何も知らないのが一番良いのです
映画『No.10』を鑑賞しました。
久々にギョッとする映画でしたね、これは。
『ボーグマン』のアレックス・ファン・ヴァーメルダム監督の作品で、オランダとベルギーの合作になります。
かなり考察のしがいのある映画なのですが、公式HPにこのようなメッセージが掲載されていました。
無知で観る方が良いのです!
今回の記事はネタバレありの考察ですので、必ず映画鑑賞後にお読みください!
公式サイトのあらすじは読んでも大丈夫です👇
幼少期に記憶を失い、森に捨てられ、里親に育てられたギュンター。大人になった彼は舞台役者として生計を立て、共演者と不倫、一人娘は肺がひとつしかない突然変異だった。役者仲間の裏切りによって残酷な仕打ちを受けるギュンターは復讐を誓う。だがその先に、とてつもない驚愕の事実との対峙が待っている。
https://no10movie.com/
それではここから先はネタバレありの感想・考察になりますので、映画を観た方のみお読みください!
まず映画のタイトルについて。
『No.10』というのは、アレックス・ファン・ヴァーメルダム監督の通算10作目の作品であることが理由でしょう。
なんだか、淡白な感じもしますが、気の利いたタイトルだと思います。
または、主人公ギュンターが10番目の子どもであり、No.10とでも呼ばれていたのかもしれません。
あるいは、キリスト教に関する「10」という数字の特異性を意識して付けたものであるという考え方もできます。
キリスト教では、「10」は全体と神と支配を表す数字です。 ダンテは地獄、煉獄、天国を「10」に分割していますし、 ノアの箱舟のノアは、人類の祖とされるアダムから数えて「10」代目でした。
さらに「10」 といえば、「十戒」もありますよね。
しかし、そこで気になるのは、この映画のキリスト教批判的な部分です。
タイトル『No.10』と合わせて考察してみましょう。
異星人たちは何と地球滞在中にキリスト教に魅力を感じ、母星に帰ってキリスト教を布教しようと考えていたことが分かるんですね。
これ、どういう狙いなのかというと、宗教で母星の人たちを支配しようという目的なんですね。
キリスト教やイスラム教というのは、人をコントロールし、国を繫栄させる狙いで定められているんです。
例えば、イスラム教では豚を食べてはいけないという教えがありますが、これはイスラム圏のような暑い国では、食に関する危険が高く、特に豚はたくさんの病原菌を持っているため、食べるのはリスクが高すぎる。というものや、これはキリスト教も同様ですが、同性愛を禁じるのは、健全に人口を増やしたいから。などの理由があるんですよ。
宗教を刷り込んでしまえば、ルールで人を縛ってしまえるというわけですね。
宗教は強力です。今のパレスチナ問題を見れば明らかでしょう。信心深さというのは、戦争を起こせるほど強烈なんです。もちろん、金儲けだってできます。
で、映画に話を戻しますが、おそらく異星人たちは宗教のそういった力を利用して、母国を支配したいのだと思います。
で、ギュンターを、キリスト役として、神話の主人公にしちゃう狙いなんでしょうね。
そのために、ドラマチックな物語をさも、本当の出来事かのように演出してみせたんです。(娘が発見してしまう船内のセットはそういう意味のはず)
しかし、
「君たちにはジャズやブルースがあるだろう?イエスは白人の作り話だ」
というセリフを言うほど、ギュンターは信心深くない。
その上、仲間の中にも、宗教の力をよしと思っていないものがいる。
ということで、あのようなラストになったんでしょう。
ちなみにオランダという国は半数以上が無宗教の国なんです。
結構感覚的には日本に近いのかもしれませんね。
キリスト教もそれなりには根付いているのですが、そこまで大きいものではありません。
オランダという国は、日本でいうと江戸時代の頃から、船に乗って海外と貿易をしていて、うまくいってたんですよ。徳川家康もオランダとは貿易していましたよね。
宗教を布教しなくても、金には困らないからいいぜ。って感じだったんでしょうね。
江戸時代以前から宗教の布教を恐れていた日本と、そこまで重きを置いていなかったオランダとは馬が合ったというわけです。
アレックス・ファン・ヴァーメルダム監督もきっと、宗教に対してそのような批判的な考えを持っているんでしょうね。ギュンターは監督自身を投影しているのではないでしょうか。
しかし、この
「君たちにはジャズやブルースがあるだろう?イエスは白人の作り話だ」
というセリフはすごいですよね。
ここまで言い切るだけでなく、後々の伏線にもなっているんだから。
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『No.10』の考察をお届けしました!黙って信じてるだけじゃダメなんだぜという監督からのメッセージがこもっていたように感じます。
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