『お引越し』終盤の不思議な世界について考える

映画

早く大人になるから

映画『お引越し』の4Kリマスター版を映画館で鑑賞しました。

1993年に公開された作品で、監督は相米慎二、出演は田畑智子・中井貴一・桜田淳子。

『お引越し』は、思春期の少女が両親の離婚をきっかけに新しい環境で成長していく物語だ。

主人公の少女は、引っ越しを通じて新しい友達や経験を得ながら、自分自身のアイデンティティを見つけていく。

映画は、家族の絆や成長の痛みを描きながら、観客に感動を与える作品だ。主人公は小学6年生のレンコ。両親の別離を機に、友達との関係や、家族との距離感に悩みながらも、彼女は少しずつ自分の居場所を見つけてようともがく。

そんな中、ある日、彼女は不思議な出来事に巻き込まれる。それは、彼女の成長と変化を象徴するような出来事であり、彼女の人生に大きな影響を与えることになる。

この先、彼女はどのように成長していくのか?そして、不思議な出来事の真相とは?

といったあらすじです。

主人公レンコを演じた幼き頃の田畑智子やその周囲の子どもたちの自然で愛らしい演技、そしてタイプの異なる両親を演じた中井貴一と桜田淳子の演技も素晴らしいんですが、この映画で最も気になるのはやはり終盤の展開。

ダニー
ダニー

確かに、とっても不思議な世界観だったよね…。

bitotabi
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そこで、今回の記事では映画『お引越し』の終盤の不思議な表現について考察していきたいと思います!

そもそも『お引越し』は何を描きたかったのか

『お引越し』は、表面上は両親の不仲・別離を機に、6年生の少女の行動や戸惑いを描いています。

はじめこそ笑いが多くて可愛らしい、でも少し切ない。そんな少女や子どもたちの世界なんですが、徐々にシリアスになっていきます。一見明るいレンコが、両親が別れてしまう事実を実感して、しっかり傷ついていく様子を痛い痛しく描くんですね。

つまり、少女が傷つきながらも、現実や男女関係ってどういうものかを知って成長していくという物語なんです。

例えば父と別れてから母がちょっと女っぽい雰囲気を見せたり、女子の噂や虐めを体験したり、同級生から好意を寄せられたり、知り合いの大人の男女が妊娠を機に揉めているところを目撃したり。

そういった少女にとっては初めての、ショッキングな出来事を通じて成長していく様を描いているんです。

相米慎二監督は、『セーラー服と機関銃』で、女子高生の性的成長を描いていました。

今度はより年齢を下げて小学6年生。これから中学生になっていくという微妙な年齢の少女が、自分が女であり、この世は男と女に分かれているんだということを実感していくまでを表しているんですね。さらに精神的な成長までも。

そしてそれがぎゅっと詰まっているのが、終盤の展開になるわけです。

 



終盤のレンコの体験が表すもの

明るいレンコが、両親が別れてしまう事実を実感し、しっかり傷ついていく様を痛い痛しく描きます。

そして、それがピークに達してから、あの不思議な終盤の世界に入っていくんです。

レンコは母と共に思い出の琵琶湖旅行へ行き、宿泊先のホテルで父親とも会います。そこで父親から、「一人で生きたい」とハッキリ言われたことで、レンコの心は崩れてしまい、一人で走って逃げてしまうんです。

そこからレンコは周辺を歩き、様々な出来事に遭遇します。

火祭りのシーン:レンコは火の幻想的な様子に魅了され、近づこうとしますが、同い年くらいの男の子に近づくなと止められてしまうんです。あの行事は、慣習として男性しかできないものなんですよね。また、夏の火祭りは、自然への感謝と共に、霊を供養する意味合いも含まれることが多いです。そういった行事に心が揺れたことも大きな成長として描いているのでしょう。

月を見上げる:そしてそのシーンの後に、レンコは空を見上げます。空には大きな満月が。月は古くから女性を象徴するものとして表現されます。太陽が男性ですね。さらにこれに関しては劇中で歌われる『東へ西へ』の「満月 今日は満月 明日は愛しいあの子に会える」という歌詞にもかかっていると思います。

蛍のシーン:この映画には、蛍が2回出てくるんです。1度目は同級生の男の子と二人っきりで話す時。そして2度目が終盤レンコが一人山の中を彷徨うシーン。1度目では何の気にもかけないんですが、2回目のこの時は、レンコは蛍を捕まえて食べるような描写がなされているんですね。蛍は、飛び回っているほとんどがオスで、その目的は求愛行動。男性の愛を受け入れる準備ができた。こんなメタファーなのでしょう。

老人との会話:レンコはおじいさんの家で会話する中で、おじいさんの息子が亡くなっていることを知ります。これによって、人間はいつか死ぬし、それがいつかは分からないということを思い知るんですね。

母への言葉と腹痛:祭りの中で母親に見つかったレンコは「あたし、早く大人になるから」と言います。そして、その後お腹を抑えてうずくまるんです。これは、初潮を迎えたことを表現しているのでしょうね。

おめでとうございます:最後の最後、レンコは船幸祭の船を両親と自分が楽しそうに囲んでいる様子を目撃します。やがて両親は背を向け、水の中へ消えていく。そしてレンコは、かつての自分を抱きしめ、「おめでとうございます」と何度も繰り返す。これは、楽しかった頃の父と母、そして純真無垢だったかつての自分との別れ、つまり「お引越し」を表現しているんです。

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます!

映画『お引越し』について解説しました。

bitotabi
bitotabi

少女の成長を描くメタファーの数々、不思議でゾクッとします。

ダニー
ダニー

4Kリマスターは、とんでもなくキレイでビックリするから、観に行けそうな人はぜひ劇場へ!

 

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