この村で飢える者はいない
2025年1月24日に全国で公開された『おんどりの鳴く前に』のネタバレなし解説です。
本作、かなり社会風刺の効いた作品です。何も知らずに観るより、この記事を読んでから観ると、より一層感動が大きくなると思います。
まずは作品の概要から!
作品概要
本作は2022年にルーマニアとブルガリアで制作された作品。
監督は本作が長編2作目となるパウル・ネゴエスク。1984年の若い監督です。
ルーマニアのアカデミー賞にあたるGOPO賞で作品賞・監督賞・主演男優賞など、合計6つの賞を受賞しています。
ルーマニアの映画を観る機会というのも、なかなかありませんよね。
あらすじはこんな感じです。
ルーマニア・モルドヴァ地方の静かな村の中年警察官イリエ。
野心を失い鬱屈とした日々を送っている彼の願いは、
果樹園を営みながら、ひっそりと第2の人生を送ること。
しかし平和なはずの村で惨殺死体が見つかったことをきっかけに、
イリエは美しい村の闇を次々と目の当たりにすることになる。
正義感を手放した警察官がたどり着く、衝撃の結末とは―。映画『おんどりの鳴く前に』公式サイト | カルチュアルライフ2025年1月24日(金)全国順次ロードショー!新星パウル・ネゴエスク監督が描く、ルーマニア・アカデミー賞6冠のサスペンススリラーがついに日本上陸!ルーマニアの静かな村で起きたある殺人事件。腐敗と贖罪に揺れる警察官が導く、衝撃のラストとは——。田舎の村を舞台に人間の弱さや愚かさを炙り出すヒューマンサスペンス!
冒頭でもお伝えしました通り、本作は、非常に社会風刺の効いた作品で、ルーマニアの人々の不満を爆発させるような、勇気とエネルギーがこもっているんです。
だからこそ、爆発的なヒットをしたというわけなんですね。
ルーマニアの腐敗
詳しくは観た後解説でお伝えしようと思うんですが、本作で風刺されているのは、ずばりルーマニアという国の腐敗した政治について物語っています。
劇中、果樹園が出てくるんです。主人公の警察官はそこが欲しくてたまらないんです。でも、この果樹園というのが、権力者が貧しい人から取り上げたもので、しかも近くまで行ってみるとゴミだらけ。これがまさに小さな村だけではなく、ルーマニアという国を表現しているんです。一見いいように見えても、その中身は私利私欲にまみれて、汚れているという。
そういう点を踏まえて、この村で起こる出来事を捉えてみてください。
きっと、他人事ではなく、日本だって同じだと気づくはずです。
タイトルについて
本作の邦題は『おんどりの鳴く前に』ですが、原題は『Oameni de treaba』です。善良な人々みたいな意味になります。
全然違うんですよ。
私、初めてこのポスターを観た時、2022年にヒットした『ザリガニの鳴くところ』にあやかって付けたんだと思って、「あ~、またやっちゃってんな」と思ったんですけど、そうじゃなかったんです。
いいんですよ。このタイトル。
これは、聖書の引用なんです。マタイによる福音書の「鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」という部分と重ねてるんですよね。
マタイがキリストを裏切ってしまい、それを後悔するという。
で、結局その後マタイがどうするかというのも、映画のストーリーと被ってくるので、ストーリーを楽しみたい人はあまり調べない方がいいかもしれません。
だからポスターの言葉とかタイトルはふざけた感じがするんですけど、決して、B級映画ではありません。めちゃくちゃ本気の映画なので、ぜひ観ていただきたい作品です!
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『おんどりの鳴く前に』の観る前解説をお届けしました。
鑑賞し終わったら、さらに詳しい解説を書きますので、ぜひ観た後解説もお読みください。
監督の勇気とルーマニアの不満をぜひ体感してみてね。
X(旧Twitter)はこちら
https://twitter.com/bit0tabi
Instagramはこちら
https://www.instagram.com/bit0tabi/
Facebookはこちら
https://www.facebook.com/bit0tabi/
noteはこちら
https://note.com/bit0tabi
コメント