和歌山カレー事件。1998年7月25日に発生したあまりにも凄惨な出来事。
ご存知ですか?
平成とともに育った私としては、少年時代に起こった事件の中でも特に印象に残っています。間違いなくトップ10。
私はまだ小学生だったんですが、当時の報道はもう、とにかく林真須美は超極悪人であり、夏祭りという子どもも大人も楽しみにしている幸せなイベントで死者が出たということでその凄惨さも相まって連日テレビや新聞を賑わわせていました。地元の祭りでもカレーとか汁物は出しちゃいけないよねっていうムードでしたね。
私自身、林真須美はすんごく悪い人だっていう印象を確かに抱いてました。猟奇的な殺人犯だと。
だから、この映画が公開されること自体、驚きだったんですよ。
当時は今と違って、テレビの報道は正しいものだと思い込んでましたからね。
フジテレビの一件とか、兵庫県知事の事件、また、『正体』とかを観た今、犯人だとされている人たちに対して今一度目を向けることや、報道に対する猜疑心を抱くことも大切なんだろうと思ってます。
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ここから、本作の感想をお伝えしていこうと思います。真偽に迫るというよりも、私が得た情報を基にそのまま感じたことをお伝えします。
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ストーリーに関するネタバレも少し含んでいるので、もし映画を観てみたい人は鑑賞してから読んでね。
映画によると…
当時のニュースを観ていた私の印象は冒頭にお伝えしました通り。
ですが、映画によると、林真須美を犯人だと決めつけるのも、ましてや死刑判決を下すにはあまりにも不可解な部分が多いのだそうです。
彼女を犯人だと決定づけた要素は大きく二つ。
一つは近所に住んでいた女子高生の目撃証言。
「林真須美がガレージでカレーを鍋にかけている時に蓋を開けて湯気から白い湯気が出るのを見た」
というものなんです。その時にヒ素を混入したのだろうと。
ですが、これが結構不確かなものでして、当初は一階から見たと証言していたんですが、途中から二階から見たと証言が変わったんです。一階からだと障害物が多くて見えるはずがなかったそうなんですね。
また、二階から見ていたとしても、見える角度の鍋はヒ素が見つかったのとは別の鍋だったんだそう。
加えて、長男と次女によると、その時ガレージには林真須美と次女が鍋の番をしていたんです。
さらに、目撃証言によると、林真須美が鍋を開けた時、髪の毛が鍋に付きそうだったと証言しているそうなんですよ。でも、その時林真須美は肩より上のショートヘア。次女の方がロングヘアだったんです。
充分に、次女が開けてカレーの中身を覗いただけ。そんな可能性も考えられるわけですね。
二つ目は、林家で見つかったヒ素。
当時ヒ素が林家から見つかった後、スプリング8という高性能顕微鏡を用いて、鑑識が行われました。
林家のヒ素と、現場の紙コップに残ったヒ素が中国かメキシコ原産のヒ素であるということが分かったそうです。
でも、当時他の家にもヒ素はあったそうなんですよ…。だからこれに関しては断然決め手としては弱い。
動機は一貫して…
当時のニュースをご覧になった方は、何となくあの事件は保険金が絡んでいたことを覚えておられるでしょう。
夫も保険金をかけられていて、ヒ素を用いて殺されかけていた。そんな悪魔のような女性の猟奇的な犯罪事件として報道されたこの事件。
でも、直接的な動機は、一貫して語られていないんです。
町内の夏祭りのカレーにヒ素を入れたって、一文の得にもならないんですよね。夫殺しならまだしも。
それでいて、夫のヒ素に関しても実はあれって自分で飲んだんだそうなんです。
これは、映画に出ていた夫本人が語っていたことなんですが、もともとかなりギャンブル好きで、金遣いがあらかったそうで。一度車に積んでいたヒ素を試しになめてみたら、それをきっかけに入院。簡単に保険金として1億5千万ものお金が手に入ったそうで。
それが癖になってなんどかそういったことをしているんだそうです。だから、これに関しては決して林真須美がやったことではないと。
だから、動機に関しては本当に不明のままなんです。それでも死刑判決は下ってしまった。
映画を観てこう思う
死刑判決を下すには、あまりにも乱暴で雑だよなと思いました。
ギャンブルや保険金を不正に得ることが常態化していたことは悪しきことですが、それとこれとはやはり少し話が違うような。
林真須美という極悪人を作り上げたことで、身内以外の誰もが納得できる結果にしたてた。権力と報道と世間とでストーリーを練り上げた。そんな風に感じずにはいられませんでした。
真犯人が他にいるのか。それとも林真須美による犯行なのか。これを踏みとどまって自分で考える頭を持つことが大切だなと、私は思います。
また、町民たちが皆あの事件について口を閉ざしている、タブーになっているというのも、ややきな臭い。
あの映画では描かれていませんでしたが、ギャンブル好きで保険金詐欺的な事もやっていたことに加え、林真須美は元々別の地域の綱元の娘で、かなり金遣いが荒かったという話もあります。
そんな林家は、住民たちと今一つ上手く馴染めていなかったのではないかな。と私は思ってるんです。
だから、犯人だとされてもやっかいな人がいなくなった。とか、あの人なら別にいいか。くらいにしか思われていないんじゃないかなって。
まとめとして。今一度。報道をそのまま文字通りに受けることはしないようにしていきたい。疑う習慣を持っていたいなと思います。
多分、その方が面白いですしね。多様な考え方でニュースを観られるほうが。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
『Mommy』について私なりの感想をお伝えさせていただきました。
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様々なニュースが、なぜそのように報じられているか。考えられる人になりたいものです。
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真実をそのまま伝えるのが本当に難しい今だからこそね。
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