お父さん、左だよ
映画『パリ、テキサス』を午前十時の映画祭で鑑賞してきました。
ヴィム・ベンダースの代表作の一つで、カンヌ国際映画祭にてパルム・ドールを受賞した作品です。
ヴィム・ベンダース!『PERFECT DAYS』の監督だね!
役所広司主演で、2023年大変話題となった『PERFECT DAYS』が初めてのヴィム・ベンダース作品という人もおられるのではないでしょうか。
私もずいぶん前に『ベルリン・天使の詩』を観たことがあるだけなので、ほとんどそんなもんです。『パリ、テキサス』も今回が初めての鑑賞でした。
今回の記事では、『パリ、テキサス』を観た感想や見どころ、『PERFECT DAYS』との類似点などを比較しながら、作品を紹介していきたいと思います。
作品について
『パリ、テキサス』は1984年に製作された作品です。
ドイツ人であるヴィム・ベンダースが、アメリカでロケをして撮影しているいうのが最大の特徴なのではないでしょうか。
華やかな町ばかりではなく、テキサス州の草原や砂漠のような大自然を映し出しています。
欧州の監督がアメリカで映画を撮ると、こういう雄大な風景を割と見せようとするきらいがあるような気がしますよね。
リドリー・スコットの『テルマ&ルイーズ』なんかもそんな感じ。
なので、ロードムービーチックでかつ、ニューシネマ的な雰囲気も楽しめる作品です。
『PERFECT DAYS』と同じく、フワフワして、とらえどころがないっちゃないんですが、『パリ、テキサス』はメロドラマ的なストーリーがまだ強めな気はしますね。
後半は割と泣けてくるぐらいいいんですよ。
4年前に妻子を捨てて失踪した兄トラヴィス(ハリー・ディーン・スタントン)が“テキサスの砂漠で見つかった”と連絡を受けた弟ウォルト(ディーン・ストックウェル)は、兄を引き取りLAに戻った。息子ハンターと再会したトラヴィスは、弟の妻アン(オーロール・クレマン)から、トラヴィスの妻ジェーン(ナスターシャ・キンスキー)から息子宛に送金があると知らされる。トラヴィスは息子と共に、車でジェーンがいるヒューストンに向かう。
https://asa10.eiga.com/2024/cinema/1318/
主人公トラヴィスを演じるのは、ハリー・ディーン・スタントンなんですが、ポスターとかDVDのビジュアルは、ナスターシャ・キンスキーがほとんど。
ハリー・ディーン・スタントンはどうも脇役が多くて、主演作はほとんどありません。(晩年の『LUCKY』とかめっちゃいいですけどね)
とはいえ、この『パリ、テキサス』はナスターシャ・キンスキーとオーロール・クレマンという二人の女優がよすぎるんです。だから、男優二人が霞んでしまいます。
女優陣がステキ
まずはナスターシャ・キンスキー。
最後の方でようやく見つかるトラヴィスの妻を演じています。
ルックスもそうですが、幸の薄そうな雰囲気を抜群に演じていますね。
ナスターシャ・キンスキーは、それまで今一ついい映画に出ることが叶わなかったそうで、この『パリ、テキサス』でようやく素晴らしい役をもらえたような経緯があるそうです。
ファッションがまたいいんですよね。
続いてオーロール・クレマン。
弟の妻を演じています。
とにかくいい人でね…。
子どもの名前「ハンター」を呼ぶときに、フランス人らしくHの発音が抜けて「アンター」ってなるのがいい。
ストーリー的には可哀想で切ない役なんですよ。
この映画でこの人に感情移入しすぎるのは危険です。むしろ嫌いな映画になっちゃうかも。
でも魅力が強いから大変だ~。
溢れ出る小津調
ヴィム・ベンダースは小津安二郎の影響を強く受けている監督です。
ストーリーそのものからは『一人息子』を感じますし、その他映画の中の様々なシーンで小津安二郎っぽさを感じることができます。
中でも、庭から飛行機を眺めているシーンですね。
あの高台から見下ろすようなショットは非常に小津安二郎っぽい。
美しい風景と、それに見とれる人物を映し出すショット。
『東京物語』『父ありき』に似ているように感じました。
『PERFECT DAYS』との比較
最後に、『PERFECT DAYS』と『パリ、テキサス』の比較をして終えたいと思います。
『パリ、テキサス』 | 『PERFECT DAYS』 | |
脚本 | L・M・キット・カーソン、サム・シェパード | ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬 |
撮影 | ロビー・ミューラー | フランツ・ルスティグ |
製作 | アナトール・ドーマン | 柳井康治 |
音楽 | ライ・クーダー | マティアス・レンペルト |
受賞 | 第37回 カンヌ国際映画祭パルムドール 第42回 ゴールデングローブ賞ノミネート | 第76回 カンヌ国際映画祭男優賞 第96回 アカデミー賞国際長編映画賞ノミネート 第47回 日本アカデミー賞最優秀監督賞,最優秀主演男優賞 |
スタッフはガラリと変わっていますね。
カメラマンのロビー・ミューラーはヴィム・ベンダースとたくさん仕事をしてきた人物なのですが、もうお亡くなりになっています。
脚本のお二人L・M・キット・カーソン、サム・シェパードも同様。
ヴィム・ベンダース自身がもう78歳ですから、そんなものなんでしょうけどね…。
ここまでスタッフが変わっているにも関わらず、作品の雰囲気は近しいものを感じますので、監督の力ってのはすごいなと思いました。
特に、『パリ、テキサス』と『PERFECT DAYS』は、ラストシーンがとってもよく似ています。
『PERFECT DAYS』のラストにグッときた人は、『パリ、テキサス』も間違いなし。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『パリ、テキサス』の見どころや『PERFECT DAYS』との比較を紹介しました。
私もさらにヴィム・ベンダースや小津安二郎作品を観てみたくなっちゃいました。
次の午前中の映画祭『ベルリン・天使の詩』も要チェックや!
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