ホラーショートフィルム作品集『NN4444』をシネマートで鑑賞しました。
世界へ挑む4人の新鋭監督が4つの不条理を描いています。
全ての作品が20分程度と短く、あまり多くを語る作品ではありませんので、自分なりに考察したことをまとめました。
読んでからでも楽しめるけど、ネタバレしたくない人は観てから読んでね。
はじめに、それぞれの作品概要をお伝えしていきましょう。
作品概要
上映される順番で、あらすじとスタッフ・キャストについてザックリと解説します。
「犬」
あらすじ:抑圧的な恋人と婚約したばかりの主人公・楓が、夜道で突然「犬」のように女に吠えられ、その女のことを忘れられなくなってしまう。
監督・脚本・編集:中川奈月 出演:小川あん、磯田龍生、渡辺葵、鮎川桃果、桑原おさむ、松井彩葉、山下真実子、橋本拓地、ほか「Rat Tat Tat」
あらすじ:とあるパーティに出かけた一組の夫婦が、大勢の人々で賑わう会場で得体の知れない狂気に包まれていく。
監督・脚本・編集:佐久間啓輔 出演:錫木うり、原田新平、長内映里香、大塚航二朗、早乙女ゆう、望月雅友、江守沙矢、大高健志、知念結奈、秋川翔太、原春奈、長谷川アキ、ほか「洗浄」
あらすじ:湖のほとりで飲み会を楽しむ若者たち。1人が溺れかけたことをきっかけに、全員が水の呪いに飲み込まれていく。
監督・脚本:宮原拓也 出演:夏子、大下ヒロト、山脇辰哉、森田想、田中陸「VOID」
https://k2-cinema.com/event/title/390
あらすじ:不慮の事故で友人を亡くした高校生・麻木。その周りで少しおかしな現象が起こりはじめて–––。
監督・脚本:岩崎裕介 出演:野内まる、大石水月、伊藤歌歩、若杉凩、神嶋里花、安藤聡海、金子岳憲、平井まさあき(男性ブランコ)、池田良、門間航、大熊花名実、ほか
どの作品が怖い?
せっかくホラー作品を4つもまとめて観ることができたので、ランキング形式でどの作品が怖かったのかを発表します。
それぞれの監督がそれぞれに感じる怖さや不条理を描いたものになるので、共感するポイントもまたひとそれぞれだと思います。
あくまで私個人が怖いと思った順番ですのでご参考までに。
第4位『犬』
グロテスクな描写と、自尊心を失い、どんどん摩耗していく主人公の精神の描き方が怖いです。
会社やパートナーと上手くいかなかった経験がある人は不安になりそうな作品でした。
第3位『Rat Tat Tat』
最初から最後まで不気味。タイトルの『Rat Tat Tat』が音の連続を表す言葉だということが分かってゾッとしました。
『ミッドサマー』とか好きな人にオススメです。
第2位『洗浄』
怖さ度のようなものは、ほぼ『Rat Tat Tat』と横ばいですが、
一番ストレートなホラーをやってたのと、気を抜いたら笑ってしまいそうなほどのぶっ飛び演出がよかったです。
第1位『VOID』
こちらが一番ストーリーに深みがあるように思いました。主人公の過去とこれからを思うと、怖さが膨らむというか。
冒頭や友人の遺影などに細かい演出を入れている点も面白かったです。『幽遊白書』の蟲寄市みたいなドキドキ感もいい。
それではここから、考察の方に参りましょう!
それぞれの作品の不条理とは?
4つの作品で描きたかった不条理や怖さについて考察していきたいと思います。
はじめに、不条理ってあらためてどのような意味なのか調べてみました。
「不条理」
1 筋道が通らないこと。道理に合わないこと。また、そのさま。「—な話」
2 実存主義の用語。人生に何の意義も見いだせない人間存在の絶望的状況。カミュの不条理の哲学によって知られる。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
1の意味で使うことが多いですよね、理不尽の大規模版のような感じ。
でも、『NN4444』の作品は、2の「人生に何の意義も見いだせない人間存在の絶望的状況」を意識して描いているものもあるように思いました。
ちなみに、実存というのは、自己の存在に関心をもって存在する人間の主体的なあり方を表す哲学的な言葉です。
これらを踏まえて、一体それぞれの作品でどのような不条理を描いているのか、考えてみました。
私なりに一所懸命考えましたので、違っていてもご了承ください♡
『犬』の不条理
『犬』では、会社の同僚やパートナーから罵倒されたりネガティブな言葉ばかりかけられて、自尊心が崩れていく様を描いています。
言われたことをただやることもできない。これではまるで自分は会社やパートナーに犬のように飼われているだけではないか。
そういった絶望から感じる不条理を描いているんだと思うんです。
そして、この映画で怖いなと思ったのが、主人公が拾ってきた女の子の首に指輪の着いたネックレスをつけるところ。
自分より下の存在を見つけて、首輪代わりにネックレスをつけ、自分の優位性とか有能感を獲得しようとする。
これにはゾッとしましたね。
『Rat Tat Tat』の不条理
『Rat Tat Tat』の主人公の女性は、妊娠できない、あるいは流産の経験を持つ人物なのでしょう。
しかし、世の中は、結婚したら子どもを出産するのは大変喜ばしく、ある程度当然のことであるような風潮である。
妊娠できないあるいは妊娠に怖れのある人にとって、それは絶望的な状況なのではないだろうかという不条理を描いていると捉えました。
加えて、タイトルの『Rat Tat Tat』は「ラタタタ」という音を表す言葉なんですが、これは拍手の音のことなんですね。
みんなからの拍手は出産を促すもののように見えます。「産ーめ、産ーめ」とみんなから追い立てられているような。
そういったマジョリティとか同調圧力の怖さもまた描いているのではないでしょうか。
『洗浄』の不条理
『洗浄』は、自然に対する抗えない絶望を描いているように感じました。
湖に入ったことで、水を求める化け物のように変わっていく仲間たち。
人間の渇きや、自然に対する恐怖を表していたように思えます。
『VOID』の不条理
私は『VOID』が一番不条理を描いたものとしてしっくりきました。
『VOID』の意味そのものが、虚無とか空洞を表す意味なんですね。
疎外感、後ろめたさ、憐憫。こういった負の感情に抗うには虚無しかない。ストーリーの中でもこのようなセリフがみられました。
本作に関しては、どちらの意味の不条理も絶妙に感じることができると思います。
最後の虚無感たっぷりの「あーね」が素晴らしい。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『NN4444』について感想と考察をお伝えしました。
刺さり方は人それぞれ。恐さは人によって大きく変わると思います。
それぞれの監督の今後の活躍が楽しみだね!
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