「ニュー・シネマ・パラダイス」をもっと味わう5つの視点

ドラマ映画

「俺の広場だ」に込められた故郷への想い

映画「ニュー・シネマ・パラダイス」を鑑賞しました。

何度も何度も観た作品です。

大阪で新たにオープンした「扇町キネマ」にてリバイバル上映されていたので、鑑賞してきました。

やっぱり泣けちゃいますね。ハンカチ必須です。

ダニー
ダニー

本当にいい映画だよねぇ…。

今回の記事では「ニュー・シネマ・パラダイス」について語らせていただこうと思うのですが、ストーリーや音楽の素晴らしさについては、散々語られていますので、少しミニマルな視点で解説していきます。

bitotabi
bitotabi

より立体的に作品を味わったり、少し違う視点で観たい時にお役立てください!

シチリア島とは

シチリア島は、地図でいうと靴の先っぽに位置する南にあり、地中海のほぼ中心に位置する、地中海最大の島です。

映画の中で、字幕の意味を知らなかったり、大人の男性が文字を読めなかったり、「シチリアでは話す言葉が違う」というセリフがあったりしましたね。

というのも、イタリアは北から南まで地方色が強く、シチリア州でもシチリア語と呼ばれる言語が存在するのだそうです。

シチリア語はその複雑な歴史から、スペイン語・アラビア語・フランス語・ラテン語などいろんな言葉が混ざった特徴的な言葉となります。

もちろん、1940年代の戦後間もない時代背景で、単純に男性ですら識字率が低いというのもあるのでしょうが(アルフレードの試験シーンのように)シチリアにはそういった背景があるのです。

また、シチリア島といえば、映画「ゴッドファーザー」を想像する人も多いでしょう。

これもまた、上記に繋がっており、他国から支配を受けてきたシチリア島の人々は「オメルタ」という信念的なものを持っています。

これは、国家や法の支配に対する不信と反抗の意思のようなものであり、苛酷な自然と権力者の支配に抵抗するためにマフィアのような組織が自然と発生したのです。

また、シチリア島には第二次世界大戦中、1943年に英米軍が上陸しています。

映画をよく見ていると、崩れた建物も観られるので、もしかすると彼らの村も戦地になったのかもしれません。

トトの父親

トトの父親は、戦争に行ってから、まだ帰ってきていませんでした。

アルフレードに父について尋ねると、

「笑顔がクラーク・ゲーブルに似ていた」(別の俳優だったかも…)

と答えられます。

その後、父の訃報を映画館のニュースで知り、母親と共に遺族年金を受け取りにいきます。

道中トトが見かけたポスターが「風と共に去りぬ」(おそらく)

クラーク・ゲーブルが出ているんですね。

ボロボロ泣きながら歩く母に手を引かれ、ポスターを観て、ニコリとほほ笑むトト。

ほとんど覚えていない父親の死よりも、彼の頭の中は映画でいっぱい!

そんなことを伝えつつ、戦争のもの悲しさを訴えるシーンだったのではないでしょうか。

ちなみに、上記の戦争により崩れた建物というのも、このシーンで映ります。

 



検閲

本作では、神父さんが上映作品の検閲するところから、回想シーンが始まります。

楽しさや可愛さ、村ののどかさが伝わってくるたまらないシーンですよね。

あの検閲、なぜ必要だったのかというと、「パラダイス座」は協会が運営していたからなんです。

寄付金や入場料でどうにかこうにかやってたんでしょうね。

教会が運営する以上、宗教的によろしくないシーンはカットすると。

そして、「パラダイス座」が一度燃えてしまって、「新・パラダイス座」になると、運営がサッカーくじを当てたナポリの人になったので、検閲の必要がなくなったのです。

俺の広場というセリフ

ずっと広場にいて、

「ここは俺の広場だ!」

とわめいている人が何度も登場しますよね。

あの人はいったい何を象徴するのか、考えてみました。

大人になったトトが帰郷してからも、彼は登場します。

高齢で、もうすっかり元気はなく、

「ここは俺の広場だよ…」

とブツブツと通り過ぎるだけでした。

かつてあの広場は、噴水に人が集まったり、トマト製品を作ったり、散髪屋がいたりと、シチリアの伝統とか古き良き文化で賑わう美しい場所でした。

しかし、30年の時を経ると、噴水は閉鎖され、ガチャガチャとした広告にあふれ、車が行き交うような場所になってしまいました。

その上、大好きだった映画館もとうとう無くなる。

映画館もどうやら、晩年はピンク映画をかけていたようだし、壊れかけた中を覗くと、下品な落書きがされてもいました。

こういった、時代の変化によって失われていくものの悲しさや寂しさを象徴するのが、

「俺の広場だよ…」

なのかもしれませんね。

 



これはみんなのための実話

本作はジュゼッペ・トルナトーレ監督が、自身の経験を基に、故郷の村の人々から聞いたお話を紡いで作った作品です。

きっと、映画のシーンのほとんどが、誰かの経験や思い出なのでしょう。

私は本作の恋のパート、あまり好きではなかったのですが、あの物語もまた、監督や誰かの思い出の一部分なのでしょう。

そう考えると、シーンの全てが、抱きしめたくなるような、大事にしたくなるような、そんな気持ちにさせられます。

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます!

映画「ニュー・シネマ・パラダイス」を少しミニマルな視点で解説しました。

bitotabi
bitotabi

誰かにとっての思い出、故郷への郷愁、戦争の悲しさ、そして、映画への愛。

ダニー
ダニー

大事なものがたくさん詰まった作品だね。

 

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