映画「LAMB」を鑑賞しました。
「ミッドサマー」「ライトハウス」「ヘレディタリー」「エックス」など、インパクトの強いホラー作品を多く手がけることで話題の『A24』の製作。
ただの牧歌的映画ではないことは、予告を観ればわかる。
絶対やばそうな雰囲気ムンムンのこちらの映画について解説します!
ネタバレを含みますので、ご注意ください。
考察が楽しい映画なので、真っ新な気持ちで観たい方は、下記の59秒特報予告のみに留めておくことをオススメします。
本予告すらややネタバレ風味なので笑
STORY
話題作を次々と世に送り出す気鋭の製作・配給会社「A24」が北米配給権を獲得し、カンヌ国際映画祭で上映されるやいなや観客を騒然とさせた衝撃の話題作がついに日本上陸!
https://klockworx-v.com/lamb/
ある日、アイスランドで暮らす羊飼いの夫婦が羊の出産に立ち会うと、羊ではない“何か”の誕生を目撃する。2人はその存在をアダと名付け育て始めるが——。
主演・製作総指揮を務めるのは『プロメテウス』、『ミレニアム』シリーズで知られるノオミ・ラパス。監督は、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などの特殊効果を担当、本作が長編デビューとなる北欧の新たな才能ヴァルディミール・ヨハンソン。衝撃的な設定の中にもリアリティを持った世界観を構築したことで世界から称賛を浴び、第74回カンヌ国際映画祭のある視点部門で《Prize of Originality》を受賞、アカデミー賞®国際長編部門アイスランド代表作品にも選出されるなど批評家からも高い評価を受けた。
その存在はなぜ産まれてしまったのか?前代未聞の衝撃展開が、あなたの想像力を刺激するー。
宗教的な思想が込められた作品なのか、それとも倫理的な問題を指摘する作品なのか…。
詳しく解説していきましょう!以下、ネタバレ注意です!!
45分間謎のまま
映画が始まって45分間、アダの正体はおろか、名前すら不明のまま進みます。
羊から、羊ではない何かが生まれたということだけはわかりますが、その正体や全体像はなかなか映りません。
とってもじらされます笑
これがまた、不気味さや、こちらのイマジネーションを掻き立てられる要因となっています。
神の子羊
「LAMB」には、宗教的なメッセージが込められているように思いました。
キリスト教の考え方の一つに「神の子羊」というものがあります。
「神の子羊」はイエス・キリストを指す表現のひとつです。
作中にはアダが生まれたことに対して、「神様からの贈り物」というセリフも見られました。
また、主人公である妻の名前は「マリア」となっています。
さらに、羊飼いという職業も「労働者」の象徴として、聖書によく登場します。
ディンマリンのおはなし
映画の中で「ディンマリンのおはなし」という絵本をアダに読み聞かせるシーンがあります。
「ディンマリンのおはなし」は…
昔あるところに、ディンマリンという小さな、やさしくて気立てのいい、素直なお姫さまがいました。ある日お城の外にで、一羽の白鳥と出会って仲良くなりますが、数日後その白鳥が死んでしまいます。ディンマリンは死んだ後も白鳥を思い続けました。すると、一人の王子様があらわれます。実は魔法をかけられ白鳥にされたていたのでした。そして二人は結婚します。めでたしめでたし。
という内容です。
子どもを亡くした二人は、もしかするとアダがいつしか人間になったり、人間と同じように育ったりすることを願っていたのかもしれません。
新しい神話
バルディミール・ヨハンソン監督は、インタビューの中で、「新しい神話」を作りたかったと述べています。
確かに「LAMB」は大変メルヘンチックな要素があり、昔話や寓話、神話的な雰囲気を強く感じます。
記者:
https://eiga.com/news/20220923/4/
シュルレアリズム的とも言える設定に驚かされます。特にアダの存在、そしてラストは脚本家ショーンや監督のアイデアなのでしょうか? それとも羊にまつわる神話や伝説などがアイスランドにあるのか教えてください。
バルディミール・ヨハンソン監督:
ショーンと二人で生み出した物語とエンディングです。私たちはいろんな映像や画像を集めて、たとえば私の好きな絵画があったとしたら、それをきっかけにあるシーンを書いてみる、そんなことをたくさん試みました。今回はビジュアルで語る映画にしたかったので、さまざまな資料を参考にしました。アイスランドで羊にまつわる神話のようなものはありませんが、もしかしたら、私たちはある意味で今の時代の新しい神話を作ろうとしていたのかもしれません。
とても納得です。
ラストシーンや随所は、腑に落ちない人もいらっしゃるでしょうが、「桃太郎」や「赤ずきん」に対して「ありえねー!!!」とか「納得いかねー!!」とツッコミを入れることはありませんよね笑
そんな風に観ればよいのかなと思います。
道徳的・寓話的解釈は映画を観た後各々でじっくりと。
エンディングの曲「サラバンド」
「LAMB」のエンディングにはヘンデルの「サラバンド」が使用されています。
この曲が使用された映画といえばスタンリー・キューブリックの「バリー・リンドン」です。
「バリー・リンドン」は野心家の青年、エドモンド・バリーが、いかにして称号を手にしたかを語った作品です。
実在の人物をモデルにしたという説もありますが、伝記風のフィクション映画です。
本当はナポレオンをモデルにした映画を作りたかったそうですが、予算や権利的なハードルを越えられなかったそうです。
完璧主義者のキューブリックですから、そのクオリティは凄まじく、見事に18世紀のヨーロッパを再現しています。
「本当にあった話なのか…?」「実際にいた人物なのか…?」
と錯覚するほどです。
「LAMB」も、先述したように、新たな神話を作ろうと試みた作品であるため、その成功例の一つである、バリー・リンドンを意識したのかもしれません。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
「LAMB」は不思議で不気味な雰囲気ですが、神話を作ろうというチャレンジングな姿勢を感じとれる映画です!
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