映画音楽の発明者。200年後のベートーヴェン。
偉大な巨匠には、友がいた。妻がいた。
映画「モリコーネ 映画が恋した音楽家」を鑑賞しました。
2020年7月に惜しまれながら亡くなったエンニオ・モリコーネ。
私は彼の音楽が大好きです。
10代の頃、ロックばかり入れていたiPodに、唯一入っていた歌詞の無い映画音楽。それは、エンニオ・モリコーネでした。
今回の記事では、管理人も大好きな、”エンニオ・モリコーネ”のドキュメンタリーを、盟友ジュゼッペ・トルナトーレ監督が撮影した「モリコーネ 映画が恋した音楽家」を楽しむための解説をお届けします。
ABOUT
2020年7月、世界は類稀なる才能を失った。エンニオ・モリコーネ、享年91歳。1961年以来、500作品以上という驚異的な数の映画とTV作品の音楽を手掛け、アカデミー賞®には6度ノミネートされ『ヘイトフル・エイト』(15)で受賞し、2006年にはその全功績を称える名誉賞にも輝いた。
公式サイトより引用
そんな伝説のマエストロに、弟子であり親友でもある、『ニュー・シネマ・パラダイス』『鑑定士と顔のない依頼人』のジュゼッペ・トルナトーレ監督が、5年以上にわたる密着取材を敢行。結果として、生前の姿を捉える最後の作品となってしまった、ドキュメンタリー映画を完成させた。
スクリーンの中では、モリコーネ自らが自身の半生を回想、かつては映画音楽の芸術的地位が低かったため、幾度もこの仕事をやめようとしたという衝撃の事実を告白する。クラシック音楽の道へ進まなかった葛藤と向き合いながら、いかにして音楽家としての誇りを手にするに至ったかが、数多の懐かしい傑作の名場面と、ワールドコンサートツアーの心揺さぶる演奏と共に紐解かれていく。
さらに、名前を見ただけで息をのむ70人以上の著名人のインタビューによって、モリコーネの仕事術の秘密が明かされる。生まれ持った才能と閃き、貧しかったために働きながら通った音楽院での地道な努力、新しいムーブメントを取り入れる柔軟なセンス、信念に反することは断固拒否するプライドについてのエピソードによって、モリコーネの人生そのものが偉業であったことが証明されていく。
同時に、初公開となるプライベートな映像が、奇才のチャーミングな人間性と妻への美しい愛を浮き彫りにする。「ジュゼッペ以外はダメだ」と、モリコーネ自身が本作の監督に指名したトルナトーレの前だからこそ、最後に口にした芸術の深淵を見た者の言葉とは─?
今も、そしてこれからも、モリコーネのメロディを聴くだけで、あの日、あの映画に胸が高鳴り涙した瞬間が蘇る。同じ時代を生きた私たちの人生を豊かに彩ってくれたマエストロに感謝を捧げる、愛と幸福に満ちた音楽ドキュメンタリー。
私とモリコーネ
私が映画の世界に魅了されるきっかけとなった作品のひとつが「ニュー・シネマ・パラダイス」です。
当時、教育系の大学の必修科目として、ピアノの講義がありました。
そこで、自由課題として選んだのが「愛のテーマ」でした。
せっかく練習する曲だし、映画を観てみようかと思い、レンタル店で「ニュー・シネマ・パラダイス」を観ました。
あまりに感動的なラストに涙がボロボロとこぼれました。
映画を観てあんなに泣いたのは、初めてのことでした。
そしてあの素晴らしいラストシーンを引き立てる音楽。「愛のテーマ」。
映画って、音楽って、なんて素晴らしいんだろうと、モリコーネの音楽と作品に魅了されました。
彼のCDもレンタルして、iPodで聴いたり、関連作品を借りたりして、私の映画の世界は徐々に広がっていったのであります。
恐らく、「ニュー・シネマ・パラダイス」とモリコーネの音楽に出会わなければ、今の私はなかったでしょう。
そもそも映画音楽とは
そもそも映画音楽とは何であるかを少し解説しておきましょう。
映画音楽とは、ずばり”映画のために作られた音楽”のことです。
既成の曲を使用するのではなく、映画のために書き下ろした曲になります。
「ジョーズ」や「スターウォーズ」、「パイレーツオブカリビアン」、「サイコ」など、名前を聴くだけで頭の中に音楽が流れてくることがございませんか?
