日でした。
亡くなった彼女への思いを込め、そして、同じような被害に合う人々に対し、この映画が少しでもポジティブな変化をもたらすきっかけとなることを願って。
この映画は公開されました。
ラストに注目
実際には報復を受け、亡くなってしまったミリアム・ロドリゲス。
しかし、監督はその最後の最後までは映画に表さなかったといいます。
そのため、ラストシーンの解釈は、観客である我々に委ねるとインタビューで答えていました。
あなたはあのラストを、表情を、どう受けとめましたか?
誘拐の理由
私はこの映画を観るにあたって、
「どうしてメキシコで誘拐事件が多発しているのか」
その理由が気になりました。
私が調べたところによると、身代金と、売春させることなどが目的だということです。
もちろん映画でも、そういった描写が観られました。
ではなぜ、そんな悪質な誘拐事件が、多発しているのでしょうか。
多発する理由
多発する理由は、ずばり、犯罪組織が捕まらないからです。
主に、誘拐をする犯罪組織というのは、麻薬カルテルとイコールである場合がほとんど。
そしてメキシコにおいて、麻薬が生み出す利益は、とても大きいのです。
アメリカを中心とした諸外国に向けて、多くの取引があるとか。
そのため、メキシコでは組織と政治家、軍人、警察らとが癒着しているのはよくあることなのです。
実際、2020年10月にメキシコのサルバドル・シエンフエゴス前国防相が麻薬取締局に逮捕され、世間を騒がせました。
繋がりがあるので、被害者が警察へ相談しても組織へその情報が流れてしまう。
結果、誰にも相談できず、言われるがままに金を渡すしかない。
だから、逮捕されることなく、いつまでも誘拐事件が続くのであります。
この映画は、そんな被害者たちの悲痛な叫びを映像化した、本当に勇気ある作品なのです。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
「母の聖戦」の見どころと、メキシコにおける誘拐事件の実態について解説しました。
ちなみにこちら、カンヌ国際映画祭のある視点部門、勇気賞を獲得しています。
とても納得。
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