遊んでいる時の幸福を忘れないでほしい
幸福感を独り占めするな
映画『死刑台のメロディ』をテアトル梅田で鑑賞しました。
1971年の作品で、今回鑑賞したのは4Kリマスターバージョンでした。
「永遠のフィルム・マエストロ-エンニオ・モリコーネ特選上映」のラインナップの一つで、モリコーネの代表作のひとつとも言える作品です。
私は初見だったのですが、かなりお客さんが入っていました。
今回の記事では、映画『死刑台のメロディ』の見どころや解説をお届けしていきます。
あらすじはこちら!
1920年代のアメリカで実際に起こった悪名高き冤罪事件”サッコ=ヴァンゼッティ事件”。その人種的、思想的差別と偏見に満ちた裁判の一部始終を、ジュリアーノ・モンタルド監督が冷徹に映画化。サッコ役のリカルド・クッチョーラが迫真の演技で、1971年度カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞した。名匠エンニオ・モリコーネが音楽を手がけ、彼の代表作のひとつに数えられている。また本作に賛同した活動家で歌手のジョーン・バエズが主題歌(「勝利への讃歌」)と挿入歌(「サッコとヴァンゼッティのバラード」)の2曲を哀悼を込めて歌い、話題となった。
https://ttcg.jp/cinelibre_kobe/movie/1088700.html
タイトルについて
本作の原題は『Sacco e Vanzetti』です。
サッコとバンゼッティという意味ですね。直球のタイトルです。
『死刑台の』といえば、『死刑台のエレベーター』(1958)もまた有名な作品。
日本語タイトルはこちらを意識して付けたのかなと思います。
あれくらいの邦題って、『悪魔の』とか『死霊の』とかをとにかく付けちゃう節があったので、この映画もそういう背景があったのでしょう。
まあ、事実を基にした映画なので、二人が死刑台に向かうことは分かり切っていますから、このタイトルもあながちずれてはいません。
加えて、やはりモリコーネの音楽が素晴らしいので、『メロディ』というフレーズを入れたくなる気持ちも分かります。(エンニオ・モリコーネって、当時から一般的にも知られていたんですかね)
モリコーネの美しい音楽
「永遠のフィルム・マエストロ-エンニオ・モリコーネ特選上映」に選ばれるだけあって、音楽はすごくよかったです。
私はモリコーネといえば、『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989)なんです。初めてモリコーネの名前を認識したのはこの作品からでした。
その後『海の上のピアニスト』(1999)などを通ったので、どちらかというとロマンチックでメロウな雰囲気の音楽がモリコーネの印象です。
しかし、モリコーネといえば、『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』など、マカロニウエスタンの作曲家として活躍したり、『ソドムの市』『エクソシスト2』などキワモノ系の作品の音楽も手掛けています。
つまりまあ、なんでもできるんですね笑
モリコーネの音楽は、斬新さとマッチ感が共存しているから不思議です。
ウエスタンの映画といえば…なあの音楽も、モリコーネが生み出し、定番となったもの。
笛の音やギターの音が入るのに、違和感がない。もう発明家の域です笑
『死刑台のメロディ』でも、そんな雰囲気は健在で、
斬新でありベストマッチなシーンばかり。耳を澄ませながら観てほしい作品なのであります。
また、モリコーネが作曲し、ジョーン・バエズが歌う「サッコとバンゼッティのバラード」と「勝利の讃歌」も素晴らしい。
ジョーン・バエズはフォークギターで平和主義を唄うイメージが強いので、作品ともよく合っています。
アメリカの闇を強かに描く
本作は1920年に起こった「サッコ・ヴァンゼッティ事件」を基にした作品です。
1920年4月15日にアメリカのマサチューセッツ州で強盗殺人事件が発生した。その後イタリア移民でアナーキストのサッコとヴァンゼッティ2名が逮捕され、その後の裁判で死刑宣告されたが、当初から偏見による冤罪との疑惑があり、アメリカ国内のみならずイタリアをはじめとするヨーロッパなど各地でデモが行われるほどの大きな問題となった。しかし1927年に死刑執行された。後に調査をおこなった行政側は1977年に冤罪であったと認定したが、司法側は冤罪を認めていない。事件は、アメリカ合衆国の歴史上の汚点とも呼ばれている。
https://en.wikipedia.org/wiki/Sacco_and_Vanzetti
イタリア移民でアナーキストであるということで、民主主義を推し進めたいアメリカが見せしめのように死刑台に送り込んだというわけですね。
『オッペンハイマー』もそうでしたが、1920年からアメリカでのアカ狩りは徹底したものがあるみたいですね…。
あまりにも乱暴で無秩序なこの事件は、世界中で抗議運動が巻き起こったのだとか。
そして、映画公開時の1971年はカウンターカルチャーで世界中が大きな変化をしようとしていた時代。
人種や宗教に囚われず、ラブ&ピースに生きよう。
この映画が公開される意味は、とてつもなく大きかったのではないでしょうか。
「これは政治裁判だ。勝ち目はない」というセリフや、
「あなたはアメリカにいつ移民してきた?早く着いたら偉いのか?」
注目など、移民大国アメリカのことを深く考えさせられるセリフにも注目です。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『死刑台のメロディ』について解説しました。
モリコーネの音楽と、力強いメッセージに胸を打たれます。
ジョーン・バエズの歌声も心に響くね…。
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