半端な”優しさ”では足りない。
圧倒的な”悔しさ”を糧に、人は強くなる。
映画「セッション」を鑑賞しました。
ジャズの名門学院で、ドラマーとして大成することを目指す青年と、鬼教師が織りなす、心がヒリヒリするような「大胆」で「危険」で「熱すぎる」ドラマです。
私は2度目の鑑賞なのですが、前回観た時は J・K・シモンズ演じるテレンス・フレッチャーが怖すぎて、やや憂鬱な気分になりましたが、2度目の今回は、むしろ感動したし、スカッとした印象を受けました。
正直、前回は私の映画偏差値が低い上に、フレッチャーの真の思いや映画のバックヤードを掴み切ることができなかったのだと思います。
先生怖すぎるよ…。
でもそれにはね、理由があるんだ。
今回の記事では、「セッション」を観て感動するために注目すべきポイントを解説していきます。
STORY
名門音楽大学に入学したニーマン(マイルズ・テラー)はフレッチャー(J・K・シモンズ)のバンドにスカウトされる。
公式サイトより引用
ここで成功すれば偉大な音楽家になるという野心は叶ったも同然。
だが、待ち受けていたのは、天才を生み出すことに取りつかれたフレッチャーの常人には理解できない〈完璧〉を求める狂気のレッスンだった。浴びせられる罵声、仕掛けられる罠…。ニーマンの精神はじりじりと追い詰められていく。
恋人、家族、人生さえも投げ打ち、フレッチャーが目指す極みへと這い上がろうともがくニーマン。しかし…。
それではここから「セッション」を深く味わうための解説をお伝えしていきます!
デイミアン・チャゼルの初期作
今作はデイミアン・チャゼル監督の初期作です。
今でこそ、「LA LA LAND」で超有名な監督ですが、この映画公開時は、まだまだ駆け出しでした。
「セッション」は学生時代に撮った作品を含めて2本目の作品となります。
それにも関わらず、アカデミー賞3冠に輝き、サンダンス映画祭でもグランプリを受賞しました。
ものすごい偉業ですね。
デイミアン・チャゼル監督の作品は、ジャズをテーマにすることが多いです。
「LA LA LAND」もそうでしたね。
監督自身、高校生までジャズのドラマーをしていました。
監督の中で、ジャズというものは、音と音をぶつけ合い、競争的に発展しながら、素晴らしいパフォーマンスを生むと考えているようです。
ちょっとスポーツの感覚に近いですね。名勝負は一人では生まれない、と言った感じでしょうか。
「LA LA LAND」ではバンド仲間同士でその様子を描いていましたが、セッションでは師匠と弟子の関係でそれを描きました。
クライマックスシーンの殴り合いのような展開はたまりません。
鳥肌が立ちます。
J・K・シモンズ
アカデミー賞、サンダンス映画祭をはじめとして、様々な映画祭で助演男優賞を受賞しました。
J・K・シモンズはこれまでわりと優しいお父さんのような役を演じることが多いのですが、今作のフレッチャーは本当に恐いです。
迫力がもの凄い。トラウマ級です笑
マイルズ・テラー
「トップガンマーヴェリック」で注目された俳優ですね。
今作ではジャズドラマーを目指す青年を演じています。
マイルズは独学でドラムを学び、高校生のころはロックバンドに所属していました。
ドラマーとしての経験はあるものの、「セッション」で演じたのはジャズドラマー。
スティックの持ち方や叩き方が違うので、撮影のために1日3~4時間、2ヶ月に渡ってジャズドラムの猛特訓をしたそうです。
ガチンコの演技
そんな二人のガチンコ演技なくしてこの映画は語れません。
マイルズの手からは、本物の血飛沫が飛び、
フレッチャーはマイルズから本物のタックルを受け助骨を損傷、
また、フレッチャーはマイルズへ本物の平手打ちをかましています。
だからこそ、痛々しく、観る側の心もズキズキしてしまう訳です。
whiplash ムチ打ち
原題は「Session」ではなく、「whiplash」です。
直訳するとムチ打ち。
教師から生徒への、ムチを打つような激しい指導。
キューブリックのフルメタルジャケットばりの指導を、音楽学院で繰り広げる様はドキドキします。
どうしてフレッチャーがここまで厳しい指導をするのかというと、本物を生むには半端な優しさのある指導ではいけないという信念があるからなのです。
”グッジョブ”という言葉は人を駄目にし、
”悔しさ”こそが人を強くする
チャーリー・パーカーもシンバルを投げられて笑われたことの”悔しさ”を糧に大成した。
という思いが詰まった故のいき過ぎた指導なのです。
確かに、
必死で育てる気がないと、学生相手に夜中の2時まで練習に付き合わないですよね。
そういった思い。主人公に”悔しさの糧”を与え続けたのだということ踏まえまして、クライマックスの9分19秒まで行き着けば、この映画の感動はたまらないものになるはずです。
クライマックス9分19秒
クライマックスの9分19秒は手に汗握ります。
ぶつかり合った二人の集大成ともいえる、
殴り合いのようなセッション
感動しますよ…。
ちなみに、指揮と、ドラム演奏を映す高速パン。
高速パンは、後にデイミアン・チャゼル監督を象徴するカメラ手法となります。
感想
以前観たときは嫌悪や拒絶を感じましたが、”悔しさ”を糧に向こう側へゆける人間を育てるためのレッスンであると知って、感動と興奮が止まらない作品へと昇華できました。
苦手な作品から、大好きな作品へと変化しました。
映画って不思議です。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
「セッション」にの見どころをたっぷりとお伝えしました。
フレッチャーの想いや、監督・俳優のバックヤードを知れば、信じられない感動が押し寄せる傑作です!
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