映画のシーンや世界観に合わせて作曲されたからこそ、そうなる訳でございます。
ジョン・ウィリアムス、ハンス・ジマー、バーナード・ハーマン、坂本龍一などが有名ですが、やはり私はモリコーネが一番好きなのです。
以前、マツコの知らない世界で特集されていたことを機に書いた記事や、「すばらしき映画音楽の世界」という映画に関する記事もぜひお読みいただければ幸いです。
鑑賞前に観るべき映画
今作を観る前に、鑑賞しておくとより感動が大きくなりそうな映画を紹介しておきます。
- 「赤い砂の決闘」
- 「荒野の用心棒」
- 「夕陽のガンマン」
- 「ポケットの中の握り拳」
- 「天地創造」
- 「アルジェの戦い」
- 「続・夕陽のガンマン」
- 「シシリアン」
- 「殺人捜査」
- 「1900年」
- 「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」
- 「ミッション」
- 「ヘイトフル・エイト」
もちろん、観なくても、またはモリコーネの音楽を聴いたことがなくても楽しめますが、観ておくとより一層感動できますよ。
特に、2.3.7.9.11.12.13の作品は、モリコーネのキャリアや氏の思いが強く出ているので、作品の音楽や背景だけでもおさえておくとよいでしょう。
映画の中でもよく出てきます。
個人的には、「海の上のピアニスト」と「ニュー・シネマ・パラダイス」の二作が思い出深いので、期待していたのですが、あまり出てきませんでした笑
いくつかの作品については、少し付け加えて解説します👇
「時計仕掛けのオレンジ」が実は…
上記9番の「殺人捜査」の音楽に感動したスタンリー・キューブリックは、モリコーネに「時計仕掛けのオレンジ」の音楽を依頼しようと考えたそうです。
キューブリックは、まずセルジオ・レオーネ監督に相談しました。
モリコーネが当時「荒野の用心棒」や「夕陽のガンマン」など、レオーネの映画の音楽を担当していたからです。
レオーネは何と、キューブリックのオファーを勝手に断ったそうです笑
モリコーネを愛する故の行動でしょう…笑
しかし、モリコーネ音楽の「時計仕掛けのオレンジ」観てみたかった…。
ワンス・アポン~で…
モリコーネは、師匠ペトラッシを筆頭に、多くのアカデミックな作曲家から、批判を浴びていました。
”映画音楽は商業的だ”
”あいつは金に目がくらんで魂を売っちまった”
という感じですね。
しかし、そういった人々すら、モリコーネの才能を認めざるを得なくなったのが、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」の”デボラのテーマ”です。
氏にとって、非常に重要な一曲です。
映画も素晴らしいので、ぜひご覧ください。
めっちゃ長いですが笑
でも、あの映画にはビートルズの”イエスタデイ”が使われているんですよね。
モリコーネは、既成曲を使うの嫌いなんですが、これはどういった理由なのか、非常に気になるところではあります。
誰か知ってたら教えてください。
驚きの作曲方法
エンニオ・モリコーネは、全ての楽器を演奏できるわけではありません。
また、自分で自分のことを音痴だと言っています笑
そんな彼の作曲方法は、ピアノを触りながら書くのではなく、譜面にただ書くという方法なのです。
音楽は頭の中で完成させ、それをバーっと書いてしまうんですね。
いやはや驚きました。
そしてその選出方法に愛が…
そしてその作った曲を監督に渡す前に、あることをしていました。
それは、妻に聴かせることです。
音楽のことも映画のことも知らない妻が”いい曲ね”と言ったならば、それをGOサイン代わりにしていたのだとか。
最愛の人に初めに聴いてもらってから、監督に渡す。
なかなかグッとくるエピソードですよね。
監督ジュゼッペ・トルナトーレ
今作の監督はジュゼッペ・トルナトーレです。
私が大好きな「ニュー・シネマ・パラダイス」の監督です。
受賞を逃し落ち込む巨匠
モリコーネは1986年に公開された「ミッション」という映画で、素晴らしい音楽を作り上げました。
「ミッション」ではなんと、カメラを回しながら、音楽をかけて撮影されたのです。(普通、音楽は後付けで撮影します)
主演のデニーロも、”音楽があった方が演じやすい”と言っていました。
それほど、作品とマッチした最高の曲だったのです。
映画関係者の誰もが、”今年のアカデミー賞作曲賞はモリコーネに違いない”と予想していました。
にもかかわらず、「ミッション」ではアカデミー賞を逃してしまいます。
これを機に、モリコーネはかなり落ち込んでしまったそうです。
そんな巨匠を再び励ましたのがジュゼッペ・トルナトーレでした。
新人監督そして名作との出会い
ジュゼッペ・トルナトーレは当時まだ新人監督でした。
しかし、モリコーネは、「ニュー・シネマ・パラダイス」の脚本を読んで、その自ら作曲を申し出ます。
映画がテーマである作品性や、自身の故郷イタリアが舞台であることが、深く心を打ったのでしょう。
息を吹き返した巨匠は、素晴らしい音楽を作り上げ、映画を昇華させました。
その後、「みんな元気」「マレーナ」「海の上のピアニスト」「鑑定士と顔の無い依頼人」など、数々の作品でタッグを組む、生涯のパートナー、盟友となります。
そんなトルナトーレ監督が、モリコーネの死後、彼の偉業や人となりをドキュメンタリーにしているのだから、たくさん愛が詰まっているし、面白くないはずがないのです。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
「エンニオ・モリコーネ 映画が恋した音楽家」は、巨匠の偉業や、友情、そして愛が詰まった素晴らしいドキュメンタリーです。
愛が深すぎて、めっちゃ分厚い記事になってしまいました。
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