人間を作るのが一番難しいんだ
映画『マンティコア 怪物』をシネマートで鑑賞しました。
本作は『マジカル・ガール』のカルロス・ベルムト監督の最新作です。
気になっていた作品だったので、封切日に鑑賞してきました!
なかなか解釈の難しい作品です…。
今回の記事では『マンティコア 怪物』の結末や怪物とは一体何だったのかを私なりに考察してみようと思います。
ネタバレ注意だよ!
作品について
まずは作品について簡単にあらすじや解説をお伝えします。
空想のモンスターを生み出すゲームデザイナーのフリアン。
同僚の誕生日パーティーで美術史を学ぶディアナに出会う。
内気で繊細な性格のフリアンだが、次第に聡明でどこかミステリアスなディアナに魅かれていく。
しかし、フリアンは隣人の少年を火事から救った出来事をきっかけに原因不明のパニック発作に悩んでいた。
やがて彼が抱えるある秘密が、思いもよらぬマンティコア [怪物] を作り出してしまう…。フリアンが自分自身のなかに見たマンティコア [怪物]とは何なのか。
https://www.bitters.co.jp/manticore/
どこか不穏で想像力をかきたてる“見せない演出”は、まるで観客の無意識の底に潜む [欲望] を覗くかのような仕掛けとなる。
もしそれが倫理的に許されない [欲望]ならば――その感情を抱くことは罪なのだろうか?
ともすれば目を背けたくなるタブーなテーマを炙り出し、物語はやがて誰も想像し得ない衝撃の境地にたどり着く――。
というのが公式サイトのあらすじです。
カルロス・ベルムト監督は、大の日本好きで、随所に日本カルチャーが登場します。
出てくる食べ物はほとんど日本食なんですよ。
「伊藤潤二の漫画を買いに行くんだ」という主人公のセリフまで出てきます。
前作『マジカル・ガール』でも、セーラームーンや魔法少女ものを意識した演出がたくさんあり、日本人なら楽しめることは請け合いです!
日本の文化以外にも、ゴヤの『黒い絵』や、映画『ビデオドローム』、『ファンタスティック・プラネット』が登場するなど、監督のセンスがキラリと光る上に、何ともサブカル心をくすぐる仕掛けがったくさんありました。
『マジカル・ガール』は、物語がとんでもないところに行き着く、ピタゴラスイッチのような恐ろしさがある作品ですが、『マンティコア 怪物』も割とそんな感じでしたね。
まさかあんな結末をむかえるとは思いませんでした。
怪物の正体とは
さて、ここから怪物の正体に迫っていこうと思います。
まあ、大まかに捉えると、怪物というのはフリアンのことだと考える人が多いでしょう。
その理由について解説していきますね。
タイトルになっている「マンティコア」
これは、ペルシアの神話上の生き物で、人間のような顔、虎のような胴体、有毒なサソリの尻尾を持つ怪物で、人喰い(マンイーター)と言われています。
主人公フリアンがデザインしていたゲーム用のクリーチャーとそっくりですよね。
さらに、終盤でクリスチャンが壁に貼っていた絵。
虎の身体にフリアンの顔がくっついているという絵でした。
この絵は初めにクリスチャンと話した時に、「虎は人の顔を怖がるんだよ」という会話に繋がっているんですね。
これを観たフリアンは、「無垢な子どもに何をしようとしているんだ」と我に返ると共に、自分が怪物のようになってしまっていることに気づいて投身自殺を図ったというわけですね。
では、やはり「怪物=フリアン及びフリアンの心の闇」ということになるんでしょうか。
私はそれだけではないと思います…!
ディアナについて
フリアンと出会い、やがて恋仲になっていくディアナ。
聡明で可愛らしく、奔放な雰囲気とミステリアスさを合わせ持つ、魅力的な女性でした。
しかし、私は、彼女がかなり怪しいと思うんです。
フリアンをあの状況に追いやったのは、ディアナなのではないかと。
ディアナについて考察していきます。
ディアナに関する考察その①
まず、再会の仕方や接近の仕方が不自然でした。
パーティーの直後、映画館で再会するのですが、
この時フリアンはディアナに声をかけることができません。
しかし、この時ディアナは、フリアンが同じ映画館にいたことに気づいていたらしいんですね。
なんだか意図的にフリアンに近づいていったような違和感があります。
さらに、恋人との食事にフリアンを誘ったディアナ。屁理屈とか嫌味ばかり言う恋人。
ディアナは、明らかにこの恋人とはもう離れたがっている様子です。
フリアンに近づいた理由の一つとして、この恋人と別れるためというねらいがあったのかもしれません。
ディアナに関する考察その②
車での会話から、ディアナの父は、介護が必要で、現在二人暮らしであることが明らかになります。
ここがキーだと思うんです。
ディアナの生活のウエイトを、大きく占めているのが父親の介護です。(あまりしっかり働いている雰囲気もありませんでしたし…)
そんな父親が、亡くなってしまうんですよね。
そのポッカリあいた自分の穴、虚無感を埋めるには、代わりの誰かが必要だ。
それをフリアンにしてしまおう。
そんな風に考えたのではないかと思うんです。
ディアナに関する考察その③
そもそも、フリアンがクリスチャンをCGで作ったことが露呈したのはどうしてだったのでしょうか。
ストーリーを素直に受け止めれば、会社の組織変更のようなものを理由にバレてしまったということですが、果たしてそれは本当なのか。
私はディアナがリークしたんじゃないかなと思うんですよね。
だって、ディアナは、フリアンがクリスチャンをCGで作ったことを知っていましたもん。
なぜ会社の人間ではない彼女が知ることができたのでしょうか。それはチクった本人だからなのではないでしょうか。
本当は、外付けのドライブならバレることは無かったけど、ディアナのリークによって会社に知られることになってしまったのだと私は考えます。
フリアンの上司であり、共通の知人であるサンドラに、このデータを送ったんでしょうね。そう考えると、サンドラの会社でのフリアンに対するあの行動に納得がいきます。(もしくは、サンドラがディアナに事実を伝えたと考えることもできますが)
ディアナに関する考察その④
この考察が正しいと仮定して、さらに突き詰めて考えると、ある恐ろしい事実が浮かび上がってきます。
それは、クリスチャンとフリアンの出会いそのものが、ディアナによって仕組まれたものであったということです。
クリスチャンとフリアンは、クリスチャンの家の火事がきっかけでした。
火事の原因について、クリスチャンは
「カーテンがいきなり燃えた」
と言っていました。
そんなことありますかね…?笑
あの火事自体も、クリスチャンとフリアンを出会わせるためにディアナが画策し、何らかの方法で起こしたものであるという可能性が浮かび上がってきませんか?
ちょっと考えすぎですね笑
怪物の正体の結論!
怪物の正体の結論です。
よからぬものを創造してしまったフリアン。
自尊心のためにフリアンを立ち上がれない状況に追い込んだディアナ。
この二つの怪物が生まれるまでを描いた作品であったと、私は考えます。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『マンティコア 怪物』の考察をお届けしました。
色々な考え方が生まれる作品だと思いますので、あくまで一考察としてとらえていただければと思います。
『マジカル・ガール』みたいに、嫌~な後味が残る作品だったね。
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